一〇四 吸血鬼とはなにか
翌日ワシら三人は意気揚々とギルドであっただろう建物の裏、つまりはダンジョン入り口に来ていた。
ムラマサさんがちゃんと玉の中に帰る事が出来るかどうかも確認済みだし、道具箱の中は食料も薬の類もバッチリだ。
玉の中にダンジョン内でも入る事が出来るならこんな用意もしないで済むんだが、どうもダンジョン内では生物は入ることは出来ない仕組みみたいだからな。
そのくせアイテムボックスとしての機能は健在なんだよなぁ・・臨機応変に人も入れるようにしてくれていればなぁ・・。
道具箱を標準装備しているワシは玉自体をアイテムボックスと使う事は少ないし。
これは辺境でもピラミッドでも試した結果発覚したんだが、これは多分ダンジョンなんていう魔物が蔓延るところに玉自体があった場合に魔物がむやみやたらに入ってこられないようにする防衛策なんだろう。
「さてそれでは四つ目のダンジョン制覇にいってみようか」
「そうぢゃの。ここに立っておいてもなにも始まらんしの」
「たしか・・・八階層までは確認されているはずにゃ。にゃんでも誰かの家みたいにゃのが続く感じというちょっとにゃにいってるか分からにゃい内容にゃ。だけどにゃにぶん古い情報だから変わっている可能性もあるにゃ」
「それに、ライムさんの手紙情報だと吸血鬼が逃げ込んで出てこなかったって事だけど・・・タマキ。吸血鬼って寿命とかあるの?」
「一般的には寿命自体は人とあんまり変わらんはずぢゃ。死ににくいだけぢゃからな。人の血を吸うのも別に寿命を延ばすための行為ではなく、ほれ、人が酒とか趣向品を嗜むぢゃろう?あれに近い行為なのぢゃ。まあ酒は人を堕落させるが血を吸った吸血鬼は元気になるがのう」
「ということは、その吸血鬼が生きている可能性はないな」
「そうは言い切れにゃいにゃ」
吸血鬼がでなさそうだと言う事で安心半分、がっかり半分な気持ちになっていると、珍しくミケが否定の言葉を紡いだ。
「あの文章だと吸血鬼がいたということしか分からにゃいにゃ。どんな吸血鬼が入ったかは分からにゃいにゃ」
「そうぢゃのう。万が一にでもその吸血鬼軍団のなかに真祖が居た場合は生きている事があるのぢゃ。あやつらはそうそう死なないし寿命もすさまじく永いからのぅ・・それこそ一〇〇〇年クラスの寿命ぢゃしの」
「真祖ってことは・・吸血鬼の王族かなにかか?」
「ん?よく知っておるのぅ」
まあね。そういう類の同人ゲームやったことがあるからね。
めっちゃプレミアがついちゃったあの吸血姫の伝奇ゲーム・・。
中でもカレー先輩が好きだったなぁ・・。
死ぬ間際のヲタクが市民権を得た状況もよかったけど、あのゲームが出た時代が一番楽しかったなぁ。
「まあもっともおとぎ話みたいに血を吸った人を眷属にはできないのぢゃがの。あれはあくまで自身の欲を満たす行為ぢゃからの。魔物は眷属にできて使役できるみたいぢゃが・・」
「でも強さは折り紙つきですにゃ。真祖種とそれ以外では個体差が数十倍あるといわれているにゃ」
なんか・・・吸血鬼のイメージが崩れるなぁ・・。
血を吸うのが娯楽なのも真祖が長生きで強いっていうのは想像どおり。
だけど血を吸うイコール眷属にするって言うのはワシの中ではテンプレだったんだけど・・。さらに不死者じゃなかったっけ?なんで寿命があるのか・・。
というか眷属にならないんだったら血を吸われた方も吸血鬼になることはないのか?
「血を吸われた人はどうなるの?」
「どうなるもなにも・・。普通は蚊に食われたときと変わらんのぢゃ。理性もあるしそれが無いモスキートの方がよっぽど危険ぢゃ。やばいぐらい腹を空かせている場合は理性は吹き飛んでミイラになるまで吸いつくすらしいが、そんな状況そうそうなかろう」
「ちなみに弱点とかってある?ワシの知識だと十字架とかニンニクとか聖水とか弱点の多いイメージなんだけど・・」
「そんにゃ話は聞いたことがにゃいのにゃ。史実でも魔法使いや戦士が協力して倒したって言うのは聞いたことがあるんにゃけど、弱点をついて倒したっていうのはにゃいにゃあ・・」
「ちなみにぢゃがモリーのイメージでは他にどんな弱点があるのぢゃ?」
ワシは前世の記憶を総動員してヴァンパイア像を語る。
しかし得られたのは残念ながら賛同の声ではなく・・・。
「なるほどのぅ。こうもりが眷属とかトマトが好きとか一部当てはまっておるが全く別物ぢゃな。奴らは確か人とあまり変わらない食生活をしておったはずぢゃからニンニクは食べておるはずぢゃし、血の代用品にワインや生肉を採るなんてないはずぢゃ。肉なんてわざわざ火魔法で焼いておったような・・」
「ヴァンパイアは悪霊系の魔物じゃにゃいから鏡には写るし、昼間からでも堂々と太陽の下を歩いていたらしいにゃ。それに杭を心臓に打ち込めば死亡するのはボクたちといっしょにゃんじゃ・・」
ただの間違い探しになってしまった。
「ま、まあとにかく居るかもしれないというのを頭の隅にでもおいておこう。つまりはいつもの魔物とあまり変わらないという認識でいいんだね?」
「ま、そうぢゃの。知識が高く珍しい魔物がいるかもぐらいの感覚でいいんぢゃないか。居るかいないのさえわからんのぢゃから構え過ぎても仕方がないのぢゃ」
まだ見ぬ吸血鬼に想いを馳せつつ、第四のダンジョンに足を踏み入れた。




