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一〇九 たくましく成長した少女

ワシたちは目下クマの大軍団と交戦中。

野生の熊なら良かったけどそこはダンジョン、ちゃんと魔物化していたよ。

別にこっちからちょっかいを出して戦闘に持ち込んだわけではない。

マーダーグリズリーは普通に襲いかかってきたし、ハチミツを幸せそうに舐めていたハニーベアーはそのハチミツを取られるとでも思ったのか、うっかり近づいたら襲いかかってきた。

最初はそれこそ一匹ずつだったんだけど、一匹倒すと今度は二匹、それらを倒すと今度は四匹とねずみ算式に増えて行き、いまや視界は熊一色である。


話は数分前。

湖の魔法陣に足を踏み入れればまたもや森の中だった。

日光はいい感じに降り注ぎ、木々は青々としており島を思い出すような場所だった。先程の湖の近くの森なのではと思うぐらい場面に統一性を感じる。

あいも変わらず後退は見えない壁で出来ない仕様の箱庭のようなので、とりあえず前進していたんだけどのどかすぎる。

不思議と動物一匹、虫一匹出てこない。見渡す限り木々しかない。


「のどかというか、不自然すぎて逆に不気味ぢゃ・・」


「そうにゃ・・虫の一つも出てこにゃい森にゃんて聞いた事にゃいのにゃ」


「まあいいんじゃないの。ダンジョンだって魔物がいないとこだってあるんだろ?」


「確かにセーフティゾーンというのがあるが、その場合はこんな森の中にほっぽり出すような転送はなかったと思うんぢゃが・・」


「ボクも聞いた事しかにゃいけど、セーフティーゾーンは仮眠できるように、家みたいにゃ建物があってその中に転送されるはずにゃ」


なにその便利な親切設計!?

ちょっと驚いた風の顔をしてしまったワシにタマキが補足説明をしてくれる。


「ダンジョンは元々人をいざなって中に入れてそこで死んでもらって魂を吸収、成長するものぢゃ。そういうゾーンがあれば沢山入ってくるという計算ぢゃろ。ムチばかりではなく多少のアメはあってもいいぢゃろっていう気配りぢゃ。もっとも深い階層のダンジョンぢゃないと出てこんがの」


「仮眠で釣っておいて、永眠させようってことなのね・・」


「・・・同じ眠りでも大きくちがうにゃあ・・・」


そんな他愛のないやり取りをしながら進んでいくと、黒い物体が突如目の前に現れた。

その物体はいきなりこちらに向かって振りかぶったように見えた。こっちは当たってなるものかと先制攻撃がタマキから飛ぶ。これがいけなかった。

いつものように一撃で倒す事ができドロップ品も手に入れる事が出来たのだが、ドロップ品を取ると現れる分裂した敵。やむなくそいつらを再び倒し今度はドロップ品を取らずに行こうとしても数歩歩くとドロップ品は消滅して結局再び分裂して出現する。まさしく行くも地獄引くも地獄である。どうあっても熊はふえるのである。しかも結構素早い。なので適度に攻撃で倒しつつ時々ドロップ品を回収しながら早足で森の奥に進んだ結果、冒頭の見渡す限りの熊地獄にいる状態になっちゃったわけだ。


「きりがないのう・・なんとかならんか、モリー?」


「そろそろ疲れてきたにゃー・・」


「うーん・・」


なんとかって言われもなぁ・・進行方向にはまだいないから突っ切って行けば振りきれない事もないだろうけど・・・あ、そうだ。


「タマキ。敵を一旦殲滅してくれ。その後ワシに飛び乗れ」


「ん?たやすい事ぢゃが、なんか閃いたのかの?」


「前にアマゾネスの島に行く時にやったみたいに走る。熊たちが出現するまでの時間でワシが全力で走ればまけるかもしれん」


「なるほどのぅ・・ぢゃあ・・掴まりやすく背中に飛び乗るのぢゃ。ミケ、譲りたくはないが、今回はお姫様だっこの権利は譲るのぢゃ」


「に、にゃ!!そ、それは決定にゃ!?」


「嫌なら無理にとは言わんが、ウチがお姫様だっこされに飛ぶより安全でスムーズぢゃろ?」


「そ、それは・・・そうにゃんだけど・・」


なんかにゃごにゃご言っていたけど最終的にはこの提案通りに行くことになった。持ち上げたミケはなぜか恥ずかしそうだったけど・・。

ミケを持ちあげたのを確認してタマキが広範囲に魔法を放つ。一面見渡すかぎり熊が一斉に光と化す。その一瞬を逃さずタマキがワシの背に乗る。その感触を確認したと同時にワシは大地を蹴った。

今やもう人という言葉に疑問符が浮かぶどころの騒ぎではないワシの筋力は自重しない。あっという間に熊軍団から離れ、どうやら熊の縄張りをも抜けちゃったみたい。

急には止まれぬものでその後に控えていたと思われるワーウルフの縄張りをノンストップで通過した。新幹線から見る世界の車窓って感じだ。

ようやく止まったところには一軒の家がある。山小屋といったところか。


「とりあえず開けてみるけど、大丈夫二人とも・・?」


「・・速過ぎぢゃ・・あんな高速で動いた事ないのぢゃ・・」


「・・・・(ぽ~~~)」


タマキが速度に驚いてミケはなんだかのぼせているけど、まあ大丈夫だろう。

ドアを開けると待ちかまえていたのは赤いフードを被った人型。目をぎらつかせ、手に斧とこの世界では初めて見るおそらく猟につかうだろう銃。その人型の向こう側には自身で狩ったのであろう大量の狼の毛皮。おそらく階層ボスだろう。

まあボスとはいっても・・・ね。どんな攻撃をしてくるとかあんまり関係ないんだよね。あっちが動く前にタマキが動く。銃には銃をってことで岩盤を貫通させるような威力で水鉄砲を放つ。もちろん即死。

光と化して消えたその後にはドロップ品たちと魔法陣のいつも通りの光景が・・。

この階層はボスよりはフィールドの方に手を焼いたなぁなんて、感慨深くフィギュアを取り上げると『アカズキン』とあった・・。


この世界の赤ずきんちゃんは逞しいなぁ・・。自ら狼を狩っちゃうんだなぁ・・。




◆今回のフィギュア収穫◇

マーダーグリズリー

ハニーベアー

アカズキン

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