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二五 書物と翻訳と人魔と魔法

出かけるのを止めて、台所に戻るとそこにはすでにヨーコさんの姿があった。

タマキがすでに呼んでいたのかと思ったんだけど、違うなあれは。

目がらんらんと輝いている。

物こそ言わないがその顔には『早く話をしてくれ』と書いてある・・

どうやら魔法陣前での会話が聞こえていたらしいな。なんという地獄耳。


席に座ると、さっそくタマキが話し出す。


「内容について話す前に義母君。ちょっと聞きたいんぢゃが、この本どこで手に入れたのかの?」


そう言ってまず本を出す。

・・・なんだこれ?表紙の字でさえ読めないぞ。

ただ描かれている模様はかすれているけど・・魔法陣か、これ?


「ああ、これは魔王城に行った時の戦利品だね。地下に牢があってそこにあった本棚からだったかな?全く読めないしどうしようって感じなのよ」


「・・・なるほど・・そんなところに紛れておったのか・・。どうせ読めんし、読めんぢゃろうと思って囚人たちの暇つぶしに使いおったの、あの馬鹿魔王は・・」


どうやらタマキは前魔王を知っていたようだな。それも嫌っていたっぽいな。


「この本はのぅ・・人と魔が交わり人族が多様化していた時代の本当に最初の頃に書かれたものぢゃった。作者はサイクロプスのヒトミと書いてある。文字は古代に一部の魔族が使っていて今は失われた文字ぢゃ。、あとがきには伴侶となった男に捧げると書いてあった。十中八九ヒトミとその男性の生活を綴ったものぢゃろう。」


「え!?そんな時代の物なの?」


ヨーコさんが驚きを前面に出しながら、ついでに身も乗り出す。


「そうぢゃ、学術が進み文字が普通に解読できるようになってこの本の歴史的価値が証明されれば、小さな町位は平然と買えちゃうシロモノなのぢゃ・・・それをあの馬鹿魔王は・・・」


こめかみに青筋をたてながら呆れているタマキ。

なんだろう普段見れないレアな姿なのにちっとも嬉しくない。

というか田園調布に家が建つって昔の漫才にあったけど、そんなレベルじゃないな・・・

スケールの大きさに呆然としながら聞くしかないじゃないか。


「ま、まあ、価値云々というのは置いといて・・実際アタシも価値までは興味なかったし・・。それより内容よ!ないよう!アタシの魔法とタマキさんの魔法、その威力の違いの理由って??」


「ぎ、義母君、あ、あせるでない・・・そんな揺らされるとしゃ、喋れんのぢゃ・・」


肩を揺さぶり先を急ごうとするヨーコさんにタマキもたじたじである。

ゴメンゴメンとやりながらも目を逸らしはしない。なんというプレッシャーだろうか。

これがついこの前まで様付で呼び、恐れおののいていた人に対する態度なんだろうか?


「内容なんぢゃが、殆どは異種族夫婦の生活のことが書かれておった。人魔が交わる時代といっても先ほど言ったようにはしりの時代ぢゃ。異種族夫婦になると問題もあるけども、問題以上の良かったこともあるという、交わりを推奨するような内容ぢゃ」


ハウツー本や啓発本の類だったのか。

たしかに誰かが身をもって先導しないとそもそもそれまでにもそれぞれの種での営みがあったのだから、それを壊そうなんてなかなか出来ることじゃないし、やろうって輩はすごく少ないだろう。


「それで肝心の魔法に関する記述ぢゃが、本の内容には『魔法を使う点において一番違うのは私たち魔物と人ではそもそも魔法についての考え方が違う。人は詠唱を覚え鍛錬し、その魔法を強くして魔法レベルを上げて行くが、そもそも魔物の私には詠唱そのものが無い。あるのは魔法を使う本能と、無限の想像である。レベルなんていうものは魔物の魔法にはないのだ。想像次第でどこまでもいける。』とあるのぢゃ」


結構明確に書いてあったんだな。

夫婦の啓発本にここまで魔法の事を記せるサイクロプスのヒトミさん、何者だったんだろう?

なるほどタマキは初級しか使えないとはいえイメージでの魔法だから威力がおかしいのか。

便宜上、「人で言う所のファイアⅠです」というわけか。


「ウチはあのとき義母君が最大出力と言ったのでな、ウチが知りうる最大の炎、『火山噴火』をイメージして出したのぢゃ。人の器での最大魔法と火山噴火をイメージしてそのとおり出てくる魔法・・・どちらが凄いかは・・・なんとなくわかるぢゃろ?」


「・・・そうね。自然災害と個人の魔法じゃ割に合わないわね」


納得するタマキとヨーコさん。


「あ~あ、それにしても根本的な違いなのねぇ・・・。練習すればアタシもイメージだけで魔法発現できるのかしら・・?」


「どうぢゃろうの。この本にも書いてある通り本能というのが難しいかも知れんの。ウチが詠唱で魔法を使おうとしてもやはり難しいぢゃろうな。興味があったのぢゃがなぁ・・」


考え方を変えればあるいは出来るようになるかも知れんが、人の知能と言うのはそんなに簡単なものではない。

長い年を重ねて進化して、遺伝子レベルで魔法はこうだとなっている人という種には不可能だろう。

・・・ん?待てよ。ワシ・・イメージだけで魔法発現してるよなぁ・・

魔法のやり方を教えてくれたのはタマキだし、ヨーコさんからも詠唱の意味とかは教えてもらったけど詠唱は教えてもらっていない。

魔物寄りの人なのか?それとも異世界転生特典なのか?それともいつものてへぺろ女神のせいなのか?


「じゃあ、ワシが詠唱を覚えたらどうなるんだろう?」


そんなことを考えてポツリ呟いてみる。

独り言の声量でしかなかったのだが、二人の地獄耳は見事に聞き逃してくれなかった。

ヤバい!失言だった!と思ったのも後の祭り。

こちらを向いた二人の目がキラリと光る!!



「それは・・・興味があるわね!!!!」


「是非やってみるのぢゃ!!!!」

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