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一四 外堀が埋まっていくうららかな朝

次の日。


視線を感じて起きてみればドアの入り口にヨーコさんが立っていた。

こんな時間に起きているとは珍しい・・いつもワシが朝飯を作り終えたぐらいにならないと、起きてこないのに・・なんて呑気に考えていると、あれ?なにか様子がおかしい。

なんか震えている・・?その顔は恐れと怒りが混じったような複雑な表情である。

とりあえず体を起こそうとすると、腕になにやら温かい物が・・・タマキの腕だ。

・・・ああ、そういえば一緒に寝たんだったな・・・なんて呑気に回想している場合じゃない!

ズンズンとベットの傍らにまで歩み寄るヨーコさん。


「なぁモリー君。どういう状況なのか説明してくれるかな?」


明らかに戸惑った声色で、どこか怒っている風。

それでも努めて冷静を装いながら聞いてくるのだった。


なんでも昨日途中で終わらしてしまった話の続きを朝も早くからしようと思ったらしい。

そんなに急がなくても時間はたっぷりあるように思えるが、好奇心に勝てなかったようだ。

そうしたらこの状況に出くわしてしまった、ということだ。

人の姿とはいえ九尾の狐様と同禽とは何事かと、罰あたりだとそう言いたいのだろう。

ワシはヨーコさんが寝てしまった後のことを話す。

タマキという名前になった元魔物の少女が、ヨーコさんに召喚の責任を取らせてここに住むことになり、さらにワシの婚約者になったことを、だ。

あまりに突拍子もない話に、ヨーコさんは最初の方は驚愕の表情を浮かべていたのだが、最終的には魂が抜けたようになり自分の部屋へふらふら戻っていった。

畏怖の念を抱いている相手が、よりにもよってこの家に留まるだけではなく、自分の息子の婚約者になっているとか・・・わからんでもない。

しかもその話が自分のいないところで決まっていたのだから、そりゃそうなるわなぁ・・・

その後、朝飯の時間になるまでヨーコさんは部屋から出てくることはなかった。


タマキが起きてきて、ヨーコさんを呼びに行き朝食が始まった。

油揚げの味噌汁、ご飯、焼き魚といった純和風メニューである。

昨晩とおなじようにタマキが興味深そうに味わっている。

ヨーコさんは・・・まだショックから完全に立ち直れてないな。どこか虚ろな感じだ。手と口は動いているからまあ、いいだろう・・・


朝食後、タマキの口から再びヨーコさんに昨日寝てからのダイジェスト説明があった。

一応説明したからとは言っていたのだが、こういうのは自分でいわないといけないのぢゃとか言って、ワシよりも遥かに詳しく丁寧に説明していた。

二度目の説明なので、今度はしっかりと噛みしめながら聞いていたようだ。

ワシの説明の時は青天の霹靂だったが、今度は二度目なのである。幾分余裕も生まれたのであろう。見た目も抜け殻みたいだったのが、幾分マシになっている。


「・・・というわけなんぢゃが、よいかの?」


「い、いいもなにも!確かにアタシの責任ですし、人の姿に変えてしまったのは不肖の息子です!もちろんいいですとも!」


「・・・その、なんじゃ。そんなに畏まらんでもよいのぢゃよ。モリーの母親ならばウチの義母君になるのぢゃ。普通に接してくれた方が良いのぢゃよ・・」


「そ、そうですか・・。なるべく努力しますが、なにぶん幼少時代からの刷り込みですので・・・」


いまだヨーコさんはワシみたく割り切れていないようで、畏まっちゃっている。

ま、これから一緒に生活していくんだしそのうち慣れるだろう。


「それでの?ウチなりに考えたのぢゃが、ウチはこれから狐人族として生きようと思う。だから尻尾はお主ら以外がおるような場所では変化をつかって一本尾にしておく。その方が世間体的にもよかろ」


「そうですね。たしかに尻尾複数はいない事は無いですが、目立ちますからね。この森・・・といか島にはアタシたち以外に人がいないのでいいですけど、将来島を出た時は隠した方がいいでしょう」


え?ここって無人島だったの!?

家から出た事ないから知らんかったわ!

というか本当にヨーコさんが隠居して人目を避けていなかったら死んでいたんじゃないか!

あのてへぺろ女神・・・転生させておいて本当は殺す気だったろ!


「その出て行く時ぢゃが、ウチを義母君の子として、モリーを婿ということにしたらどうぢゃろうか」


「そ、そうですね。突拍子ないこと言ってるような気がしましたが、見方によってはそっちの方が自然ですしね・・モリーもそれでいい?」


「へ、え?あっ、いいんじゃないの?」


てへぺろ女神への怨みつらみを考えていたから、いきなりにこっちに話振られてびっくりして了承しちゃったけど、良策のように思える。

狐人族が狐人族の子を連れていても問題は無い。

むしろワシのような狐らしからぬ人間を子供として連れている方がどちらかといえば不自然だ。


「まあ内情は変わらんし、書式の上の事だからあんまりこだわらんなぁ。母さんが母さんであることは変わらないし」


「そもそもみんな血族ぢゃないのぢゃから、自然に見える方がよかろ」


「そうなのよね・・どっちがアタシの書式上の子供になったってその子供にはパートナーかぁ・・アタシ未婚なのになぁ・・」


ヨーコさんが遠い目をしている。

なんかスイマセン!

こうして前世であればすったもんだの末、遺産問題などいろいろ問題が出てくるであろう事柄をあっさり当事者だけで解決してしまったのだった。


というか・・・あれ?おかしいな?ワシたしか『五年たっても気が変わらなかったら』と言ったハズなんだけど、もう結婚したこと前提で話進めちゃってるよね?

腹をくくったとはいえ、こうも早く外堀を埋められていくとは思わなかったなぁ・・・

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