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第四十九話 妹達を狙う者に 制裁を


「どうした、私に用があるのだろう」


 現場に急行するため、お兄様はいつもの強固な鎧姿ではなくシンプルな服装をしている。

 美しい金髪とハンサムフェイスが惜しげもなく晒されていた。


 だが背には大剣が抜き身で装着され、戦闘準備万端だ。


「ゼナさん、誘拐犯はこの人じゃなくてそっちなんすよ」


 星の光を浴びた雄々しい姿はまるでおとぎの国の王子様のようだ。

 見惚れている間にグルダさんが惨殺されるのは困るので、とりあえずフォローは入れておく。


「そうですか」


 お兄様は隅に転がっていた真犯人のオッサンに視線を移した。


 あの騒ぎの中で鳥に突き回されなかったとは悪運が強い。

 リコちゃんの魔法で頭を強打されたものの、意識が無いだけで死んではいない。


「ではまずはこちらから片付けましょう」


 ざんねん!! ゆうかいはんの うんめいは ここで おわってしまった!!


 剣を抜く親衛隊長の目は本気だ。

 慈悲なんてこれっぽっちも無い態度に、盗賊男はギョッと目を剥いた。 


 お兄様の口ぶりでは次はお前の番だと言っているようなもの。


「待って兄様」


 犯罪者を速やかに始末しようとする美形剣士を巫女ちゃんが止めた。


 いくら誘拐犯でもいきなり殺すのはマズいもんな。


「この男、誰かに頼まれて兄様を狙ってた。計画が失敗したら殺されるって」


「計画?」


 首の所でピタリと止められる剣先。一秒でも遅かったら血の惨劇が開始されていた。

 仕事の早いお兄様にグルダさんの顔色が悪くなる。


「処刑するのは首謀者を暴いてからの方がいいと思うの」


 処刑には反対しないんだねリコちゃん。薄々分かってたけど。


「確かに、巫女ならともかくなぜ私を狙ったのか」


 お兄様はしばらく思案すると一旦剣を納めた。


「明日、城で尋問出来るよう王に許可を取る。拘束して連行しよう」


「はい」


 小さな巫女さんが小屋の残骸から縄を持ち出して再び商人を拘束する。


 鳥に食われて死ぬか、騎士に首をはねられて即死か、拷問で地獄を味わうか。

 どれかを選択しろ言われたら俺はお兄様を選びたい。



「さて」


「!!」


 誘拐犯をリコっちに任せ、振り向いたお兄様に盗賊はビクリと肩を揺らした。

 狩りで慣れているんだろう。巫女ちゃんはテキパキと男を縛り上げていく。


 一方お兄様に睨まれたグルダさんは冷や汗を流している。


「お前の話を聞こう」


 親衛隊長の妹想いレベルを計り違えた盗賊男は、ようやく事の重大さに気付いたようだった。

 今の状況で下手な事を言えば間違いなく殺される。


「い、言っとくが俺はそいつを助けたんだからな!」


 グルダさんは感謝はされても責められる筋合いは無いと主張する。


 もうこれ交渉ってよりお兄様に殺されないための弁明になってるぞ。


「そうか」


 クリノちゃんを指差す盗賊に金髪剣士は眉一つ動かさない。

 って、お姉ちゃん草むらの中に押し込まれたままだったわ。虫に食われる前に出してやらないと。


「もう少し反応しろよ!命の恩人だろうが!」


 とっておきの交渉材料をアッサリ流され、叫びを上げた男にも親衛隊長は動じない。


「それでお前は私に何の用だ」


「うっ」


 容赦なく追い詰めてくるお兄様にタトゥー男は黙り込む。

 こっち見られても困るから。クリノちゃんを引っ張り出すのに忙しいんで。


「おいお前!そいつを起こせ」


 盗賊はお姉ちゃんの服から葉っぱや土を落としている俺に、証人を起こすよう要求した。


「必要ありません」


 しかし親衛隊長は奴の要望をバッサリ切り捨てた。


「タロー様は二人を連れて先にお戻り下さい。後は私が引き受けます」


 うわーい、お兄様こいつを始末する気満々だぁ。そりゃ罪人だもんね。

 大事な妹にこれ以上関わらせたくないだろうし、治安を維持するためには一番手っ取り早いよな。


「ちょっと待て!!せめてそいつを置いていけ!」


 生命の危機を感じたグルダさんはこちらを引き留めようと必死だ。

 唯一の味方を連れて行かれたらジ・エンド。素直に送り届けていたらこんな事態にはならなかったろうに。


 自業自得とはいえ、ちょっと気の毒に思えてきた。一応ミミズ退治に加勢してくれたしな。


「あのー、ゼナさんはその人が生きてたの知ってたんすか?」


「どうしました急に」


「いや、何か気になったもんで」


 グルダさんが言っていた妹達が殺されたって話。あれはきっと昨日今日の出来事ではない。


 お兄様が盗賊の存在を知っていれば真っ先に疑って始末していたはずだ。

 クリノちゃんだってしばらくは警戒して、誘拐犯なんかに騙されなかっただろう。


 何よりリコちゃんの怒りは短期間ではなく、長い間に蓄積されたものが爆発したようだった。


「この男が生きている事は今初めて知りました。三年程前に私が始末しましたものですから」


 どうやら巫女っちの予想は大正解だったみたいだ。


「あの時はよくもやってくれたよなあ」


「王に危害を加えようとする者を排除するのは当然だ」


 グルダさんちょっと黙ってて。せっかく助けようとしてんだから。


「生き返らせる魔法って他に使える人とかいるんすか?」


「いいえ、命の魔法を使えるのはクリノの呼び出した勇者様だけです」


 よし、ちょっとだけ希望が見えてきたぞ。


 俺はグルダさん生存ルート確保のため、当人に話を振った。


「じゃあグルダさんはその勇者様と面識があるんすよね」


「まあな」


「今どこにいるんすか?」


「んなもん俺が知りてえよ!勝手にいなくなりやがって」


 処刑イベント回避の方法を思いついた俺は、すかさずお兄様に向き直った。


「って事で、それが相談の内容らしいっす」



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