一〇〇 給仕と妖刀
本編なんだかんだで百話到達です。
玉の中は相変わらず平和だ。
決まりごとをちゃんと守っているようだな。禍々しい空気も感じない。
「おかえりなさい、モリーさんたち」
「ただいま、メイ。といってもまたすぐに出かけるけどね」
「変わりはないかの?」
「ないですね。ヨーコ様も最近は落ち着いていますよ。まあ、こんどは一人理詰めで将棋ばっかりしてますがね」
ヨーコさんも相変わらずだな。まあメイに迷惑をかけていないだけ成長しているのかな?
そんなことを思いながらその場でひとまず解散となった。
建物に入って行くミケとタマキを見送りワシも帰ろうとすると、メイが不意に呼びとめてきた。
「ところでモリーさん。その腰の物は?」
「ん?ああ、これ。今回たどり着いた村にあったものなんだけど、この村は忘れ去られた村ということで遺跡扱いだったんで持って行っていいって言われて持ってきた刀だけど」
「モリーさんが武器にしようと考えるような刀です。きっと普通じゃないんでしょう」
なんか給仕のワシの評価も大概だな。
なんだ?ワシが普通の武器使ったらいかんの?
「ま、まあそうかな。一応夢幻級の刀ってことらしい」
「はぁ・・・やっぱりとんでもないですね。私と同等程度ってことですか」
「・・なにがメイと同程度なの?」
「ん?あれ?知りませんでしたか。私はこの玉そのものですので。そしてこの玉はもちろん夢幻級のアイテムですから」
・・・驚愕の事実って言うのはこんな風にあっさりと聞いてしまっても問題ないんだろうか?
常々思ってはいたさ。この玉はもしかしたら夢幻級じゃないかとはね。
これだけの快適さと便利さを兼ね備えている上に、技術がこの世界のそれが追い付けないぐらいのレベル。夢幻級だといわれてもそこまで不思議とは思わない。むしろ納得である。
だがしかし!この玉がメイそのものとはなんだ!?
「あ、あのさ・・・。この玉がメイそのものってどういう事?」
「どうもこうも、言葉通りの意味ですが・・最初出会ったときに玉を拾ったでしょ?あれがこの玉の核。その核が魔物化したのが私です。万が一ですが私が完全消滅した時にはこの玉は割れてしまいます」
なんということだろう・・・。
それなら最初に所有者になるためのゲンコツで下手したらワシ、夢幻級のアイテムを壊してしまうところだったんじゃないか。
そういう重大なことは出会ってすぐに言って欲しいものだなぁ。
・・・ん?あれ?玉自体がメイってことなら・・・
「もしかしてメイ・・外でも具現化出来たりする?」
「できないことはないですが、しない方がいいです」
「なんで?」
「具現化するとその後一週間程度玉に入ることはできなくなります。さらに具現化する際は玉から全ての生命体を出す必要があります。そしてなにより外に出た状態の私はそれこそ一般人の給仕と変わりませんので、戦闘もできない。冒険者であるモリーさんに付いていけません」
この玉の中でワシの海を割っちゃうレベルのゲンコツ(手加減はしたけど)を受けても半日程度でなんとかなっていたのに、外に出ると一般人とか普通に考えれば何言ってんだという感じなんだけど、メイは冗談とかいうようなタイプじゃないしそうなのだろうけど・・・落差が大きいなぁ。
つまり外に出たら普通にダメージも受けるし、受けると死んじゃうってことか。そして死んじゃうと玉も割れて使用不可になる・・・と。なるほど出ない方がいいな。少なくとも今世でのワシの生が終わるまではあって欲しい道具ではあるし。
というかワシが所有者であるうちは出れないだろう。引きこもりがいることだし。
「話を元に戻しますが、ちょっとその腰の物を見せて貰ってもよろしいですか?」
「あ、うん。どうぞ」
そう言ってメイに妖刀村正を渡す。
手にとった途端、メイの無表情が揺れた気がした。
「・・モリーさん。これ、抜きましたか?」
「いや、そういえばまだ抜いていないなぁ」
「・・ちょっと抜いてみませんか?」
「それはいいけど、どうかした?なんならメイが抜いてくれてもいいけど・・・」
そう言うと、メイがおそるおそるといった風にゆっくりと刀を抜く。
その刀身は・・・美しい。見事な乱刃。とても長い間放置されていたとは思えない。錆びもなければ刃こぼれもなし。
「・・・私の考え違いでしたか・・?たしかに同族のような気配を感じたと思ったのですが・・・」
そう呟きながら鞘におさめ、ワシに刀を返してくる。
ワシはもうちょっと刃を見たかったので、手にとるなり鞘から抜く。
するとどうだろう。
メイが抜いた時はただ乱刃の綺麗な刀身だったのに、ワシが抜いた今はその綺麗な刀身から黒いオーラみたいな靄が発せられている。なにかのいじめだろうか?
だんだんと靄が濃く、広がって行く。
なんかこの光景どこかで見た事があったような・・・。
「・・やはり・・モリーさんは特別ななにかを持っていらっしゃるようですね・・私の時と同様になにかが具現化するようです。いきなり襲いかかってくるようなことはないと思いますが一応気をつけてください」
注意を促すが、そこまで緊迫した様子はない。きっとメイの中では安全と言う確信があるのだろう。
ああ、そうか。この風景はメイと初めて出会ったとき、核を拾った時と同じなんだ。煙の色が違うから一致しなかった。
靄がだんだんと一か所に集まって行く。それとあわさるように手に持っていたはずの刀も靄になって手の中から消える。
すべての靄が集まり形を成して行く。
靄が集まり終わったその場所には―――
―――長い髪の女の人が全裸で立っていた。
いまさらですが、モリーたちが出入りしている玉は“ぎょく”って読みます。




