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第三十九話 買いたい物買ったもん勝ち


「わー!タローちゃんかっこいいー!」


「まあな」


「さすがタローさん」


 後輩共よ、存分に褒め称えるがいい。


 一撃で超強い巨大魚を排除した俺に、巫女ちゃん達は驚きの表情を隠せない。

 余裕の態度で成り行きを眺めていたジジイもパイプを落として驚いている。ざまあみろ。


 これこそがSUMOUの真の力。日本人の血と魂の結晶だ。


「これが、スモウ・ファイトですか」


 お兄様は素直に感心してくれている。

 リコちゃんみたく俺の正体を疑ったりはしていないようだ。


 ってやべっ。そういや本場の相撲を知ってるジジイがいたんだった。


「ほら!邪魔も片付いたんでとっととダンジョンから脱出しないとな、リコちゃん」


「え?あ、うん」


「ささ、レイジさんも。早く戻らないと奥さんが怖いでしょ」


 オシャレジジイが余計な事を喋る前に早く進もうと焚き付ける。

 拾ったパイプを渡して強引に背中を押しながら、俺はチラリとお兄様を見た。


「クリノちゃんも待ってるんでとっとと帰りましょう」


 俺のアイコンタクトが通じなくとも早く帰りたい気持ちはお兄様も同じだろう。


 小さな妹ちゃんをいつまでも危険なダンジョンに置いておけない。

 一人で帰りを待っているお姉ちゃんの事も心配なはずだ。


 妹に甘いお兄ちゃんなら絶対に乗ってくる。


「そうですね、急ぎましょう」


 読み通り美形騎士は俺の意見に賛同し、先を急いだ。

 大好きなお兄様の言う事にリコちゃんはしっかり頷いて後に続く。


「急がないとまたあの魚が追いかけて来るかもしれないよ」


「それ、困る」


「早く帰ってごはん食べるー!」


 イケメンとペコちゃんの協力を得て、ジジイに喋らせる暇を与えぬまま横穴を突破した。

 片方は単に腹が減っていただけかもしれないが。



 木の根のトンネルを抜けた先にあったのは、どこか見覚えのある石畳の部屋。

 祭壇を見たプチりんは不思議そうに首を傾げた。


「あれ?ここって」


「ここは王家のほこら。あなた達を呼び出したのとは別の場所」


 さとピーがウッカリ発言をする前に巫女さんが先手を打った。


「そうだっけ?」


「そうなの」


「そうだぞ」


「そうなんだ」


 俺とリコちんの協力プレーにおとぼけ女子は納得した。馬鹿で助かったぜ。


 地上にあったほこらが地下深くに移動しているのはダンジョンの構造が変わったせいだ。

 ジジイが言っていた準備というのはほこらの事に違いない。


 恐らく仕掛けか何かを動かして再び地上に戻すつもりなんだろう。


「全員入りました。レイジさん、お願いします」


「分かった分かった」


 丁寧な口調で、けれども真顔で急かされた煙ジジイは小さく肩をすくめる。

 それでも他人に迷惑を掛けている自覚はあるらしく、文句を言わず美形男子に従った。


「今から見せる物を誰にも言うんじゃないぞ。いいかな?」


「了解っす」


「分かりました」


 釘を刺された俺とコオリは素直に頷いた。


 ダンジョンの構造を動かす仕掛けなんて反則みたいなもんだ。

 他人に知られたらジジイのお宝探しにも影響が出そうだもんな。


「巫女ちゃんやお嬢ちゃんたちもな」


 口元に手を当ててナイショポーズを取るお茶目ジジイに、巫女ちゃんとエーちゃんもそれぞれ頷く。


「えー、何でー?」


「おいコラ」


 さっきまでの良い子のお返事はどうした。急いでるってのに和を乱す発言をするんじゃねーよ。


「あ、もしかして悪い事すんの?」


 嬉しそうに言うな。ベテランジジイ対して失礼だろうが。俺も人の事言えんけど。


 悪戯大好きさとりちゃんの言葉に巫女っちも疑惑の眼差しを向けた。

 やっぱり顔見知りとはいえ、ちょっと怪しいと思ってたんだな。


「違う違う、カミさんに高い買い物がバレると困るだけさ」


 そう言って懐から取り出したのは年季が入った白金色の指輪。所々汚れや傷があり、お世辞にも綺麗とはいえない。

 宝石があったであろう部分はすっかりすり減ってしまっている。


 はっきり言って汚くてボロっちい指輪だ。


「それも勇者の指輪なんすか」


 随分と年代物だが高値がつくとなると特別な効果があるんだろう。


「まあね、こう見えても結構な掘り出し物だ」


 オネエ賢者の指輪は陶器だって言ってたな。

 確かにこっちの方が勇者の指輪らしいっちゃらしい。


 爺さんが指輪をはめて祭壇に触れると指輪が虹色の光を放つ。途端にほこらが大きく振動し始めた。


「うわっ!?」


「結構揺れるから何かに掴まった方がいいぞ」


 だからそういうのは先に言えっつーの!


 一人だけ祭壇に陣取ったクソジジイは素知らぬ顔だ。

 掴まれって言われてもほこらには祭壇以外に体を支えられそうな物は見当たらない。


 仕方ないので壁画の出っ張り部分に指を引っかけて踏ん張る。


「きゃー、タローちゃーん!」


 当然の如く俺の足に引っ付いたくっつきガール。お前絶対怖がってないだろ。


「凄い速さで上昇してるね」


 なぜかイケメンもピタリとくっついていた。こちらはちょっと遠慮がちに。


 頼られるのは悪くないんだが下手したら色々と誤解されるぞ。

 まあ巫女ちゃんは俺が年上好きだって知ってるんで大丈夫だろうけど。


「しっかり掴まっているんだ」


「はい!」


 そのリコちゃんは地面に剣を突き立てたお兄様にしがみついていた。

 真面目な顔してるけど、絶対内心喜んでる。


 エーちゃんはお兄様と同じように斧を突き立てて自分の体を支えていた。勇まっしー。

 部屋は遊園地のアトラクションばりに揺れ、俺達を上へと運んだ。



 しばらく経つとスピードは緩みほこらは元の場所、地上へと位置を戻した。



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