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第二十一話 育ってきた世界が違うから規格外はショウガナイ


「うん、分かってた。分かってたんだけどな」


 テンションマックスで挑んだ武具選びという名のお着替え。

 しかし先祖代々受け継がれた血はここでも俺の邪魔をするらしい。


 更衣室から出た俺の前で、先に着替え終わったちょこまかガールが笑いを堪えている。


「やっぱこうなるわな」


「タローちゃん、本物のお相撲さんみたい」


 用意された普通の鎧ではサイズが合わず、やむなく兵士用の特注品を持ってきてもらった。

 だがこれは大柄な人向けというよりかは巨漢用だ。


 全身を覆う金属鎧は腹回りが大きく、逆に手足の部分が短すぎて役に立たない。


「関節が全然動かないんすけど」


 鏡には変な土産物の人形みたいになった自分が映っていた。

 この鎧を着た兵士が存在してたのが驚きだわ。 


「パーツだけ組み合わせたり出来ないんすか?」


 ガントレットは長さよりも大きさが足りないので手が入らない。


「拳の部分を外して広げれば何とか入りますかね。代わりにグローブを」


「グローブも入らないっす」


 手首しか守れないなら腕輪と同じだ。まだ鎖を巻いた方がマシかもしれん。


「皮の腰巻きでしたら大きいサイズもありますよ」


「肩当てをベルトで留めてみるのはどうでしょう」


「兜をお持ちしました」


 差し出された物を身に着けて再び鏡の前に立つ。


「いかがですか?」


 露出した上半身にベルトで留めた肩当てと皮の腰巻き。


 アハハハハ、これ勇者っつーか剣闘士だわ。


「すんません、試行錯誤してくれて悪いんすけどパスで」


 西洋騎士風の鎧を着たいという男の夢は脆くも崩れ去った。



 結局俺は丈夫な上着に革鎧のみというスタイルに落ち着いた。

 サイドのベルトで調節できるのは便利なんだが、胸部分までしか覆えない。しかも絶妙にダサい。


 意図せず思いっきり初心者っぽい格好になってしまった俺は軽く落ち込んだ。


「よくお似合いですよ」


「どーも」


 再三更衣室から出た俺を係の兵士さんがにこやかに迎えた。

 これだけやってもらって文句なんぞ言えるはずもない。


「タローちゃん、さっきよりずっとカッコイイよ」


「へいへいありがと、っ!?」


 俺が絶句したのは無論お子様勇者モドキに対してではない。


「どうしたの?タローさん」


 白い上着に革鎧、俺とほぼ同じ構成なのに貴族みたいな格好になってるイケメンがいた。


 何だそのお上品なのは。俺なんて野盗崩れにしか見えんというのに。

 マント?ヒラヒラのマントまで付いてんぞこれ!


「重い鎧は無理だって言ったら見立ててくれて」


 輝く天然エフェクトがイケメン勇者のイケメン具合をこれでもかと高めている。

 誰だよ!男のロマンあふれるダンジョンにこんな王子様を持ち込みやがったのは。


「巫女さんが」


「ホワッツ!?」


 な、なんてこったい。

 真面目なリコちゃんまでもがイケメンの色香に惑わされてしまったというのか。


「変な声出さないでよ」


 俺の奇声にも動じず、巫女様は淡々と説明を述べた。


「タローと違って二人は探索も戦闘も初めてでしょ。結構歩くから疲れにくい軽い素材を優先したの」


「あたしはタローちゃんみたいに鎧とか着けてみたかったんだけどなー」


 不満を漏らすミニゴンは手足に皮のサポーターがあるだけで、格好自体は変わっていない。

 雪国ブーツがベルト付きの丈夫な靴になっている。


「サトリは足が速いから走りやすい靴と動きやすい格好ね」


 靴の底には金属が埋め込まれているのかカツカツ音がする。


「その靴ならうっかり棘を踏んでも大丈夫だし、迷子の予防になるでしょ」


「迷子になったりしないもん。ずーっとタローちゃんと一緒なんだから」


 いいや、コイツは昔っから好き勝手に歩き回る奴だ。

 俺やコオリがいなかったら召喚された時点でこの国を飛び出していただろう。


 この短期間でリコっちはヤツの性格をかなり正確に把握していた。


「コオリはあまり前に出ないから少し派手にしてみたの。気を取られた魔物をタローが攻撃出来るように」


 確かにこんなのが道を歩いてたら嫌でも目に入る。

 人間の女子だけでなく、魔物のメスも引き寄せられてしまいそうだ。


「戦闘はタローがメインだろうから武器の選別まではしてないけど」


「まあ、別にいらないよね」


「タローちゃんが守ってくれるもんねー」


 おみそれしました巫女様。そして大変失礼しました。


 そばかす少女の冷静な分析に、イケメン好きを疑ってしまった自分が恥ずかしい。

 てっきりリコちゃんの趣味で飾り立てたもんだと思い込んでいた。


「ありがとうリコちゃん」


 巫女ちゃんは本気だ。否が応でも働きに応えなければならない。


 勇者として!


「すぐにゼナさんとお爺さんを見つけて戻って来るぜ」


 親指を立てた俺にリコちゃんは真剣な眼差しを向けた。


「絶対無事に戻って来るって約束して」


 彼女の目は使命に燃える高尚な巫女の瞳ではなく、純粋に俺達を心配する少女の眼差しだった。

 いつも強気なリコちゃんも小さな女の子だ。


「当ったり前じゃんか」


 とびきりの笑顔を向けた俺に巫女ちんはスッと視線をずらした。


「タローに言ったんじゃないから。心配してるのはサトリとコオリ」


「何で!?」


 俺にだけツンデレ発動かよ!いや、全然嬉しくないからそういうの!


「お前、強そう。巫女、大丈夫思った」


「へ?」


 カタコトのフォローに振り向くと、壁際に見慣れぬ人物が立っていた。


 ボサボサの髪に大きなリボン。ツナギの半ズボンにシマシマハイソックス。

 何より目立つのは手に持った大きな斧。


「この子は護衛を担当する予定だった戦士のエー。彼女と一緒に行ってきて」


 妙な風貌の女の子を我らが巫女さんが紹介する。


「って、何で嫌そうな顔なの?」


「イイエ別に」



 斧使いの戦士をメンバーに加え、俺達はほこらのダンジョンへ突入した。



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