一六 初めての空と森と日差しのなかで
どこまでも続く青い空。
目の前に広がる緑の木々。
あたたかな日差し。
刑務所から出てきた人がシャバの空気はうまいというらしいが、なるほどわかるような気がする。
決して家の中が鬱々としていたわけではないのだが、降臨させられて以来の久方ぶりの外は実に清々しい。
まだ何をしたというわけではないのだが高揚感でいっぱいだ。
日光がこんなに気持ちいいなんて考えた事もなかったなぁ。
「外出するだけでそんなに感動するものかのぅ?」
久しぶりに外の空気を堪能して感動すらしているワシを不思議そうに見ているのは、隣りを歩くタマキである。
外出する旨を言ったら、ならば一緒に行くと言ってきたので、断る理由もないので一緒に来たのだ。
自分だって少なくとも半年ぶりぐらいの外出だろうに、この気持ちわかんないかなぁ・・まぁ、半年と五年では大きく違うか・・・
ちなみにヨーコさんは家で久しぶりの研究とか錬金術をしている。
ここのところワシへの質疑応答を優先して行っていたのでおろそかになっていたのだ。
まぁ、おろそかになっていなくても付いてこなかったとは思うが・・・なにせ安定の放任主義だし。
出かけに「外にでるならばついでに薬草とか採ってきて。キミ鑑定スキルあるし簡単でしょ」とちゃっかり用事をことづかっている。
・ ・ ・ ・
森の中に入ったワシたちはとりあえず木々の間からの日差しで日光浴を楽しんだのち、持参した油揚げ入りおにぎりで腹をみたし、ヨーコさんからの言伝を守るべく、片っぱしから鑑定で視ながら薬草を採取していく。
タマキは鑑定持ちではないので、それっぽい草やら花やらを摘んではワシの所に持ってくる。
それも全てワシが鑑定で視る算段である。
雑草、雑草、雑草、雑草・・・薬草、あった見分けつかんなぁ・・
雑草、雑草、毒消し草、これも使えそう、採取っと。
・・雑草、毒キノコ、う~んこれもいるのか?取りあえず持っていくかぁ・・
おっと、タマキの持ってきたやつも視なければ・・・おおっ、満月草!?実在したのか、この世界では・・
・・・・・毒キノコ、毒キノコ・・あっ、椎茸じゃないか!?でかいなぁ。今日の晩飯これにしよ・・・
そんなかんじでタマキがもうそろそろいいんぢゃないのかと言ってくるまで作業を続けた。
いつのまにやら採取したモノが山のように積まれている。全然気付かなかった・・・思いのほかこの作業楽しかった・・・
どうやって運ぼうか、とタマキと二人頭をなやませあることに気づく。
そういえばワシ、アイテムボックススキル持っているじゃん!
この世界ではアイテムボックスはスキルとして持つワシやヨーコさんみたいなのがいる一方で、普通にアイテムとしてレアドロップするらしいし高価だが流通しているらしい。
ただスキルとして持つのはかなり希少らしく、ヨーコさんも若いころ(魔王討伐パーティーに入る前の事ね)はあちこちのパーティーから引っ張りだこだったと聞く。
さらにワシのは異世界転生補正で時間経過なし、容量制限なしのすぐれものである。
そんないいものを持っているのにすっかり失念していたよ・・・不覚。
ワシは早速、アイテムボックスと念じる。
すると九十リットル位の黒いビニール袋が目の前に現れて浮いている。
・・ああ、懐かしいなぁ・・そうそう、昔はよく見た。環境問題とかで規制されていつのまにか見なくなったけど・・・
ようするになつかしのゴミ袋である。
「・・・えーと、モリー?これはなんぢゃ?」
タマキが不思議そうに尋ねてくる。
あれ?タマキは物知りだしこういうのは知ってそうなんだけど・・?
「何って・・これアイテムボックスなんじゃないの?そう念じたら出てきたんだし・・」
「そ、そうか・・・。こんな形状は初めてみるが・・ま、まぁお主が言うならそうなのぢゃろうな」
タマキ曰く、普通アイテムとしてのアイテムボックスは布の袋みたいなものらしい。
スキルとしてのアイテムボックスは虚空に魔法陣が浮かび、そこに手を入れることで入れたり出したりできるらしい。
それ、すごく格好良くないか!?
なのになぜワシのはゴミ袋なのか・・・。スキルなのに・・・。
袋の口を広げて、中に薬草を入れてみると普通の袋のように中に溜まった。
え、これって普通のゴミ袋なんじゃ!?と思ってしまったが、いくら入れてもいっぱいにならない。
タマキと二人、素材の山をせっせと袋に放り込む。
その姿は公園とかの雑草取りの後で、最後に草をゴミ袋に詰めている夫婦である。
徐々に山は小さくなっていき、とうとう全てを収納してしまった。
全部入れたところで、消えるように念じると消えていった。
その後再び出現させて、取りたいものを念じて袋に手を入れたところちゃんと目的の物を取り出す事も出来る。
見た目はちょっとアレだが、ちゃんとしたアイテムボックスであった。
その確認を終えると、そろそろ帰ろうかということになり家路へと歩き始めるのだった。
それにしてもこの森には弱いながらも魔物がいると聞いていたのだが、ついに一度も遭遇しなかったなぁ。
野生(?)の魔物とのファーストコンタクト、期待していたのになぁ。
その後、家に戻ったワシらはヨーコさんに今日の収穫を渡し初めての外出記念日は終わるわけだが、収穫物のあまりの多さにヨーコさんが愕然とするという一幕があった。
量についてなにも言われなかったのでというのもあるが、やはり常識で考えて多すぎたみたいだ。
「・・・今度からはちゃんと欲しい分だけ言うようにするわ・・」
椎茸の天婦羅をほおばりつつ、疲れた声でヨーコさんがこぼすのだった。




