表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
究極の管理社会  作者: 舎模字
第6章
95/102

決戦 #11

 万魔殿(パンデモニウム)中腹、大広間。


 ヒサトとセツナは、床に腰を降ろし、休憩していた。

 セツナが問いかけ、ヒサトが応える。


「ねえ……。私たち、こんなにゆっくりしていていいのかな」

「んー……。大丈夫じゃねーの」


 万魔殿(パンデモニウム)の半透明の壁面や柱群が、どこからともなく届く光を屈折、減衰、乱反射させる。

 半透明のオブジェクトは、ゆるやかな色相(スペクトラム)のグラデーションを帯び、静謐の美を醸し出す。


「これまでくたくたになるようなことばっかりだったんだし。これくらいは(ばち)あたんないと思うよ」


 そう言うのはヒサトだ。セツナは。


「そっか……」


 といいながら、同じく壁際で腰を降ろすヒサトに、その身を少しばかり近づける。




 そのヒサトの元に、通信が入る。

 内容は指令に関するものだった。

 ヒサトは腰を上げ。伸びをしながらセツナに言う。


「さってと……。情報室の怖いお嬢さんが腹立ててるみたいだし……」


 セツナは座したままヒサトを見上げる。ヒサトは続けた。


「それじゃあ、いっちょう。ラスボス倒して、世界に平和を取り戻しますか」


 ヒサトはにこやかな表情でセツナに手を差し伸べる。

 セツナはその手を取り、微笑みながら返事した。


「うん……!」




 ヒサトとセツナが向かった先、万魔殿(パンデモニウム)最下層。

 そこには、うず高い暗褐色のオブジェクト、制御システムだろう、が()ったが。

 その前に立ち、ふたりを待っていたのは、ひとりの少年だった。


 真っ白な頭髪に、同じく真っ白な肌。

 黒の礼服、白地のシャツ、ネクタイは白黒のチェック柄。

 その瞳は『黒』だが。

 白目と黒目が逆転している。


 セツナはつぶやく。


「シェルジュ……」


 どことなく(おじ)けた様子だ。

 だがヒサトがセツナに微笑みかけると、セツナの不安の色は薄くなる。


 その少年、シェルジュは言った。


「どうしましたセツナさま? こんなところにおいでになって」

「…………」

「おや? どこからいらしたのか、連れの方も一緒なのですね……。ひょっとして以前の話にあった『お仲間』なのでしょうか?」

「そう……。この方が私の仲間です……」

「ふーん……」


 白黒の少年、シェルジュは、ヒサトの全身を舐めるように眺めたあと、言う。


「ですが……。残念ながらその方はニセモノ。胡蝶の夢(まぼろし)かもしれませんよ……?」

「……っ! もう、だまされない!」


 セツナが気を荒くしてそう言うのを見て。

 少年、シェルジュは、ニヤニヤと。そして楽しそうにゲラゲラと笑い出した。


 ヒサトが口をはさむ。


「さて……。お子様の口上はそれで終わりかな? お兄さん君の、その後ろのモノに用があるんだ。どいてくれるかな?」

「ゲラゲラゲラゲラゲラ! ……ああ、お兄さん。たぶんヒサトって名前のヒトかな?」

「ああ、そうだが」

「ふーん……。今日びの勇者さまは、ずいぶん(ゆる)いんだね……」

「そんな大層なモンじゃないよ。君の後ろにあるモノを壊しに来ただけさ」

「フフ……。そんなことさせると……思う……?」


 空気が変わる。

 それは以前にも感じたことのある。圧倒的な脅威を前にして、肌の粟立(あわだ)つような感覚。

 ラプラスの魔眷属(デーモンビーイング)、その『顕現』だ。


 シェルジュは(あらわ)れた『それ』を背負いながら、床上数十センチほど浮き上がる。

 『それ』とは。

 背中に広がる、『純白に輝く12枚の(はね)』だった。


 すかさず堀ちーより、ヒサトに通信が入る。


『ヒサト!!! 目の前にいるのは『始まりの魔』。トリプルS級の魔眷属、創造者(イニシエーター)よ!!!』




 ヒサトとセツナ。

 いまふたりは、万魔殿(パンデモニウム)の最下層、制御室にて。

 床に伏していた。


 その(カタキ)である、シェルジュには。

 雷鳴軌動ライトニング・マニューバも、双・雷鳴軌動デュアル・ライトニング・マニューバも効かない。

 12枚の純白の(はね)による、絶対の結界。

 かつ、(あま)す翅は、ヒサトとセツナを射止めようと、容赦なく追尾し飛来する。


 ヒサトとセツナは一方的に傷つき、倒れることとなった。




 そして。


「コンティニュー、しますか……?」


 倒れるヒサトに、呼びかける声。

 いまヒサトは満身創痍の状態だったが、その声に応じて『意識のなかで起き上がる』。

 ヒサトは()く。


「きみは?」


 その声の主の姿は見えない。

 ただ、その透き通るような声は、(たと)えるなら『天使』のもののように聴こえた。


「残念ながら、私は『天使』じゃありません……」

「そう……?」

「ついでに言うと、さっき言った『コンティニュー』の話も冗談です」

「冗談……なのかよ……。それキツイな……はは……」

「でも私は、ずっと前からヒサトさんのことを見ていましたよ?」

「きみ……、誰なの……?」

「申し遅れました。私は」


 声の主はそこで一拍空けたあとで、言った。


「私はAI(アイ)。あなたの戦闘支援AI(アイ)です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