第十二話 『 死闘、〝十石〟 』
……最初に飛び出したのはカグラであった。
「神威心剣流――」
その業は神威心剣流の中で最も直接的であり、同時に――……。
「 〝神凪〟 」
……最も疾い一撃であった。
カグラの神速の抜刀は最早人の感知できる領域を超えており、射程距離に入ってしまったヴァリーはかわすことも、防ぐこともできずに一刀両断された――が……。
「残念……♪」
……一刀両断されたと思われたヴァリーであったが、それは陽炎(地表と気温の温度差により、光の屈折が起き、実体と目で見た景色にズレが生じる現象)であり、すぅと幻のように消えていった。
そして、間髪容れずに実体であるヴァリーはカグラの懐に潜り込んでいた。
「隙あり……♪」
ヴァリーの灼熱の右腕がカグラの心臓目掛けて突き放たれる。
「そっちがな」
「……あっ?」
ヴァリーは戸惑う。何故なら……。
――既にアイズがヴァリーの真横におり、紅く発光する右手を振りかぶっていたからだ。
「カグラに限らず、全力抜刀の後には必ず隙ができる――だからお前はそこを突くと予想できたよ」
アイズの消滅の右手がヴァリーに迫る。
「やるじゃ――」
そして、ヴァリーは一切の抵抗も無く、顔面を抉り取られた。
「……っ!」
しかし、そのあまりの手応えの無さにアイズは目を見開いた。
「――ん……♪」
それだけではない、ヴァリーの抉られた顔面も、すぐに修復していったのだ。
「その眼に焼きつけろ」
完治したヴァリーが嗤う。
「これが〝十石〟」
灼熱の右腕がアイズに迫る。
「〝紅玉〟のヴァリー=レッドストンだ……♪」
確信した勝利を覆され、意表を突かれたアイズが顔の前に腕を交差させてガードする。
「受けるな、馬鹿っ……!」
――カグラがそんなアイズを肩で突き飛ばした。
アイズとカグラは床を転がり、ヴァリーの灼熱の右腕をかわした。
「あんなん受けたら腕がお陀仏なるぞっ!」
「わりィ、カグラ。助かったよ」
「謝んな、前を見ろっ」
カグラに叱咤されたアイズは体勢を立て直して、前方のヴァリーを注視した。
「いや、見るべきは〝上〟だよ」
……声は真上から聴こえた。
……アイズとカグラが視線を上げた。
……大蛇のよう蠢く毒霧を纏ったイカルゴがアイズとカグラの真上にいた。
『……っ!』
アイズとカグラが絶句して、頭を上げたがイカルゴを察知するにはあまりにも遅すぎた。
「眠れ」
大蛇のように蠢く毒霧がアイズとカグラを呑み込まんと一挙に押し寄せる。
「紫雲の大蛇の腹の底で……」
……アイズの消滅の右手ではこの量の毒霧は消しきれない。
……カグラの神威心剣流では気体である毒霧は凌げない。
「じゃあ」
アイズが不敵に笑う――同時、アイズの右手が紅く発光した。
――そして、突風がアイズを中心に吹き抜け、毒霧を吹き飛ばした。
「〝創造の右手〟で吹き飛ばせばいい――かな?」
アイズの錬金術の本質は〝破壊〟ではなく〝創造〟にある。
今回、アイズは自分を中心に大量の空気(N²,O²等)を錬成し、それを一瞬で行うことで押し出された空気が毒霧を吹き飛ばしたのだ。
「……ここまで錬金術を操れているとは予想外だったね」
イカルゴが飄々とした態度を崩さず、アイズの評価を改めた。
今までのアイズは〝消滅〟、しかも調節不可の力任せな使い方しかしていなかった。
しかし、今のアイズは過去とは違い、自身が錬金術師であり、そして錬金術が何であるかを知っていた。
自身の能力を把握すること、それは戦いにおいて大きな成長となるのだ。
