第百十話 中華料理ならもう一度食べたい いっぱい食べて大きくなれる
「まずは入手経路をつきとめるのが先決って事っすね」
「だったらわたあめ女拷問して吐かせちゃえばいーじゃん」
「お前なぁ」
タローちゃん呆れてるけどあたし全然変な事言ってないよ。
わたあめ女みたいなのだったら、ちょびっと痛めつけてやればすぐに話すんじゃない。
ウソつきの悪者なんて兄ちゃんも遠慮しないでやっちゃいなって。
「ちょっとだけ待ってもらっていいっすか」
今度はソファーから壁際の方に連れてかれちゃった。
あ、これって告白じゃなくてまた内緒話だ。タローちゃん壁ドン出来ないからね。
だって背高過ぎて、あたしに壁ドンしたら反省のポーズになっちゃうもん。
「拷問なんてしたら俺の正体速攻でバラされるに決まってんだろ」
「バラされる前に殺しちゃえば?」
「アホか!んな猟奇殺人犯みたいな勇者がどこにいんだよ」
コソコソ話してるあたし達をチビ巫女の兄ちゃんは黙って見てる。
兄ちゃんは妖怪の事どう思ってるんだろ。大臣のオッサンみたいに怪しいって疑ってるのかな。
本音聞けば一発なのに。タローちゃんが妖怪だったらどーするって。
コオリがいれば聞いた後で忘れさせちゃうんだけどなー。
「とにかくお前は大人しくしてろ。これ以上余計な話はすんな」
「はーい」
退治するーって襲ってくるかもしれないからやめとこっと。
あーあ、こんなめんどくさくなるんだったら、わたあめ女に手加減しなきゃよかった。
今からでもやっちゃう?消し炭になったらもう喋れないよね。
「行動も起こすなよ」
「やだなータローちゃん。するワケないじゃーん」
さすがタローちゃん。あたしの考えみーんなお見通し。
さっきみたいにそーっと抜け出してコオリに協力してもらおうと思ったのに。
「でも邪魔な奴がいたらすぐ教えてね」
「言うかボケ!」
タローちゃんを困らせる奴だったらコオリも喜んで手伝ってくれるよ。
「いやー、スンマセン。こいつ腹減ってイライラしてたんすよ」
むー、あたしそんなに食いしん坊じゃないよ。
「これは申し訳ありません。すぐに何か用意しましょう」
「いいっすいいっす!俺ら今日は外で食べるつもりだったんで」
お城の料理よりあそこの中華料理の方がおいしそう。
ここだとマナーとかうるさそうだし、どうせお菓子みたいにお上品な味なんでしょ。
あたし食事中に注意されるの大っ嫌い。ご飯おいしくなくなっちゃうもん。
「では私もご一緒してよろしいでしょうか」
えっ?兄ちゃんもお腹減ってたの?
「先程のお詫びも兼ねて食事代はこちらで負担しましょう」
「やった!じゃあレイ何とかの中華料理食べよっ。ねー、タローちゃん」
わーい、タダ飯タダ飯。
タローちゃんも変な顔してないで喜ぼうよ。せっかく兄ちゃんが奢ってくれるんだからさ。
「いや、ホント迷惑なんで」
「是非お願いします」
「ハイ」
んふふー、おいしいごはんごはーん。
「お待ちアル。チューカソバとチャーハン、ギョーザ。それぞれ一人前ずつね」
「いっただっきまーす!」
すっごくお腹空いてるから一番早く出てくるの選んじゃった。
お馴染みの料理だけど見た目は結構違うね。
シンプルなメニューが一番店のレベルが分かるってうちのジーちゃんが言ってた。
「んー、やっぱりおいしーい!」
熱々ツルツルの黄色い麺がちゅるるーんって口の中に入ってくる。
もうどんどん食べれちゃう。チャーシューも油が乗っててすっごく合うよ。
スープは透明だけど、ちゃんとダシの味がする。アッサリ系だね。
エビチャーハンはお米じゃなくてツブアワってのを使ってるんだって。
「えっ!これ虫なんすか!?」
「カタガニアル。この辺りじゃ普通に食べるよ」
へー、プリプリしてるから普通にエビだと思ってた。別にエビだって虫みたいじゃん。
おいしいならどっちでもいいよ。タローちゃんいらないならちょーだい。
「・・・うまいっすね」
食べるんだ。虫は嫌だって顔してたのに。言われてみればカニとエビの中間みたいな味がする。
「餃子の中身は愛以外何が入っているんですか」
「サユキへの情熱アル」
「愛と情熱以外には」
「ハムルのミンチと刻んだ緑玉、あと足竹ね」
そうそう、外で待ってたコオリと合流したんだった。
待ってる間町の方でブラブラしてたみたいなんだけど、簡単に見つかったよ。
コオリが一人だとすぐに女の子が寄って来るからね。
広場で握手会みたいにズラッと並んでたのは兄ちゃんもちょっと驚いてた。
「サユキになら秘伝のタレの作り方を教えてもいいアルよ」
「遠慮します」
あんなに店員にしつこくされてコオリは嫌じゃないのかな。
嫌じゃないなら結婚しちゃったら?結婚したら毎日中華料理食べ放題だよ。
迷惑だったら好きなフリして秘伝のタレとか料理の作り方聞いちゃえ。
そしたらコオリがあたし達の専属料理人になって、毎日おいしい料理食べれるじゃん。
「おかわり欲しかったらすぐ呼ぶね」
一通りベタベタしたら厨房の方に戻ってった。意外と仕事はちゃんとするよね。
うんうん、餃子もおいしいよ。
皮がピンクなの以外は普通の餃子だね。今度は焼いてるのも食べたいな。
「タロー様」
「はいっ!?」
兄ちゃんはとっくに食べ終わってる。もうちょっと味わって食べようよ。
ちなみにあたしはおかわりしたからラーメンは二杯目ね。
呼ばれたタローちゃんは変な声出して兄ちゃんの方見てる。
「食事の後で構わないのですが、少々お時間を頂けますか」
なーんだ、ビクビクしなくても大丈夫だよタローちゃん。
きっとまた町とか案内してくれるんでしょ。
「一つ頼みたい事があります」
断ったらどーなるんだろ。




