一一八 南国の予期せぬお宝
吹雪吹き荒ぶ山小屋から転移した先は・・・いかにも沖縄っぽい民家が鎮座している。
どうも南国に来たらしい。すごくあったかい。
生垣で囲まれたその民家から到着早々シーサーの洗礼を受けたがいちど島ダンジョン前で対峙した相手。たいした脅威でもないので早々に退場していただいた。
家の中を見ると狸や狐、そしてなぜかなまはげとあまり沖縄っぽくない方々がうようよしていた。
試しに一匹の狐を倒してみたんだけど(もちろんタマキが。同じ狐とかいう躊躇なんてなかったみたい)、増殖こそしないものの常に同じ数の魔物が常駐する所みたい。すぐに次の魔物が発生する。
「これは・・・ボスを倒さん限りキリが無さそうぢゃのう・・」
しかしどの魔物を倒しても状況は変わらない。さすがのタマキもぼやいている。
やっぱり同じ敵ばっかりだと飽きるもんな。
「ぢゃがどれがボスかは分からんし、延々とやっていてはさすがにウチもいつかは魔力が尽きるぢゃろう・・ぢゃから・・」
「??」
「ミケ。悪いが半分任せた。延々倒していけばいつかボスが出てくるかも知れんのぢゃ」
「分かったにゃ!このダンジョンに入ってから殆ど何もしてにゃいし腕が鳴るにゃ!」
え?なんでミケだけに言うの?ワシは?
「あの~・・・タマキさんや・・ワシは?」
「モリーは・・そこで見ててくれればいいのぢゃ。それだけで百人力なのぢゃ」
「そうにゃ。奥さんににゃったボクの雄姿をその目に刻むのにゃ」
どうやら延々と続くかもしれない戦闘でさえもワシは戦わせて貰えないらしい。
奥さんの過保護が嬉しいような仲間はずれのようで悲しいような・・・。
「・・いやね、ワシもこのダンジョンに入ってから殆ど役立ってないし、たまには・・」
戦わせてほしいと続ける前に、二人の後方にある生垣が目に入った。
生垣をよく見るとなにか実のようなものが成っている。
あれは・・・ピパーツ?大きさがえらく違うけど・・記憶ではもっと小さかったよな?
「たまには、なんぢゃ?」
「・・ごめんタマキ。そこの生垣に成ってる実を取ってくれない?」
「ん?これかの?ほれ」
渡されたその実は形こそピパーツだったがヤシの実かと思うぐらい巨大なものだったし、世界眼で視ても???と出るだけ。
しかしワシは自分の記憶を信じ一口齧ってみる。
シナモンと八角を混ぜたようなほのかに甘い香り・・・独特の爽やかな辛味・・・いや全然爽やかではないな、前世で食べた物より大分辛い・・。
「お、おいモリー・・。涙ぐんでどうしたんぢゃ!?」
「ど、毒だったかにゃ!?回復魔法かけるかにゃ!?」
「だ、大丈夫だよ二人とも・・・ちょっと予想より辛すぎただけだから・・」
「そ、そうか・・・まあモリーが毒ぐらいでなんとかなるとは思わんが一体どうしていきなり得体の知れんものを齧ったのぢゃ?」
「その前にダンジョンの中のドロップ品じゃないものって持出出来たっけ?石とか木の実とか」
「そりゃできないことはないが・・・そんな物好きあんまりおらんが・・」
「まあダンジョンといえば一攫千金狙いが多いからにゃあ~・・でもにゃんでそんにゃこと?」
「この実はね、胡椒の代わりになる調味料なんだよ」
「「!!??」」
「胡椒は数ある調味料の中でもべらぼうに高いからな。ストックはあるけど最後にタイガさんが持ってきた分だけだから近いうちに無くなる。ま、これを持ち帰って胡椒ですってギルドに持って行くのは無理だろうけど普段ワシらが食べる食事に使う分なら何の問題も無くいけるだろう。この生垣に生えているのをそれなりに失敬していけば多分一生胡椒らしきものには困らんハズだ」
「た、たしかにそうぢゃの!」
「で、でもにゃ!これを持ち帰ってギルドでモリーの言うことを審査してもらえれば新しい食材として認められるんにゃ。まさしく一攫千金ににゃるんじゃ?」
「多分、それは無理だよ。胡椒が高いからこそ商売にしている人がいるんだし、あくまで胡椒っぽいものだからな」
「・・・まあ、本物とは違うってことぢゃな。しかしお宝には変わらんのぢゃ。まさかドロップ品以外で宝があるとはのぅ・・」
「でもこれモリー以外の誰が気付くんだろ・・・」
とりあえずどんな味なのか気になる二人に食べかけの実を渡す。
辛いから気をつけろと念をおしていたにも関わらずガブッと齧り、辛いっ!辛いっ!と号泣していたのがタマキ。本当に胡椒だと感心してたのがミケだ。
ちなみにこんな漫才みたいなやりとりをしている間に敵さんは襲ってこない。どうやら家の中のみ襲ってくるみたいだな。皆縁側でじっとこっちを見ている。
「こんないいものがあるので、予定変更。ワシは生垣の実を採って回るから、もし魔法陣出たら教えてくれるか?」
「もちろんにゃ。ついでにドロップ品も集めておくにゃ」
「一カ所に集めておくから次の階層に行く前に道具箱に入れてほしいのぢゃ。・・・それとスマンがモリー・・水を一杯くれ・・口の中が火事なのぢゃ・・」
いまだ辛さと戦っているタマキに水筒を渡すと、タマキは一気に飲み干しひとごこちついたのち、ミケを連れだって家の中に入って行った。敵が座っている縁側から。入って行ったと確認すると同時に血飛沫がとんでいる。・・・あれだな。いつもはタマキの魔法だけど、今回はミケの物理攻撃も入っているから多少の赤い物が出る戦いになるんだろうな。
ま、まああの二人が一緒なら万一にも危ないことは無いだろう。情を向けるべきはどう考えても敵さんの方だろうし・・。
ワシはその凄惨な現場から目を逸らすように、民家を背にしピパーツ収穫を始めるのだった。