故に、今のアイズは強い。カグラに敗北したアイズでは無いのだ。
(……と強がってはみたものの、今の俺では空気とか水とか簡単なものしか創れないけどな)
錬金術は陽子・電子・中性子の数と結合を調節することにより物体を錬成する力である。その為、錬成したい物体の構成原子、分子構造を理解しないと錬成できないのだ。
「見くびっていたことを謝ろう、君たち二人は確かに強い」
イカルゴから発せられる威圧感が更に重々しく、そして鋭くなった。
「御詫びに改めて名乗り直そう」
……アメジスト指輪が妖しく煌めく。
「わたしとレッドストン様はのチーム、チーム名は――……」
……優しげな眼差しが凶暴な眼光を放つ。
「〝錬金術師殲滅隊〟」
――大量の毒霧がアイズとカグラに襲い掛かった。
「〝風車〟だ、カグラっ……!」
しかし、アイズは冷静に床に右手を添 えて――床を消滅させた。
『……っ!』
突然、足場が消滅したせいでアイズ・カグラ・ヴァリー・イカルゴは為す術も無く一階へと落下する。
最初に制空権を取った者は先に予測できていたアイズとカグラ――ではなく。宙を自在に飛び回る機動力のあるヴァリーであった。
「不意討ちで制空権取れると思ったか?」
ヴァリーは手足を爆発させることにより機動力を得て、アイズに飛び掛かった。
……一階の床に着地するまで残り――コンマ一秒。
「勘違いすんなよ」
……ヴァリーの右手が迫る。
……カグラが脇差しを浅く鞘に納刀した。
……アイズの右手が床に触れる。
「俺ははなから空中戦なんて考えてねェよ」
――一階の床とその先の地面が消滅した。
……同時。
「神威心剣流」
――高速回転した鞘がヴァリーの右手を凪ぎ払った。
風 車
「なっ……!」
ヴァリーの右手は高速回転した鞘に打ち消され、アイズに届かなかった。
巨大な大穴に落ちるアイズとカグラとイカルゴの三人。
「俺がするのは――」
……アイズの右手が紅く煌めき、そして――……。
「水中戦だ……!」
――突如、大穴に大量の水に満たされた。
飛行能力を持ち合わせていないアイズ、カグラ、イカルゴは為す術も無く深い水溜まりに落ちた。
三本の巨大な水柱が立ち、水飛沫が飛び散る。
この水の正体はH²Oであり、アイズはそれを錬成して、大穴に水を張ったのだ。
肉体を焔と化したヴァリーは、鎮火を恐れて水面から距離を置いた。
『……』
……沈黙は一瞬、最初に飛び出したのはカグラと――イカルゴであった。
「神威心剣流」
「霧ノ型」
……カグラがイカルゴ目掛けて獲物を振りかぶる。
……イカルゴが渦巻く毒霧をカグラに繰り出す。
「 〝水扇華〟 」
「 〝大蛇〟 」
カグラが水の溜まった鞘を薙ぎ、水の斬激を飛ばし、イカルゴの放った大蛇を模した毒霧が凶悪な顎を開いた。
しかし、衝突したのは水と霧、互いが互いをすり抜けて、敵を討たんと直進する。
「アイズ」
「レッドストン様」
水面から飛び出したアイズがカグラの前方に割り込み、飛行していたヴァリーはイカルゴの前方に割り込んだ。
「頼んだ」
「感謝致します」
――アイズが空気錬成で毒霧を吹き飛ばし、ヴァリーが火焔で水の斬激を蒸発させた。
アイズは水面を錬金術の能力の一つ――状態操作によって氷結して、着地した。
一方、イカルゴは巨大な檜の角材を召喚して、足場を創った。
(……またか! イカルゴの家周辺囲う毒霧といい、ヴァリーの常時焔化といい異常だ)
アイズは異常を意図も容易く成し得る〝十石〟に疑問を抱いていた。
(代価、召喚速度、知識量……どれを取っても普通じゃない……!)
