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究極の管理社会  作者: 舎模字
第4章
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soiled instinct

 ――なんとかアルクメネの方は落ち着きそうね。


 メリッサは自室にて、報告内容を取りまとめながら考える。


 ――でも、まだ油断はできない。ヘカーテとの交渉がこじれる可能性もあるし、それに……。


 メリッサはその眉目を険しくする。


 ――アルクメネの行動履歴には、墓場(グレイブ)との接続(コンタクト)が記録されていた。


 その履歴が記されたのは、テロ事件の起きる3日前。

 丁度、メリッサがアルクメネの相談を受け、一緒にお茶をしていたあの日の夜に、その記録はなされていた。


 ――保育官(メンター)に施された、後天性本能ポストインスティンクト呪詛(じゅそ)か……、忌々しい。


 後天性本能ポストインスティンクト

 それは、保育官(メンター)育成プログラムにて候補生に施される、条件付けだ。

 いや。

 それを表現するにあたって、『施される』や『条件付け』といった言葉を使うのは生易しいと言うものだろう。

 後天性本能ポストインスティンクトとは、『人体改造』によってもたらされるもの、それは幼少期において、通過儀礼(イニシエーション)改造手術(サージェリー)によって実現されるものなのだ。


 その忌まわしい儀式にて付与される幾つかの後天性本能ポストインスティンクトのなかの、忌々しい形質のひとつ。

 墓場帰趨(グレイブきすう)行動。

 3日前にアルクメネが遭遇した不可思議な出来事、『墓場(グレイブ)との接続(コンタクト)』は、その後天性本能ポストインスティンクトに由来するものだった。


 墓場帰趨(グレイブきすう)行動、それは。

 反社会的な思考に及ぼうとしたとき、危急的な絶望に(さいな)まれたとき。

 そうした場合において発動する、刷り込みである。


 行く先は、墓場(グレイブ)……。


 つまりそれは、『社会に貢献できる見込みが無くなった保育官(メンター)』が『自らを破棄する』よう仕向ける強制行動(プログラム)であり、アルクメネは危うくその廃棄手順(シーケンス)を辿ろうとしたのである。


 ――本当に、許せない……。でも今は……。


 メリッサは下唇を噛み、『現実的な対処を』と自らに言い聞かせながら、報告内容を取りまとめつつ、今後の段取りに思案を巡らすのだった。

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