一一七 雪山の憩い場
「・・・というわけで幸せに暮らしましたとさ。終わり」
「ふ~む。なかなか面白い話ぢゃないか」
「きびだんごで命をかけるにゃんて・・・にゃんて義理がたい奴らにゃ」
「しかしな、この物語は子供用にアレンジしたものでな。実は流れてきた桃なんだけど・・・」
外は吹雪。外出は危険と言うことで囲炉裏を囲み、先に戦った桃太郎の物語を話している。
ワシらのほかにもこの小屋を目指してきた魔物がいたが、ワシらをみるやいなや襲ってくるので応戦。
今はそいつらの忘れ形見のフィギュアがワシらと囲炉裏を囲んでいる。とは言っても傘を被ったお地蔵さんが女体化した奴一体分しかないけどね。来るやつ来るやつみんな傘を被ったお地蔵さんだし。
しかもその魔物は別に階層ボスでもなんでもないらしく未だに魔法陣は出てきていない。
階層ボスを倒していないのになぜこんなにもほのぼの昔話をしているのか。
それは数十分前に遡る。
学校の女子トイレから転送させられた場所は雪山だった。今のように吹雪だったわけではないが、普通にしんしんと降り積もっていた。
ワシらのいでたちは元に戻っていた。あのまま制服だったらどうしようかと思ったけど、どうやらあの階層だけの仕掛けだったらしい。タマキとミケは若干残念そうな顔をしていたが、裸足に下駄だったワシは間違いなく凍傷になっただろうから助かったわけだ。
で、寒いのが苦手なのではやく動こうと猫らしいことを言うミケの一言で取りあえず下山はいつもの見えない壁で出来そうにないので、雪山登山を始めたわけだけどだんだんと天気が悪くなっていく。穏やかな雪だったのが猛吹雪である。あっという間に視界が悪くなる。はぐれない様に道具箱からロープを取り出し三人がはぐれない様に、なおかつ動けるようにロープに余裕をもたせつつくくり登山再開。すると猛吹雪に紛れて魔物軍団も襲ってくる始末。しかも敵さん、雪だるまに雪うさぎ、雪ん子に雪男と全体的に白っぽくて見えにくいことこの上ない。
それでもタマキが魔素の動きから敵を感知し的確に仕留めていく。ワシとタマキは見える範囲でドロップ品を拾い頂上への道をつくるべく魔物に目もくれず雪をかき分けながら進軍する。なおも酷くなる吹雪。「天は我々を見放した」なんて有名なセリフと共に本当に凍死しちゃうんじゃなかろうかという不安がよぎってきたね。
十分ぐらいこの過酷な登山をすると山小屋が見えてきた。頂上ではないけど一旦ここで避難しようと中に突入する。幸いなことに中に魔物が待ちかまえていることは無く、薪もあるし火をおこしても燃えない様に石で区切られた窪みもある。素早く火をおこし暖を取ることにした。
来ていた服はもちろんビショビショだが、替えの服は道具箱にはいっているので問題ない。着替えも済ませ濡れた服はとりあえず待ち時間がもったいないと言うことで吊るしておこした火で乾くとこまで乾かす。
外の吹雪がおさまる気配は一切ない。仕方が無いので火を囲み先に拾ったドロップ品を確認したんだけどフィギュアはワシが目視で確認できた四種類の魔物の分が手に入った。もしかしたらタマキはそれ以上の種類を倒していたかもしれないけれど、それを確認するするにはこの吹雪の中戦闘場所まで引き返してドロップ品の取りのこしがあるかどうかを調べないといけない。惜しいことだけど諦めよう。そして雪男のフィギュア・・・なんで雪女にならずにユキオトコという名のまま女体化してしまったのか・・。
ドロップ品の確認が終わりこれからどうするかと作戦会議を始めたら、外からノックする音が聞こえた。最初は吹雪の戸にあたる音だと思ったのだけど、妙に規則正しいおとがヘンだということでタマキが様子を見に行った。するとそこには傘を被ったお地蔵さんがいた。そしてあろうことかタマキに襲いかかった・・・が、飛びかかったお地蔵さんはそのまま空中で光と化していた。