金論術は自身の知識の範囲内で、金を対価に行使する力である。
(考えられるとするなら――……)
しかし、イカルゴとヴァリーは一度もアイズとカグラに金貨を見せていなかった。
つまり、イカルゴとヴァリーは金を使っていない。そんな召喚方法は一つしか存在しない。
「〝一日利権〟」
〝一日利権〟……それは、膨大な金塊を対価に、契約時間から二四時間、無制限に金論術を行使する召喚方法である。
そんなアイズの導きだした答えにイカルゴは不敵に笑った。
「御明察、これは紛れもなく〝一日利権〟だよ」
「だけど、それには大量の金貨が――」
そこでアイズは気が付いた。
……〝十石〟を統べるリーダーを、
……その者の能力を。
「錬金術、か」
「正解」
そう、〝十石〟を統べる王――グラン=ディオンは錬金術師だ。
そして、錬金術師ならば――意図も容易く金を錬成できる。
「圧倒的な召喚速度」
「万の知識量」
「そして」
「際限の無い金論術」
「それこそが〝十石〟だよ」
イカルゴが圧倒的な自信の下で笑う。一方、アイズはそんなイカルゴに――……。
「上等だ」
……真っ向から勝負を受ける。
アイズは氷上に右手を添えた。次の瞬間――大量の水蒸気が部屋中を埋め尽くした。
「まずは状態操作」
一面が真っ白になった。
最早、どこに敵がいて、どこに仲間がいるのかさえわからない空間でイカルゴの瞳は――
「来たか」
――弱回転しながら迫る鞘を捉えた。
「遅いね」
しかし、イカルゴは最低限の動作で回避した。
「アイズの言った通りだな」
――イカルゴの真横でカグラが抜刀の構えをしていた。
「カグラ、だと……!」
奇妙な話であった。カグラが鞘を飛ばしたにもかかわらず、それよりも早くカグラがイカルゴの側にいたからだ。
……否、おかしな話ではない。
〝カグラが鞘を飛ばした〟、その一文がイカルゴの勘違いであったからだ。
鞘を飛ばしたのはカグラではなく――アイズであった。
イカルゴに向けて放たれた鞘はカグラが飛ばしたわけではなく、アイズが素手で投げたのだ。
イカルゴは飛来してきたものが鞘であり、尚且つ一度〝龍巻〟を見ていたイカルゴは騙されてしまったのだ。
「予想外な状況に遭遇した人間は一瞬硬直する、てな」
……カグラとイカルゴの視線が交差する。
……カグラが抜刀する。
「一つ言い忘れていたが」
……そして――
「身体能力においても、我々〝十石〟に隙は無いよ」
――イカルゴが紙一重で、カグラの抜刀を屈んで回避した。
「……なっ――ごふッ!」
それだけではなく、イカルゴは正拳突きをカグラの隙だらけな土手っ腹に叩き込んだ。
カグラが吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられた。
「残念だが、君たち二人に勝利はあり得ない」
イカルゴが強がりでも陶酔でもなく、圧倒的な実力の上でそう吐き捨てた。
「生存も、ね」
イカルゴが毒霧の大蛇をカグラに差し向けた。
「へえ、偉い自信だな」
――トンッ……。
……アイズがイカルゴの真後ろに立っていた。
「――」
イカルゴが後退りや振り向くよりも速く――
「終幕だ、イカルゴ=パープル」
――アイズの右手がイカルゴの心臓を貫いた。
「これが、お前が見下した俺たちの底力だよ」
……血飛沫が飛び散った。
鮮血が、アイズの右腕を伝い地面に滴り、染み込んだ。
「……」
確認するまでもなく、アイズが貫いた老人は死んでいた。過去にクロスハート夫妻の亡骸を見たことのあるアイズが間違えることは無いだろう。
水蒸気による視覚封じから始まり、〝風車〟によるフェイント、カグラの不意討ち、そのカグラを囮にしたアイズの不意討ちによってイカルゴを制した。
勝因は自力でも連携でも無く、読み合いであった。
この作戦の胆は水蒸気による視覚封じであった。
部屋中を埋め尽くした水蒸気がイカルゴの視覚を奪い、動きを制限し、思考を惑わした。何より、この濃密な水蒸気はイカルゴとヴァリーを分断した。
イカルゴとヴァリーの能力はアイズとカグラに比べて、強力かつ広範囲であった為、二人は同士討ちを恐れて金論術の行使を躊躇ってしまったのだ。
そのせいでヴァリーとイカルゴは連携を封殺され、アイズは確実に一人ずつ仕留めるようこの作戦を組み立てたのだ。
そして、その結果。アイズとカグラは〝紫石〟のイカルゴ=パープルを討ち取ったのだ。
「……勝った……のか」
今、アイズが心臓を貫いている老人は死んでいる――それは間違いでは無い。
……しかし、それではアイズの胸に引っ掛かっているこの違和感は一体何物であろうか。
嫌な予感がした。そう、アイズの理性や論理とは裏腹に、第六感が激しく主張しているのだ。
……何を?
