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一一五 強制的にお着替え

熊鍋を堪能して周りをよく見れば、これまた懐かしい蓑がつるされている壁に魔法陣が浮いている。

いつものようになんの注意もせずに足を踏み入れる。

しかしいつものような場所には出なかった。


「な、なんぢゃここは?辺境のラセツニョの部屋に行く時みたいに廊下が続いておるようぢゃが・・」


「これは石?にしては継ぎ目もにゃいし・・それにこの窓のサッシとか・・これはにゃに?こんにゃ素材見たことあったかにゃあ・・」


二人とも目をむいて驚いている。それはそうだろう。ワシだってこっちでこんな建築物にであうとは思わなかったよ。

薄暗いながらもところどころ光っている廊下。緑やら赤やら色のバリエーションも多い。緑に光る場所には日本語で非常口と書かれている。同じく赤の場所は消火栓と書いてある。こちらもやっぱり日本語だ。

天井を見ればチカチカしている蛍光灯、窓のサッシはアルミ製。この建物自体もこの世界に来てから見た建物、木とか石、煉瓦とかではなく鉄筋コンクリートだな、おそらく。


「それに・・なんぢゃこの服は!?まず生地からしてわけがわからん!着心地は良いが・・」


「いろんにゃ所にちっちゃい時行きましたけど、こんにゃのは見た事にゃいし」


そして服装も何故か変わっている。金太郎の階層までは確かにいつも通りの服装だった。だが今のワシたちの服装はなんと学生服だ。

ワシは学ランに学生帽、肩掛けカバンになぜか下駄。グリグリ眼鏡じゃないのは良かったけど、昭和の苦学生みたいだ。

ミケはセーラー服。鞄はいかにも学生カバンって感じなんだけど、中身はカミソリの刃とかバッテンが書かれたマスク、さらに鉄板入りで攻撃力抜群。昭和のヤンキーかっ!

タマキは・・・ブレザーに黄色い帽子そして赤いランドセル・・うん。小学生だな。

タマキならば明治とか大正の女学生・・・矢絣やがすりも似合いそうだなぁ・・今の小学生スタイルもよーく似合っているけど。

この建物とこの服装にわざわざするってことはここは夜の学校ということか。


「まあ、なんだ。ふたりとも似合っているよ」


「にゃあ~・・そ、そう言われると・・」


「て、照れるぢゃないか・・」


取り敢えずちょっと状況が分かっていない二人を落ち着かそうと変わってしまった服装を褒めてみた。お世辞でもなんでもない本心だからいいんだけど、とりあえず嬉し恥ずかしで周りから目を離す事はできたようだ。


「とりあえず落ち着こうか。ここはダンジョンだから何があってもおかしくないって言っていたのはタマキじゃないか」


「そ、そうぢゃがの・・ぢゃが・・・そうは言ってものぅ・・自分の服装まで変わるなんていうのは、ちょっと考えられんのぢゃが・・」


「ボクらは特に特別にゃことをしてはいにゃいけど、ダンジョンにゃんだから皆自慢の武器や防具を装備して潜っているはずにゃ。それを強制変更するにゃんて・・・」


「・・まあ、場所が場所だしあんまり武器とか武具とか似合わない場所だしね」


「・・・その言い方ぢゃとモリーはここが何か分かっておるようぢゃのう」


「ああ。ここはワシの前世の学校だよ。だから制服にさせられたんだろう。“ペンは剣より強し”なんて言葉があるぐらいだったし戦いの類の物を嫌ったんじゃないかな」


その割にはその学校で良い成績を上げた人たちの中にはやたら戦争したがったり、戦争の火種を起こしたりしてたけど。勉強だって結局、受験戦争とか言う争いごとの火種なんだけど。

おそらくユーミさんが言っていた過去の最高到達地点はここだろうな。ミケの言っていた通り皆慣れ親しんだりした装備できているのにいきなり変わっては混乱するし、魔法使いだけのパーティーとかならいいけど武器主体の戦い方の人たちでは退却せざるを得ないだろうな。


「で、建物自体もおそらく鉄筋コンクリートとかアルミサッシとかなんだけど・・・」


「もちろん聞いた事ないのぢゃ。しかし頑丈ぢゃのう。ウチらの家はともかくこの世界の建築技術を遥かに超えているのぢゃ」


「ああ~、そっか。どう言う物かはよくわからにゃいんだけど、にゃんか見たことあると思ったらボクらの家に使われていたにゃ」


「まあ建材までは興味ないよね。で、光っているのは電気・・この世界で言うところの聖魔法ライトとか蝋燭みたいなもんだな」


「ふ~む・・言いたいことはわかるがの・・」


「にゃんというか・・現実離れしているにゃ・・」


ワシから見ればこの世界の方が現実離れしているんだけどな。


「建物のことはもういいのぢゃ。問題はこの格好ぢゃ。学校で制服というのは分かったのぢゃが、なんでウチとミケで違うのぢゃ?」


「もしかしてダンジョンが混乱したかにゃ?ボクにはアレがついているから・・・」


「多分それは関係ないと思うけど・・・。二人とも女性物の制服だし背格好に合わせてダンジョンが勝手に決めたんじゃないかな」


おそらく正解はタマキの背格好が女児に見えたからだろうけど、その真実を言った所で誰も幸せにはならない。タマキの機嫌を損ねでもしたら大変だ。


「そんなものかのぅ・・。もうひとつ聞いていいかの?この制服の生地はなんぢゃ?なんか手触りが知らないものなのぢゃが・・」


「それも多分この世界では流通・・というか存在してないんじゃないかな。ポリエステルとか化学繊維とか・・」


「うむ・・・確かに聞いた事ないのぅ。残念ぢゃが再現は形だけぢゃな」


これも再現するつもりかよ。タマキの裁縫技術が超絶技巧すぎる。

転送された場所から一歩も動かず、この世界には有り得ない状況についてワイワイやってると敵さんはあちらからやってきた。

地の方には犬神家の屋敷で見たテケテケ軍団。ただしセーラー服を着ている。

そして天井からは・・ん!?非常口のピクトさんが蠢いている!?次々に非常口の電灯からピクトさんが降ってくる。


どうやらまったり時間は終了の様だ。戦闘の始まりだ。


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