一七 魔物も裸足で逃げ出す婚約者
あれから更に数週間。
ワシはいままで外に出ていなかった時間を取り戻すように、暇さえあれば外に出ていた。
晴れとか雨とか関係ない。
その隣にはいつもタマキがいて、晴れれば一緒に日向ぼっこしたり食材の採取したり、雨ならば相合傘で散歩といった具合だ。
相合傘がこんなに気恥ずかしいものだとは思わなかった・・・誰も見ていないのに恥ずかしいとか・・・でも、なんか幸せなんだよなぁ・・
相変わらず、魔物には出会えていない。
しかし野生動物とは遭遇を果たすことが出来た。
鳥とか猪とか鹿とか・・・、日本にいた頃もよく見たり、時々食べたりした見なれた奴らだ。ワシ田舎に住んでいたし。
魔物と違ってドロップアイテムとして肉を落としたり、倒した後勝手に消滅しないので自分で解体やら処理やらしなければならない。
その獲物解体作業に包丁を使うものだから、レベル1つ上がっていないのにステータスの攻撃欄がすでに4桁をゆうに超えてしまった。相変わらずのチートクオリティである。
魔物に出会わないのだからあまり必要ないと思っていた攻撃の数値だが、『地面を蹴る行為』が『地面を攻撃する』となるらしく持続性は無いものの瞬間的に加速して相手との距離を縮められるようになった。
古武術でいう縮地、八極拳でいう箭疾歩のようなものか。
おかげで逃げようとする猪や鹿をずいぶんと簡単に狩ることができるようになった。
しかし、魔物以外の獲物にしか出会わないならば解体するのに大変だから別の包丁が欲しい。
万能包丁じゃちょっとやりにくいんだよ・・
肉切りや皮切りに特化した包丁が欲しいよなぁ・・今度ヨーコさんにねだってみようかなぁ・・
そして本日も魔物と出会うことなくタマキといつもどおりの散歩をしている。
いや~、平和だなぁ・・これじゃあ転生する前の現役引退後の田舎暮らしと変わらんなぁ・・
そんなことををぼんやり考えていると、ふとタマキがポツリと溢した。
「・・・やはり今日も魔物がおらんのぅ。ここ数週間一度も見ないとはやはりこれはあれかのぅ・・」
・・・ん?
魔物と出会わないこの状況に納得いかないがするしかないといった感じをタマキが醸し出している。
この状況をタマキは理由つきで理解出来ているということか?
「タマキ、あれとは?」
「義母君によれば弱いながらもこの島には魔物がおったのぢゃろう?しかし全く遭遇することが無い。こんなことは普通なら考えられん。しかし魔物は自分より強い魔物がいる所からいなくなる習性があるのぢゃ。ぢゃから一応神を冠する魔物であるウチが来たことによって皆逃げちゃったんぢゃないかということぢゃ」
・・・おおぅ・・なんて事だ・・
つまりタマキが召喚された時点でこの島から魔物逃げちゃったのか・・
でも、たしかにそう考えれば納得がいく。
ヨーコさんは嘘をつくような人じゃないし実際魔物は居たんだろうが、そうか今は居ないんだなぁ・・
「ちなみにタマキ。魔物が帰ってくるとか新たに湧くなんてことは・・・」
「九分九厘無いぢゃろうな。一度そのように強い魔物が棲みつくとそれと同等の魔物が集まっていくものなのぢゃ。モリーは知らないぢゃろうが強い魔物がいる所に強い魔物ばかりがいる。逆に弱い魔物しかいない所は弱いのしかいない。そういったものなのぢゃよ。少なくともウチと同等位の魔物なんてそうそういないし」
つまりこの島にいる以上、魔物には会う事は無いという事だな。
残念に感じるが、普通に考えればいいことなんだよなぁ・・
というか他の魔物にこれだけ影響を与えるタマキって種族はすごいけど実力もすさまじいってことか?
「なぁ、タマキ。ちょっと鑑定で視てもいいかい?そんな強いんならちょっと気になるんだけど・・」
「ん?別に構わんよ。というかウチも自分のステータスって知らないし興味あるのぢゃ」
許しを得た所で、タマキを視てみる。
名前:タマキ
レベル:1
状態:普通
職業:家事手伝い
攻撃:132
魔力:5231
耐久:122
俊敏:145
装備:チューブトップ。デニム風の短パン。
スキル:古狐の知恵。初級魔法の極み。超学習。
称号:異種転生者。
スキル説明
古狐の知恵:狐族に伝わる技、魔法を使う事ができる。固有スキル。
初級魔法の極み:全属性・全魔法の初級を全て使う事・覚える事が出来る。しかし中級以上の魔法は使う事も覚えることもできない。
超学習:一を聞いて百を知るのみ込みの早さで学習する。
称号説明
異種転生者:異種族に転生した者に与えられる称号。
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・・・うん。強いねぇ・・
というか、この感想しかでないよ!?
なにこの同じレベル1なのにワシとの数字の違いは!?
魔力がヤバイ数値なのはいわずもがな、その他も軒並み三ケタとは・・
種類は違えど同じ転生者なのに・・・というか幼女になったのって転生扱いなのね・・
超学習ってワシの超吸収と同じスキルじゃないの?なんで異世界転生のチートスキルクラスを持っているのか!?
ワシが視た事を多少後悔していると、どうだったかとタマキが聞いてくる。
これ・・伝えていいのかなぁ~・・と思いながら、本人の事だし知りたがってるしで教えてあげた。
「レベル1かぁ~・・でも、ま、こんなもんぢゃろ」
・・・本人はいたって普通に受け入れていた。
レベルだけ引っかかったようだが、最終的には『転生者になってるししょうがない』で落ち着いた。
まぁ、受け入れないとどうにもならん事ではあるのだが・・
ワシはこのかわいい婚約者の美幼女があらためて神を冠する魔物だと実感せずにはいられなかった・・・