「……………………生きている」
アイズの第六感は叫んでいた――イカルゴ=パープルが生きている、と。
「御明察」
……声は正面から、足音と共にアイズの下へ届いた。
「……もう一人、だと」
水蒸気が晴れていき、姿を見せた老人にカグラが息を呑んだ。
そう、アイズが殺したイカルゴ=パープルと瓜二つな外形をした老人が二人の前に現れたのだ。
「心外だね、オリジナルは私だよ。そして、そこの死体は――〝模造品〟だ」
『……っ!』
……イカルゴの言葉にアイズとカグラが絶句した。
「聞いたことはないか?」
アイズが恐る恐る〝模造品〟から右手を引き抜き、鮮血が濁流の如く噴き出した。
「一流の金論術師はヒトと瓜二つな人形を生み出すことができる、と」
〝模造品〟が重力に従い、地に落ちる。
「それに一つ忠告しよう」
イカルゴがアイズを指差した。否――
「霧はもう晴れているよ」
――その隣を……。
「みぃーつけた……♪」
……アイズの真隣に立つヴァリーが右手をピストルの形にして、その指先をアイズのこめかみに当てていた。
「……っ!」
アイズが咄嗟に距離を取る。
「……♪」
ヴァリーが狂笑する。
「ヴァ――」
「BANG……♪」
――大爆発がアイズを呑み込んだ。
「アイズッッッ……!」
カグラが叫んだ、がその声は爆風に掻き消されてしまった。
「ぐっ……!」
大爆発に吹き飛ばされたアイズは紫煙を引きながら床を転がった。
全身が焼けるように熱く、鈍器で何度も殴られたような痛みが全身を駆け抜けた。
早く立たなければならない。早く立たなければヴァリーにやられてしまう。だから、だからだからだからだからだからだからだからだから――……!
