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一一三 配役に納得がいかない

夫婦三人になってはじめての冒険は小川の流れる穏やかな場所から始まった。

どことなく辺境の沙悟浄の階層に似ているな。

あっちは河童とか蛙とかでこっちは鬼だらけだけどな。

オーガと鬼の大群である。オーガはいかにもな怪物といった風体で、鬼のほうは慣れ親しんだ虎のパンツに金棒である。ワシらを確認すると一斉にこちたになだれ込んできた。

どちらも力が強く喰らえば立派な人柱が完成しそうだが攻撃に当たりさえしなければなんということはない。そもそもタマキが主戦のワシらでは接近戦に持ち込まれるなんてのは稀なことだからな。

手持ちぶさたから同じくタマキの独壇場を眺めていたミケに目の前で雷に打たれ炎にやかれているオニたちについて聞いてみた。


「結局、オーガと鬼っていうのは何が違うの?どっちも人より大きくて力も強いけど」


「確か、発生場所が違ったハズにゃ。オーガっていうのはこの国でもわりとどこでも発生したりするものにゃんだけど、オニっていうのは固有種でこの国にはいにゃいはずにゃ。それとオニの方は酒が好物らしいんだけど、オーガはそうでもにゃいらしいにゃ」


なるほど。ワシのイメージの方は完璧にオニの方ということだな。

そんな説明を聞いているとオーク達を滅したタマキが涼しい顔で話に入ってきた。


「それにの、鬼人族っていうのがおってその祖先がオニぢゃ。もちろん義母君がウチを崇拝してたみたいに鬼人族にとってオニは神聖な存在ぢゃから、間違ってもダンジョン以外では戦ってはならんのぢゃ。正当防衛なら認められるがの、オニはオークより数段賢いからあっちから仕掛けるなんてのはほぼないらしい」


そういえばそうだったな。やはりどの人族もご先祖種は敬うってことなんだな。

タマキがあっちから仕掛けることがほぼないって言ってたけど、ここのは普通に仕掛けてきたけどな。

これも外の常識が通用しないダンジョンならではの珍事なのだろう。

ドロップ品を回収しながらその辺のことは深く考えないようにした。


回収が終わりちょっと進むと、三体の影がこっちに向かってくる。更によく見れば後ろにも三体なにかが控えているな・・・。

さらにそのうしろには日本昔ばなしでお馴染みの茅葺の屋根の小屋が建っている。おそらくあれがこの階層のゴールなんだろう。


「これは・・・ケンエンは辺境でも見たし、ハーピーもそこまでは珍しいもんでもないんぢゃが、あの黒いのは・・・オルトロスかの!?久々に見たのぢゃ・・・」


「タマキがそんなに驚くのって珍しいな。そんなに珍しいのか?」


「オルトロス自体が珍しいからのぅ。元々野犬が魔物化してワードックになってその弱さから殆どそこで命を散らすのぢゃが、稀に生き残って更に特殊進化したのがオルトロスぢゃ。更に進化すればケルベロスぢゃが、それはウチでも見たこと無い」


どうやら犬の魔物さんは進化する。そうすると一つずつ首が増えるらしい。


「ま、だからといってウチの敵ぢゃないんぢゃがの。珍しいだけぢゃ」


そういうとそれぞれに雷を一発ずつお見舞いする。

脳天に直撃である。即死だ。

タマキでさえ思わず口に出す珍しい魔物ならもうちょっと見たかったが、仕方がないな。

光と共に消えていく亡骸。その後に残されるフィギュア。

これで我慢するしかないな。擬人化してるけど。


ドロップ品の回収を律義に待ってくれたのかよほどの自信があるのだろうか、小屋の前に陣取っている三体は襲ってくることはなかった。

回収を終えて近づくと、片や酒みたいなのをゆっくりゆっくり舐めるように味わっているじいさん。片やこの世界にもあるのか白い風邪予防のマスクをしている女。そして真ん中には先ほど見たオークに間違えそうな異形の者・・・・腰に刀を携えていてその額には桃のマークの入った鉢巻をしている・・・・ん?桃のマーク・・・!?

・・・まさか・・・でも、そういえば鬼、ケンエンハーピーオルトロス、そして桃・・・・。

これは、桃太郎・・・なのか!?

だとすれば、真ん中はまあ本人だろうけど、周りに居るのは誰だ?あれに出てくるのはあとはじいさんとばあさんのはずだ。酒瓶持っているのはまあじいさんなんだが、女の方はばあさんと言うには若く見える。まあ白髪染めをしてマスクで顔半分隠しているからそう見えるのかもしれないけど・・・。

敵前でありながらそんなことを考えていると、不審に思ったのかタマキが聞いてくる。


「ん?どした?なんかあったのかの?」


「・・いや、そういうわけじゃないんだけど・・・例によってワシの知ってる物語とよく似たシチュエーションなんだけど、一部記憶と合わない点があってね・・ちょっと混乱中」


「異世界の物語にゃあ?是非とも聴きたいにゃ」


「ウチも聞きたいが、こ奴ら倒してからでもよかろ?モリー、合点がいこうがいくまいが目の前のは魔物ぢゃ。取りあえず殲滅ぢゃ」


そういうやいなや、いつもの通りの圧倒的な魔法での決着がつく。

彼らがどんな戦術でどんな攻撃をするかなんてタマキの魔法の前では意味をもっていない。

魔物とは言え大丈夫かな、コレ。老人虐待とか言われないよね。

おそらくボスなんだろうけど、毎度のことながら可愛そうになるぐらいあっけない。ダンジョンという性質上こんな甘いことを言ってはいけないのかもしれないし、贅沢な悩みなのかもしれないけど。

御三方がいた場所にはドロップ品。もちろんフィギュアも三体分ある。

真ん中のは予想通り桃太郎。美麗な女剣士が立っている。じいさんに見えたものも女の子にはなっていたが酒瓶はフィギュア化しても大事そうに持っている。名札を見れば『油すまし』とある。はぁ~・・妖怪でしたか。ま、こいつはまだ分かる。ワシのイメージでもじいさんだ。

もう一方の女はフィギュア化してもそのままの格好・・・?ん?マスクが着脱可能なのか。

好奇心にしたがってマスクを外してみると、なんと『口裂け女』である。名札も確認。たしかに口裂け女だ・・。口が裂けている以外は美人さんだ・・・・。

どういう配役よ!?やっぱり全然ばあさんじゃないじゃないか!

これだけ憤りを感じてもそれを汲んでくれる人はこの世界にはいない。そもそもこの物語が存在しない世界だしね。

しかしこの分じゃこの先もこんな風にオリジナルとは若干違う物語の世界を行くなんてのも多々あるんだろうな。・・・それはそれで楽しそうだけど・・・。


ドロップ品を拾い終えると、主のいなくなった小屋のドアをあける。

囲炉裏の部分には魔法陣が浮かんでいた。しかしそれよりも気になったのは囲炉裏傍に置かれている団子と茶である。毒入りかとおもい鑑定したところなんの変哲もないきびだんごだった。

そうだよね。桃太郎と言えばこれだよね。


疲れてはいなかったけど(タマキもあんなの準備運動にもならんと言ってた)、ありがたく団子と茶を頂いたのだった。




◆今回のフィギュア収穫◇

オーガ

アカオニ

アオオニ

ハーピー

オルトロス

アブラスマシ

クチサケオンナ

モモタロウ

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