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一三 君の名前と婚約と

美幼女からのプロポーズを正面から受けたワシは戸惑いつつ、ちょっと感動していた。

なにせ前世ではなかった経験だし、この世界に来た時のしたいことリスト(ひそかに考えていた)の中には当然結婚の二文字はあったわけで・・・

それも相手は元魔物とはいえ、可愛すぎる美幼女である。

おそらく成長しても可愛すぎる美女になるのだろうなぁ・・

自分自身で物知りとか強いとか言ってるわけだし冒険者をめざすワシにとってはありがたすぎる物件である。

物知りで強くしかも可愛い・・こんな子にプロポーズうけるとか・・・ワシ勝ち組なんじゃね?

性格とかを除けば(よく知らないし)、断る理由などないんだよなぁ・・・

・・・・いっそ受けるか?ワシの人生をこの子と共に生きるか?

二度目の人生、いわばエクストラステージだ。前世で出来なかった無茶苦茶をしてもいいんじゃないか?

そんな風におもいだしたワシは、腹をくくることにした。

・・・したのだが、ここで重大なことに気づく。

この子の名前って、何?

一緒に住む、しかも将来的には結婚しようという相手の名前も知らないとはなんたることだ。

まぁ、ワシも今日まで名前は無かったわけだが・・・


「ね、ねぇ。いまさら何だけど君の名前教えてくれない?」


ストレートに聞いてみた。

プロポーズの返事を期待していた美幼女は、コケそうになっていた。

だが、名乗っていないことは事実だしプロポーズした相手に名乗らないのはおかしいと感じたようだ。

美幼女は小さな声で、


「・・・名前かの・・実はないのぢゃよ」


寂しそうに答える。


「というか当たり前ぢゃろう!?ウチ今日まで神を冠するとはいえ魔物ぢゃったのぢゃ!種族名で呼ばれることはあっても個人名で呼ばれることはないのぢゃ!」


更に八つ当たり気味の説教まで食らう始末。なんだ!?ワシが悪いのか!?

しかし、たしかにそうか。

目の前の美幼女を見ると忘れそうになるが今日まで魔物だったんだよなぁ・・


「・・・そうじゃ!よく考えればお主のおかげで人になったのぢゃ、ウチの名前をお主がつけてくれ!そうすれば万事解決ぢゃろ!?」


期待している顔で、まくしたてるように言われたのだが、どうしよう・・

名前なんか付けた事ないぞ・・

結婚してないから子供いなかったし、ペットだって飼ったこと無いのに・・・

でも、あの顔は裏切れんよなぁ・・

・・う~ん、名前ねぇ・・・

沈黙の時間が数分続く――


腕を組み、うんうん唸っていたら、ふと額が温くなった。

あれから五分といったところか。なんだこの温さと感触は?

なぜか安心を覚えるような温かさだなと思ったら、こめかみあたりに強烈な痛みが!

思わず目を明けるとしびれをきらした美幼女が、小さな手をめいいっぱい広げてワシの額を鷲掴みしているのだ。

アイアンクローである!


「いだだだだだ!な、なにを!?」


「ええい。名前くらいでなやむでないわ!どんな名前でも受け取ってやるから早く決めぇ!!」


えぇ!?いいの!!?

一生使うかもしれないものだよ!?

とはいえ今のこの状況で考えがまとまるハズが無く、ワシは咄嗟に今の状況から思いついたキャラクターの名前を言っていた。


「じ、じ、じゃあ、た、タマキ!タマキでどう?!!」


思いついたのはアイアンクローが得意な赤髪ロングのお姉さんなんだが、一応案を出したということで美幼女は指の力を抜いてくれた。

今の破壊力・・・強いというのは嘘ではないのだなぁ・・

しかし・・・咄嗟とはいえ人にキャラクター名を付けてしまうとは・・・軽く自己嫌悪だが、まぁここは違う世界だしバレることもないからそのあたりは安心か・・

そんな風に思っていると、美幼女はふむっといった感じで吟味しているようだったが、やがて笑顔で高らかに命名宣言をした。


「いい名前ぢゃないか。気に入った!今日からウチはタマキぢゃ!」


・ ・ ・ ・


「そ、それじゃ話を戻そうか。ワ、ワシと契るという話なんだけど・・・」


命名騒動も終わった所で、話を元に戻す。

話を戻したところで、タマキは名前が決まった時の笑顔に加え、キラキラと期待した目になった。

うぁ~・・・これは断られる可能性を全く考えていない顔だな・・・

守りたい、この笑顔。


「ワシが成人する五年後までに、タマキの気持ちが変わらなければ・・・一緒になろうか」


あれこれ考えた結果断るという選択肢はなくなっていたし、腹はくくったのである。

こういうのは縁だと思う。

実際縁がなけでばタマキに出会う事はないのである。

さらに言えばタマキにプロポーズされることもなかったわけで。

5歳でこんな風に達観するのはどうかと思うが、中身が前世で縁のつながりを見つけられなかったおじいさんなのだからしょうがない。

答えは決まっていた。

『受ける』と。


「ほ、ホントかの?」


「五年後、気持ちが変わらなければ・・・ね。この五年でお互いを知っていけば合う合わないあるかもしれないし・・」


「そ、そうぢゃの!今はそれでいいのぢゃ!」


ウチの気持ちは変わらんぢゃろうがの、と自信満々のタマキ。

どこからその自身は来るのだろう・・?

ま、喜んでいるようだし、ひとまずは一段落かな・・・


その後もう日付が変わるぐらいの時間と言う事もあり、お開きとなった。

タマキの寝る所どうしようかと考え、ヨーコさんと一緒でいいかと聞いてみたところ、即座に拒否された。

婚約者ならば一緒に寝ても問題ないぢゃろ、というのがタマキの言い分である。

そうなのかなぁ・・・まぁ、そうなのだろう・・・彼女のなかでは・・な。

まぁ、よく考えればヨーコさんと一緒に寝ていたら・・・寝起きのヨーコさん驚きのあまり寿命縮まるかもしれん。

いろいろ反論したいところ(実際したんだが)だったが、上目づかいで「ダメかの・・?」とか聞いてくるもんだからつい了承してしまった。

あれは卑怯だろう!?

なにあれ!?可愛すぎだろう!?


そんなこんなで今ワシとタマキは同じベットで寝ている。

なんでこんなにドキドキしているのか分からない。ま、まぁそのうち慣れるだろう・・・

こっちがこんなにドキドキしているのに隣のタマキはスヤスヤと寝ている。

その寝顔を見て、小さな幸せをかんじつつ、ワシもまどろみの中に落ちて行くのだった。


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