「……立てよ……ちくしょう」
……それなのに立つことができなかった。
「アイズッ!」
カグラがアイズに駆け寄る。しかし、それよりも早く……。
「 は い 、 終 わ り ♪ 」
……ヴァリーが横たわるアイズに手を差し出していた。
巨大な火炎弾がアイズに放たれる。
カグラが全力で踏み込んだ。
「……カ……グラ」
アイズは依然として動くことができない。
「……さ……よなら……だ」
アイズは死を覚悟した。
「嫌に決まってんだろ、馬鹿野郎……!」
カグラがアイズと火炎弾の間に滑り込み、抱き上げた――直後、
……火炎弾が炸裂した。
爆風によって粉塵が舞い上がる。しかし、やがて粉塵は晴れ……。
「……ほう、庇いましたか」
「やるじゃん……♪」
……血塗れのカグラが姿を見せた。
「……カグラ?」
「……アイズ……無事か?」
カグラが頭から血を流しながらも、アイズの身の安否を確認した。
「何やってんだよ……! 逃げろよ、もう負けたんだ! だから、カグラだけでも逃げろよ……!」
アイズが泣きそうな顔をして、カグラを罵倒した。
「嫌だね」
しかし、カグラはその場から離れようとはしなかった。
「……初めてだったんだ」
「……?」
ヴァリーが先程よりも巨大で、濃密な火炎弾を召喚した。
「お前は初めてできた友達なんだ」
「……っ!」
特大の火炎弾が迫る。
「初めてできた仲間だったんだ」
――火炎弾がカグラに炸裂した。
「カグラッ!」
粉塵が舞い上がり、やがて鎮まる。
……カグラはまだ立っていた。
「…………本当に嬉しかったんだ」
全身が焼けるように熱く、鈍器で殴られたような激痛に晒されてもカグラは笑っていた。
「俺と同じ痛みを知っていて、俺と同じ目標を持ったお前と出会ったとき、俺は初めて一人じゃなくなったんだ」
全身を焦がしながらもカグラは決して倒れることはなかった。
「本当は俺、寂しかったんだ」
……カグラが泣いていた。アイズは初めてカグラの涙を見た。
「親父が死んで、母ちゃんが死んで、師匠も病気で死んじまって、ずっと一人で旅をしていたんだ」
ヴァリーが焔の大剣を召喚した。
「寂しかったし、心細かったんだ」
ヴァリーが焔の大剣を手に、一挙に迫る。
「だからかな、ふと思うんだよ」
カグラはアイズとの今までを思い返した。
「兄弟がいたらこんな感じなのかな、て」
アイズもカグラとの今までを思い返した。
「兄貴って大変だな、て」
……初めて会ったとき、互いが互いを理解できなかった。
「弟って面倒くさいな、て」
……大喧嘩したとき、互いが互いを許せなかった。
「家族っていいもんだなぁ、て」
……それが今ではこんなにも繋がりあっていた。
「だから、アイズ」
カグラがアイズの頭に手を乗せた。
「 俺と出逢ってくれてありがとな 」
「――」
そう言って、カグラは力強く笑った。そして――……。
――焔の大剣がカグラの背中と胸を貫いた。
「――っ!」
……最早、声にすらならなかった。
アイズの頭に乗せていた手が静かに落ちた。
ヴァリーが焔の大剣をカグラから引き抜くも、高熱で焼かれ、そのせい傷口を塞がれたカグラの身体から出血は無かった。
……しかし、胸に空いた巨大な空洞が彼の死を物語っていた。
……死、それはアイズが何度も見た光景だ。
カグラの身体が力無く地に落ちた。その背中には灼熱に焼かれ、焦がされた痕が残っていた。
「――だ」
アイズがカグラの亡骸を前に空虚な声を溢した。
目の前に横たわるカグラの身体はもう二度と動かないだろう。
喋らないし、呼吸もしないし、笑わない。
「――せい……だ」
カグラが死んだ。
クロスハート夫妻も死んだ。
バルトルト=シファーも死んだ。
……何で?
「俺の……せいだ」
アイズが弱いから皆 死 ん だ 。
「悲しまなくていいよ、若き錬金術師くん」
ヴァリーが不愉快な笑みを浮かべて、アイズに右手をかざした。
「すぐにお前もそいつと同じになるから」
「……」
「そうすれば悲しくない……♪」
「……」
今のアイズにはヴァリーの声すら届かなかった。
(……俺が弱いから皆死んだ)
ああ、熱い。脳が、手が、そして〝眼〟が熱くて仕方なかった。
(弱いのは嫌だ)
確かにアイズは強くなった。しかし、それでも化け物ように強い〝十石〟には遠く及ばなかった。
(強くなりたい)
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと――……。
「……〝十石〟が化け物みたいに強いのなら」
「3」
「……俺が変わればいい」
「2」
「俺が――……」
「1」
特大の火炎弾がアイズ目掛けて放たれ、そして――。
「 さ よ う な ら ♪ 」
バ ケ モ ノ に
な れ ば い い 。
……アイズを呑み込んだ。




