二〇 どの世界でも普段の努力は重要
その後、もう一つの属性・氷も含め何度か試してみた所でワシはブッ倒れた。
近くにタマキがいたからよかったけど、いなかったら誰にも介抱されることなくただ転がっていたかもしれない。
タマキ曰く魔力切れらしい。休むとある程度回復するが、完全に回復するには一晩寝なければ無理なんだそうだ。
自分のステータス見て、魔力の数値が低いということは理解していたはずなのに、ついつい調子に乗ってしまったなぁ・・
でもしょうがないなぁ、魔法って憧れのものだったしとても我慢が出来なかったよ。
それで倒れちゃってるから世話が無いわけなんだが・・・
しかしこれは・・・すごくだるいし、立つのも億劫である。まるでインフルエンザだ。
MPの切れたRPGの方たちにこんな状況になってまで剣を振るって貰っていたんだと思うと、謝罪の言葉しか出てこない。
倒れたままなんにもしない(できない)のもなんか暇だし、この際ステータスの基礎能力の数値について隣りに座って辺りを警戒しているタマキに聞いてみることにする。
ちょっと水を出したり、氷を作ったりした位で倒れていたらみっともないし、迷惑だってかかる。
上げる方法があるならやるべきだろう。
「そうぢゃのぅ・・。まず年齢を重ねると上がるというのがある。これは個人差はあるが生まれて十年ぐらいには、だいたい50位までは上がると言われておる。そこから先は勝手に上がることはなくなるらしいが・・」
結構上がるなぁ・・
一ケタの基礎能力の多いワシにはにわかに信じられないんだが・・
「みんながみんなそこまで上がるものなのか?」
「稀に例外はおるぢゃろうが・・・な。それぐらいならば最下級の魔物や鹿とかになんとか対応できるんぢゃ無いかというぐらいの基礎能力ぢゃ。人の持つ防衛やらの本能でそこまで無理してでも体を成長させるようぢゃな。生きて行くのに必要ぢゃからぢゃろう」
なるほど。最低限生きていくのに必要だと思われる数値がその辺なのか。
あ~、だからか。いやに早い年で成年として見られるんだなぁと思っていたんだが、なるほど『最低限生きていけるだけの能力(数値)』が備わるわけだからそりゃ成年として見てもおかしくないのか。
おもわぬところでこの世界の成年の定義が分かったところで、タマキが話をつづける。
「自力で上げる方法ぢゃが、一つは魔法薬というものがあったそうぢゃ。今は伝説とか神話とかで語られるようなものぢゃがな。残っているかもしれんという希望を含めれば方法の一つぢゃろう」
「百年を超える時間を生きてきたタマキでも見た事は無いの?」
「・・残念ながら、な。何十年か前にダンジョンの宝箱から出たという本当か嘘か分からない噂話はあったがの。見つけた者は暗殺まがいの横取りにあい、とられてなるものかと飲みほして、そこで殺されたらしい。ぢゃからその薬が本当だったかも謎のままなのぢゃ」
・・ぶ、物騒なことだなぁ・・・
薬が人を狂わすのはこっちの世界でも一緒だな。
そんな命を狙われる可能性のある上げ方は御免こうむりたい!
「もう一つは修練ぢゃな。頑張れば頑張るだけ上がる可能性を秘めている。もちろんその人の器からこぼれるような能力は得られんし、時間もものすごくかかるぢゃろうが、確実に何もせずに十年生きるよりは上がるぢゃろう」
秘めている能力数値を開花させるには修練・・・これはどこの世界でも一緒のようで安心する。
というか最初からこれ以外の選択肢なかったな。
楽な道には落とし穴があるものだ。堅実に苦労をして身につくものは一生忘れることは無い。
それは前世でワシが学んだことでもある。
「・・・ちなみになんだけどその修練ってどうすればいいの?」
「ん?普段から使っていればおのずと上がっていくのぢゃ。魔力に関して言えば今回みたいに倒れるまでするのはやりすぎじゃが、その方が魔力の限界は上がりやすくなるそうぢゃが・・終着点は変わらんわけぢゃし急がないのならば、そこまで頑張らんでもいいんぢゃないかと思うけど・・」
終着点とはその人の限界ということか・・
確かに魔物がいないこの環境で急いで上げる必要もないのだが、どこまでいけるかを見たくなるんだけど・・
頑張らなくていいと言われているのに天の邪鬼にも頑張ろうとするワシを知ってか知らずかタマキが先ほどより情念のこもった小さな声でワシをまっすぐに見て言う。
「それにのぅ・・いきなり倒れられるとびっくりするのぢゃ・・・できることならあまりウチを心配させないでほしいのぢゃ・・・」
タマキのこの言葉に『どこまでいけるか』で熱くなってしまっていた頭に冷静さを取り戻させクールダウンする。
・・いたって冷静に介抱してくれていたから気付かなかったけど、心配させちゃっていたのか・・
心配してくれている人がいるのに、その気持ちを無碍にするのは人間失格だな、うん。、
この一言でワシは限界まで頑張らない普通の修練をしていくことに決めたのであった。




