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三七 知らないものを拾ってはいけない

前世で読んだ本の冒頭に『トンネルを抜けると雪国だった』っていう有名な本があった。

いままでの景色がトンネルを通過したことによって一面銀世界というような幻想的に変わったということなのだろう。

だが魔法陣を通っても変わったところを見つけるのが困難なぐらい、同じ景色だ。

さしずめ『魔法陣を抜けてもそこは森だった』といったところだ。

本当に同じ景色かと問われれば、それは否なんだけど。

こっちの方が日当たりが悪くじめじめしてるし、暗い。


「久しぶりに来たけど、やっぱり暗いわね」


唯一来た事があるらしいヨーコさんはのほほんとそんな感想を言う。


「北に向かっていけば村があるわ。といっても小さなダンジョンとギルドしかないような辺境の村なんだけどね。南に行ってもなにもないから注意してね。あるのは海と断崖絶壁」


太陽があそこだから・・・北は・・・あっちか。

ヨーコさんの言った通り北へ向かおうと思ったんだけど・・・


「ちょっと待って。アタシを連れていくのはここまでよ。いや、連れて行っては貰うんだけどそれはあくまで玉の中に居て持ち運んで貰うって意味ね」


そんなことを言い出すヨーコさん。

ここまで徹底して出不精だと感心する。

でも、そうか・・・ヨーコさんは世捨て人とはいえ一応魔王を討伐した英雄の一人。

騒ぎにならないとも言い切れない。

ということで森の中でさっそく玉の中に戻ることとなった。

ヨーコさん一人じゃ玉の中に入れないしね。


玉の中は相変わらず良い天気である。

温かな太陽の光が降り注ぎ、やわらかいさわやかな風がここちよい。

そんなことには目もくれずヨーコさんは自室にと戻ってしまった。

今度は一体何の研究をしているのか?

引っ越しの手伝いのとき器具とか見たけどさっぱりである。

ちなみに料理も生活も自分一人で何とかするということを宣言していた。

ワシたちの夫婦生活を邪魔しない一環だろう。

ドアを閉める直前に、


「あ、でも。アタシが本当に必要だったら言ってね。できるもんなら何とかしてあげたいし」


と母親らしいことを一言添えて、ドアは閉められた。


さてと、ヨーコさんも部屋に帰っちゃったし今ここには用事がないな。

初めての外の世界だし、まだ昼前。

はやる気持ちを抑えられないわけじゃないけど、ちょっと森を探索したいかな。

そう思ったワシはタマキと共に出口の正門にむかって歩きだしたんだが、エントランスで不思議な玉を見つけた。

常に掃除されているにも関わらず落ちているその玉はちょっと光っている?いや点滅してるのか。

ちょっと不気味に思いながらもその玉を拾いあげると、玉はいっそう眩く光りさらに白煙を噴き出した。

とっさに玉から手を離し、タマキを庇うように抱きその場を離脱する。

床に落ちたのちも白煙をあげ続ける。

どうやら、白煙だけで炎とか爆弾、毒薬の類ではなさそうだけど・・。

やがて噴射はおさまり、白煙も徐々に薄れていく。

玉があった場所にあったのは、玉ではなくなっていた。

メイド服を着た人型のなにかが体育座りで鎮座していた。


・ ・ ・ ・


「な、なぁタマキ。あれなに?」


「い、いや・・ウチも知らん。見たことないのぢゃ」


二人して現れたメイド服の人型を眺めている。

この人型・・動かない。

あれだけ派手に光ったり煙出していたにも関わらず一切動かない。

おそらく目であろう部分も閉じたままだ。


「さ、さわっても大丈夫だと思う?」


「ま、まて!それならウチが先にさわるのぢゃ!」


こういうのは普通男の方が先にやるもんだと思うんだが、タマキのあまりの剣幕に先を譲った。

タマキはつんつんと頬のあたりをつつき、反応がないと確認したのち、ぺたぺたと頭、体、腕、足あらゆる所を触っていたが反応はない。

安全だと確認が出来たところでワシにも触らせる。

当然反応はない・・・・と思っていたのが数秒前のワシら夫婦です。

ワシの指がさっきタマキが最初にやったように頬をつついた瞬間、目が開いた。

人型と目があう。目が合うと同時に人型は立ち上がった。

思わずのけぞりそうになったもののなんとか堪え、こちらも立ち上がる。

タマキより少し背の高いその人型は某サテライトシステムをつかうメイドロボを彷彿させるなかなかの美人である。純白のメイド服に橙色ロングヘヤーがよく映えている。

見つめ合うワシら夫婦と人型。


(「どうしよう、タマキ・・?」)

(「う、ウチに聞かれても困るのぢゃ・・。」)

(「と、取りあえず、なんか聞いてみようか?」)

(「なんかって何を?」)

(「例えば君の名はとか君は何とか?」)

(「無難なところぢゃが・・そもそも言葉通じるのかの?」)


ひそひそ話で相談するワシら2人。

そうなんだよ。目下の問題は言葉が通じるかなんだよ。

そんなワシらの気持ちを知ってか、はたまた話が聞こえていたのかその人型が口を開く。


「お初にお目にかかります。わたくしこの屋敷の管理人にしてメイド長です。言ってもわたくし一人しかいませんが。名前はありません」


知りたいことを簡潔に教えてくれる自己紹介をしてきた。

ワシらと同じ言語をはなしたのもそうだけど、その流暢な言葉遣いにワシもタマキも驚いた。

もっとロボロボしい話し方だと思っていたよ。


わたくしを目覚めさせるのは選ばれし者の証。実に久しぶりに具現化することができました。ありがとうございます。では貴方がわたくしの御主人に相応しいかどうか試させて頂きます」


あれ?なんか会話の流れが速すぎるし、雲行きがあやしい気が・・・

こっちはもっと聞きたいことあるよ?試すって何??

あまりの会話の流れの速さにあっけにとられていると、メイドは防御の型をとる。

さらに防御魔法も使っているっぽいな・・。


「魔法でも攻撃でも・・・貴方の全力をわたくしに打ち込んでください!!!」


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