ワシやミケも前の階層まで知らなかったけど、タマキに魔物の不意打ちや奇襲は通用しないからねぇ。
「どうやらこの山小屋は旅人を休ませるほかに、魔物を呼び込む場所でもあるようぢゃな」
ぽつっと漏らしたタマキの推測は当たっていたらしい。
そのあとも何度かお地蔵さんが訪ねてきた。けど、全てタマキが撃破。しかも瞬殺。いよいよこの山小屋ですることは無くなり、仕方なしに火を囲んでこのダンジョンの元ネタらしき物語、手始めに桃太郎を話しているのだった。
「えらく違うにゃ!流れてきた桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの子にゃの!?」
「・・・子供に聞かせる為に改変したのは分かるが、原型が消えてるぢゃないか・・」
原型はかろうじて残ってるよ。桃が流れて来たじゃないか。
桃太郎の話しにはいくつか説があるからな。一番有名で誰でも知っているのと、次に有力とされている若返りの話を続けてしてやったら思いのほか面白い反応を貰ってしまった。
それに桃から生まれたってくだりも若返ったおばあさんの桃じ・・・ゲフンゲフン、これは言わない方がいいな。
話が終わると終わるのを待っていたかのように、再び戸をたたく音がする。
「また何かが来たようぢゃな・・・ん?さっきまでと魔素の強さが違うのぢゃ」
「ってことはお地蔵さんではないのか・・いよいよボスかな?」
「その可能性が高いのぢゃ・・スマンがどちらか戸を開けに行ってくれるかの。ウチは開けたとたんに魔法を撃ちたい」
「今までのお地蔵さんは一人でにゃんとかしてたのに今回のはそうはいかにゃいのかにゃ?」
「いや・・どうとでもなるが、ちょっと魔素が強すぎるとおもって念には念をぢゃ。それに・・ジゾウでは肩慣らしにならんからちょっと吹雪での足止めの鬱憤晴らしがしたいのぢゃ」
あれ絶対後者が本音だな。確かに見てただけだけど相手にもなってなかったからな。
仕方がない。その魔素の強い魔物を近くで見たいしワシが行くか。
「戸を開ける際には正面に立たずに横から引き戸を勢いよく開けるのぢゃ。決してウチと戸の間に入ってはいかんのぢゃ」
開ける際の注意点を聞き、何故という疑問を持ちつつ戸を勢いよくあける。
そこに立っていたのは儚げな白い着物の美女。しかし・・相手はもうすでに戦闘態勢だった。
息を目いっぱい吸ってからの吹き出し。外の猛吹雪よりも温度が低く勢いのある吹雪がワシらを襲・・・・わない!反対側からタマキの熱風が吹いている!
まあ口からではなく魔法だけど。おそらく火と風を上手に扱ってのやつだろう。そして当然のようにタマキの熱風のほうが強いのである。着物美女の吹雪は押し戻され、さらに熱風は着物美女にあたる。
だんだん溶けていく着物美女は、溶けに溶けてワシらの顔ぐらいまで小さくなってそのまま光と化してしまった。スマンな着物美女、相手が悪すぎたんだ。
フィギュアを見ると雪女とある。なるほど雪男が名前を女に変えられないわけだ。全くの別物というわけね。
魔法陣は薪があった場所に浮かんでいる。どうやら予想通り雪女が階層ボスだったらしい。
寒いのが苦手なミケが早く行こうと急かしてくる。それには賛成だ。いくら寒いのが苦手じゃないっていってもここの寒さは異常だからな。さっきのタマキの攻撃で戸も飛んでいっちゃったし・・。
タマキの熱風によって倒された雪女が残した凍ってしまった水たまりに合掌して、魔法陣へと足を急ぐのだった。
◆今回のフィギュア収穫◇
スノーラビット
スノーマン
ユキンコ
ユキオトコ
カサジゾウ
ユキオンナ




