一〇 興味が全てを飲み込む時
一旦話しはじめると、あれワシってこんなに話好きだったかな?と自分自身で思うほど流暢に淡々と語っていた。
前世の記憶がある事、ヨーコさんと出会う前に神様を名乗る人と出会った事、その神様にこの世界に転生させられたこと、その際なんかいろいろイジられたデータを貰った事・・・
隠すことなくワシの今までのことを話したわけだ。
いままで自分の事を気付かないうちに隠してきたワシの今の率直な気持ちは「はぁぁ、清々したぁぁ」といった感じだ。
やぱり隠しごとを自分一人でかかえこむのは精神上あまりよくないのかな?
とすればワシの読んだ異世界小説の主人公ってすごいメンタルだよなぁ。彼らはワシとちがい人生の途中から違う世界に送られて能力を隠して生活したり戦ったりして、さらに自分だけの安寧の居場所を見つけるまでその能力をずっと隠すものだったし。勇者とかの召喚は別として・・・。
数十分かかったワシの話を二人は真剣なまなざしでまじめにきいていた。
・ ・ ・ ・
「ふむ、よう分かった。つまりお主は異世界から記憶を持ったまま転生してきた童ということぢゃの」
「そしてその転生の際、九尾の狐様を人にしてしまうようなスキルやらロストスキルをもらった、と」
話を終えると二人はワシの話の概要をまとめながらうんうんと噛みしめている。
あれ?もっとこうウソだろみたいな反応ないの!?
「ええと、二人とも信じてくれるの?」
「もちろん!キミは言葉や文字を覚えるの早かったし、歩き始めたと思ったらいきなり勝手に本を持ち出して読んでいたり、教えてもいないのに料理・・しかもアタシが作るのよりおいしいのを作っていたのだから、なにかあるとは最初から思っていたし。まぁ想像以上だったけど」
「さきほどのお茶といい菓子といいこの世界で見たことないものぢゃからの。しんじないわけにはいくまい。現にウチは人になってしまっているわけでもあるし」
「というかうらやましいわよ、キミ!こんな経験してるなんて!アタシがやった魔王討伐なんて霞むぐらいよ」
二人とも理解がありすぎて、逆にこっちがびっくりだよ。
というかヨーコさんはもうちょっと落ち着いてくれ!
魔王討伐だって十分な経験だからね!?霞まないよ!?
その後、いつもの夕食の時間をゆうに超えてしまっていたので、話を切り上げ皆でご飯を食べることになった。
狐の人が二人いるし、油揚げを使ったものにしようと言う事で衣笠丼に似たなにかを作った。
ヨーコさんの好物のこの料理は、美幼女にも好評を得られたらしく、おかわりまでして食べてくれていた。
というか美幼女のたくさん食べる姿って・・・かわいいなぁ・・。
夕食後、ヨーコさんからの怒涛の質問攻めにあうこととなる。
どうも先程の話で、神様うんぬんの話より、前世の世界のことに興味がでてしまったようだ。
あれこれと聞いてくるのだが、ワシは料理の事と妖怪なんかの人外趣味以外は一消費者でしかなかったのだ。
PCやVRを使っていたからと言って、その仕組みまではさっぱりなのだ。
こういうものがあった流行ったなどと言う事はできても、こういう原理でとか仕組みでとかいう専門的な知識は無い。
当然、深い所まで知りたいヨーコさんの希望に応えることは出来ない。
それでも次から次へとマシンガンの如く聞いてくるのだ。
普段のクールなヨーコさんはどこに行ってしまったのだろう?
質問に答えながら、ヨーコさんの底なしの知的好奇心に引いているワシなのだった。
・ ・ ・ ・
時計をみればいい時間になっている。
ヨーコさんの質問攻めも一応の終息になっている。
興奮しすぎたヨーコさんが知恵熱だしてバタッと机につっぷしてしまったので、ベットに強制送致したためである。
ベットに横たわるヨーコさんの顔は満足そうである。
明日以降もこんな日が続くことになるのだろうか・・・?ちょっと勘弁してもらいたい・・。
台所に戻ると質問攻めの間、空気のようになっていた美幼女が目を瞑り、腕を組み考え事をしている。
美幼女はワシとヨーコさんとのマシンガン質疑応答を一言も口を挟むことなく、傍観していたのだ。
時折、うなずいたり、考え込んだり、興味深く目を見開いたりとしっかりこっちの話を聞いていたようだが・・・
この子はこれからどうするのだろう・・・泊って行くのかなぁ・・それとも帰るのかなぁ・・
そんな事を思いながら、机の上のコップを下げようかと美幼女の前のコップに手を伸ばすと、ぱちっといきなり開けられた綺麗な目と不意に目があった。
それと同時に突然美幼女が口を開いた。
「なぁお主、ウチと契約せんか?」




