一八 安全な生活でも魔法は憧れ
この島に魔物がいないというワシにとってショッキングな事実を知って数日。
今日も今日とて森の探索をしている。
魔物との遭遇という憧れが無くなったとはいえ、食材調達やヨーコさんの研究の為の薬草取りなどやることはあるのだ。
先日の話で強すぎる魔物が外から入ってきた場合、元々いたのがそいつより弱ければその地から消える(逃げる)という話だった。
タマキは今は美幼女の姿でワシの婚約者なので忘れそうになるが、最上位に君臨する魔物だったりする。
だからこの島から魔物が消えた。
そこまでは納得した。
納得したんだが、ひとつワシのなかで疑念が出てきた。
『冒険者になって外の世界を旅する時にタマキと一緒で魔物と遭遇できるのか?』ということである。
ある程度居つくことで影響が出るのか、その場に行くだけで影響が出るのか・・・
その場に行くだけでだと、ワシが願った冒険はちょっと味気ない物になりそうだぁ・・
なぜなら今現在四六時中ワシにべったりのタマキがワシが旅立つ時までに愛想をつかすのが考えにくいからだ。
今だけかもしれないが、どうも最近ワシの方も隣りからタマキがいなくなるビジョンが見えなくなってきているような気もする。
となれば当然一緒に旅をするということになるのだが、そうなるともう行く先々がこの島と同じような魔物のいない状況になるのではないか?
そうなると・・・ねぇ・・・
人として喜ぶところだというのは分かっているんだが・・分かっちゃいるけど・・・
それでもやっぱりワシは多くの魔物をこの目で見たいし、遭遇したい!!
タマキにその旨を訪ねると、
「ここに来てから外にでるまで半年という時間があったから全ての魔物がいなくなってしまったのぢゃ。いなくなるのが本能とはいえ一カ月や二ヶ月そこにいるだけで魔物がいなくなるというのはない。そんなことになれば世界のどこかで弱者は集まりすぎてパンクするし、強者も獲物がなくなって衰退しかねん。ぢゃからウチが一緒だからといって全く魔物がいない旅はできないのぢゃ」
だから安心(?)してそのときが来れば一緒に旅立とう、と言ってくる。
魔物と出会う旅になることが分かったのに安心とは一体・・・
どうやら強者が居つくと徐々に逃げていくということらしい。
そりゃ、そうか。
魔物にだって生態系はあるよな。いきなり崩れるとよくないのは人も魔物も一緒か。
そしてタマキの頭にはやっぱりワシと離れるという選択肢は存在してなかったみたいだな。
・・・なんか、一周回ってうれしくなってくるな・・・
・ ・ ・ ・
「ところでモリーは魔法を使わんのか?」
ピクニックのような昼飯(今日は珍しくパン食・サンドイッチ)をとったのち、ボケーッと日向ぼっこをしていると、タマモがふとそんなことを聞いてきた。
すっかり忘れていたがここは剣と魔法の世界・・・にも関わらず獲物を捕るのは古典的な罠や包丁持っての突撃という原始的なものだ。
しかしそれで十分な成果を挙げている。
相手が野生動物であり、魔物ではないのを考慮しても、だ。
ついこないだなどとうとうゲンコツ一発で背後からの不意打ちとはいえ熊を仕留めているのだから、普通物理だけでいけると思っちゃうだろう?
そりゃ魔法の事などすっかり忘れるわ、ハッハッハッ・・・はぁ・・
ワシの体はどこに向かっていくんじゃろ・・・とても心配だ。
しかし・・・そうだな。せっかく魔法があるのだから使ってみたいわな。
しかも一応適性は水・氷と持っているわけだし・・・
ワシのようなステータス脳筋に使えるものがあるのか疑問ではあるが・・・
「使いたいとは思うけど・・・そもそも使えないじゃなくてどうやったらいいのかを知らないのだけど・・・」
「それならウチが教えてやるのぢゃ!」
タマキが勢いよく教え役に立候補する。
目をキラキラ輝かせて、すごくウキウキしている。
なるほど普段ワシから教わるばかりなので、たまには教える側もしてみたいのか。
そう思うとこのウキウキ顔も納得できる。
納得はできるんだが、問題はタマキとワシの状況である。
ワシは切り株に腰かけて、タマキは草のうえに座っている。
つまりタマキの顔がワシが見下ろす位置にあるのだ。
本人は何の意図もしていない、つまりは天然なんだろうけど・・若干上目づかいでそんな目でみられると萌死しそうになるんだが!
わかった!わかった!教わるから!
だからそんな期待した目で見ないでくれい・・・。
「じゃ、じゃあお願いしようかな・・・」
「うむ!任せておくのじゃ!」
こうして自信満々のタマキから魔法を学ぶことになったのだった。




