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三六 出かけるときは忘れずに

ヨーコさんの引っ越しは意外にもなかなかに時間をとる作業だった。

実験道具と魔導書の類がほとんどなのだが、その数の多さは半端ではない。

しかもヨーコさんはワシら夫婦と違って『旅に出る』ではなく『引っ越す』のだ。

ピンセット一つ、薄い初級魔導書(初心者用)一冊残らずワシの道具箱へ入れていく。

自分だってアイテムボックス持っているのにとは思ったのだが、まあ玉に入れば出すわけだし別に困るわけでもないからいいか。

玉に入って本棚にすべてを整理し、道具も使いやすいように置き終わったのは三日後のことだった。

その間に部屋割も決まったわけだが、ヨーコさんが一階で実験室を兼ねた地下室のある書斎の隣の部屋、ワシらは二人で二階の大きな部屋一つと決まった。

沢山の部屋があるのだから一人一部屋取っても何の問題もないのだが、このことを提案したところめずらしくタマキの猛反対にあってしまった。

最終的に必殺の上目づかいで「ウチと一緒はいやかの?」なんて言ってきたもんだから、こっちが折れるしかない。

あの技はやっぱり卑怯だろ・・・。

とはいえ、一階の奥まった部屋と二階の逆側の表立った部屋になったのだから、そうしようと思わない限りは覗かれることなく夫婦生活を送ることが出来るというわけだ。

部屋の位置が変わったぐらいであとは以前暮らしていた家と何ら変わりは無いけど、やっぱりなにか心躍っちゃう新生活の始まりだった。


引っ越しが終わったところで、ヨーコさんにこの無人島を出る方法を聞いてみると、解決方法はやはり行商人が使っていた魔法陣だった。

これには特定の人しか転移出来ないように魔法陣に更に魔法をかけるという離れ業を使ってあったらしい。

さすが賢者である。

この魔法陣はどこかの田舎村の近くの小さな森に続いているらしい。

なるほどだから行商人もおいそれと顔を見せなかったわけだ。

町とかに直通であったならばもっと頻繁に来たのであろうが、町から村に行って更に森の中ではそうそうめんどくさいのも手伝って来ないだろう。


ワシらが出ていった後、この家はどうするのか気になる所でもあったのだが、もともとあった山小屋を綺麗にしてつかっていただけなのでそのままにしておくそうだ。

実質この見えている部分は使っていないのでなんの問題もないし、地下にある住居部分は転移の魔法陣を消すと無くなるわけではないけど行くことはできなくなるらしい。

あの空間はどれほどの地下にあるのだろうか?


さてそろそろ出発である。

ヨーコさんに頼んで、すでに魔法陣は起動している。

足を踏み入れればようやく異世界らしい世界を拝めるのだろう。

まさか、その時に嫁を娶っているとは思わなかったがな。

踏み出す前に自身とタマキのステータスを確認しておく。

ヨーコさんのは・・・いいや。カンストしてたしね。


◇ ◆ ◇ ◆


名前:モリー

レベル:2

状態:普通

職業:無職


攻撃:50771(限界突破)

魔力:6831(魔法適正:水・氷)

耐久:4870

俊敏:4819

(『擬態』により表示はオール100)


装備:万能包丁 解体包丁 普通の服 普通のズボン


スキル:擬人人形化(♀)。世界眼。超吸収。擬態。超成長(攻)。道具箱。

称号:魔眼持ち(弱視の魔眼)


◆ ◇ ◆ ◇


名前:タマキ

レベル:1

状態:普通

職業:家事手伝い


攻撃:4320

魔力:52031(限界突破)

耐久:4022

俊敏:4045

(古狐の知恵『狐と狸の化かし合い』により表示はオール100)


装備:扇子。チューブトップ。デニム風の短パン。


スキル:古狐の知恵。初級魔法の極み。超学習。無魔法の極み。

称号:異種転生者



・・・わかってる、わかってるさ。

夫婦そろっておかしいだろ?わかってるさ・・・。

でも、自重してくれなかったんだよ!ワシらの体は!

これが毎日の運動と修練の賜ですといったところで誰が信じてくれるのだろうか?

スキルのおかげで夫婦ともに本当の能力は隠されているわけだけど、それにしたってさぁ・・

タマキの魔力、ワシの攻撃・・・限界突破って何よ!?って思ったよ。

ヨーコさんに聞けば、人の限界が9999という値なのだそうだが、非常に稀にそれを超えちゃう人が出てくるそうなのだ。

前回それを観測されたのが、記録に残っている限りでは四百年ぐらい前の巨人族の耐久値だったそうだ。

そんな稀なのがここには二人、しかも成年したてとその嫁・・・もう笑うしかない。

武器に関しては動物を狩るようになったところでヨーコさんに頼んで解体に特化した包丁を貰って以来、なぜか二刀流扱いになっている。

いちおう前世でかじったことがあるとはいえ、いいのかなぁ?

タマキは何も持たずに魔法使いというのは目立つという事で扇子を持ってもらっている。

今はただの扇子だけど、そのうち鉄扇に・・ということらしい。

魔法使いと言えば杖とかのイメージだったけど、『扇子を持って戦う人はいるし、そもそも人の魔法を使わないタマキさんには杖は無意味でしょ。そもそも杖だとアタシとかぶるし』とはヨーコさんの弁。

なるほど杖は人の魔法のブースターなんだなぁ・・。そういえばRPGでも杖を装備したら魔力がなぜか上がるの多かった気がする。

それよりなにより驚いたのは・・・ワシのレベル、上がってる?

え?なんで??魔物倒してないから経験値とか入らんだろ???

いつ上がった????記憶も心当たりもない・・・。

この世界に生を受けて今まで一度たりとも上がったことのないレベルが、上がってるのに感慨も感動もない。あるのは驚きだけだ。

何故気付かなかった、ワシ!!


ステータスを確認し、自分たちの人間離れ加減を再度噛みしめ、楽しみにしていたイベントに気付けなかった後悔を胸に、ワシはようやく魔法陣へ一歩踏み出す。


手を繋いだ最愛の嫁とともに。


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