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本物の密猟者との遭遇

 階下へ降りると食堂で未だに珈琲を飲みながら新聞を広げていた宿の主人から

「あの姉ちゃんすげぇ勢いで外へ出てったがお前なんかしちまったのか? 駄目だぜ、女ってやつにゃ優しくしねぇと」

と未だ勘違いしっぱなしの発言を投げかけられたが、それを無視し、出かけてきます! と声をかけ俺も急いで外へと出た。


 密猟か、と言っていたということは行先はあの森で間違いないだろうとまっすぐに森へと向かう。


 しかし、俺も結構必死に走っているのに何故か彼女の後姿は全然見えてこない。

 ジェシカさんの姿を見ることのないまま、ついに村の門まで来てしまった。

 村からは一直線に森までの道が続いている。一度足を止め、道の先に目を向けるともう森のすぐそばのところを走るジェシカさんらしき後姿が見えた。



 森までは1kmくらいとそれほど遠くはないけど、いくらなんでもあの人、足、速過ぎるだろ・・・

 俺も装備があって走りづらいのはあるとはいえ、普通の人よりも足が速い自信があったのになぁ。


 全然追いつけていなかった自分を少々情けなく思いつつ、乱れた息を整えるため深呼吸を一度して、彼女の後を追い再び走り始めた。




 俺が森の前までたどり着く頃には、当然だがジェシカさんはとっくに森の中へと消えてしまっていた。


 あの人は多分強いんだろうけど、大量にあったという看板を撤去してしまえるあたり、相手が複数である可能性は高い。いくら強いといったって1対多数では分が悪いはずだ。急いで探さないといけない。


 人の気配や音を聞き逃さないよう森の中を通る国道を辺りを見渡しつつ走っていると、森の奥の方から昨日俺が聞いたのと同じ怒声が聞こえてきた。


 それほど狭い森でもないんだが、ジェシカさんはもう密猟者達を見つけたらしい。


 急いで道から外れ、声のした方へと進んでいくと、広さで言うと大体10mほどの円系に開けた場所に出た。

 その円の中に10人ほどの人がまばらに立っている。

 その真ん中には足元に転がる男を踏んづけながら、少し困ったような顔をして腕を組み立つジェシカさん。それを取り囲むように9人の柄の悪そうな男たちがジェシカさんに対しそれぞれに武器を構えつつ間合いを取り立っていた。

 地面には10数匹のウサギのような角の生えた生物がすでに息絶え転がっている。

 どうやらこいつらが密猟者で間違いなさそうだ。


「ジェシカさん!」


 俺は声をかけつつ素早く男たちの間を抜け、ジェシカさんの後ろに背中合わせになるように立ち、剣を構えた。


 俺が剣を構えるやいなや、

「アイン君!? 君、なんでついてきちゃったの!?」

とジェシカさんは驚いた様子で言ってくる。


「これ、忘れてましたから。ないと困るんじゃないんですか?」

 俺は手に握っていたパスケースを辺りを警戒しつつジェシカさんに渡した。

ジェシカさんは俺の手からそれを受け取ると

「ごめん。ありがとう。」

と俺にだけ聞こえるくらい小さな声で言った。

 そして、密猟者達に対し俺に見せたときと同じようにパスケースを突き出し、今度はその場にいる全員に聞こえるような大きな声で、


「さぁ、これでどう? これが私の公務員証だ! さっきも言った通り、絶滅危惧モンスター保護管理課に与えられた権限により、お前達を絶滅危惧モンスター保護法違反の罪で逮捕、連行する! 今すぐ武器を捨て、大人しくお縄につきなさい! そうすれば手荒な真似はしないでやる!!」

足元でのびている男を改めて踏んづけ直すという説得力のない動作をしつつ、そう言い放った。


 それまで大人しく事の成り行きを見守っていた密猟者の中の一人、鎧の上からでも分かるくらいのムキムキマッチョなボディーを持つスキンヘッドの男は呆れたような顔をして笑いつつ言う。


「おいおいねーちゃん。わざわざそのガキに身分証持ってきてもらって助っ人に入ってもらったとこでわりぃが、あんたに俺らを逮捕する権限があろうがなかろうが、こっちはまだ九人もいるんだぜ? 大人しく捕まってやるわけねぇだろうが」


 実に悪人らしい発言だな、と感心していると、後ろにいるジェシカさんも「やっぱ権力だけで大人しくはしてくれないかぁ。ちぇっ」と軽い感じで言い、出かける際に持ってきたであろう腰に差した細身の剣の柄を握り抜刀の構えを取っていた。

 目の前の男たちに再び注意を戻すと、全員今にも飛びかからんとばかりの体制でこちらを見てきている。

 まずい、どうやら全員で一斉に襲い掛かって一気に片を付けるつもりのようだ。

 正直、複数の人間を相手にするときに一番困るのは一斉に仕掛けてこられることだ。

 一応ジェシカさんと俺は背中合わせで立っているので背後からやられることはないものの、それでも厳しいものがあるし、一人でも自分より格上だった場合にはどうしようもない。


「やっちまえぃ!!!!!」


 スキンヘッドの男のかけ声と同時に目の前の男たちが一斉に向かってくる。


 シュンッ ガキンっ!!!


 目の前の一番近いところにいた剣士が放ってきた重たい斬撃を俺はなんとか剣で受け流す。力の入った一撃は受け流された場合、隙が出来ること多いが、この男には隙がなかった。流された剣を振りぬかずさっと止め、そのまま戻して次の剣戟を放ってくる。それも何とか受けとめ鍔迫り合いへと持っていく。


 完全にパワーも剣の腕も相手の方が高い。


 一体どうすればやられずに済むのか?

 あまりの実力の違いに一瞬死が頭をよぎったその時、視界の左端にレイピアを持った男が低い体勢で一直線に俺の左わき腹めがけ突っ込んでくるのが見えた。目の前の1人に集中しすぎてこれは1対1の戦いではないことを俺は忘れていた。


・・・やばい。避けられない。死ぬ!!


 そう思い俺は咄嗟に目を瞑った。


 次の瞬間、俺のわき腹を形容し難いほどの鋭い痛みと、肉を裂きレイピアが体の奥へと入っていく感覚が俺を襲って




・・・くることはなかった。


 それどころか剣に対してかかっていた強い圧力も突然なくなり、力をかける場所をなくした俺の剣は空を切りそのまま地面にザックリと音を立てて突き刺さる。


 目を開けると俺に襲いかかってきたはずの2人の男たちは倒れ、少し離れたところで隙を伺い俺を射抜こうとしていたであろう弓矢を構えた男と、そしてさらにその後ろの魔術師然とした男がバタバタと倒れていくのが見えた。


「あれ? どうして???」

疑問を口にした俺に対し、後ろにいたジェシカさんから


「やっぱあんま強くないってか弱いんだねぇ、アイン君。己の分を弁えず無茶する男は長生きしないもんだよ?」

とゆるい言葉がかけられる。


 見渡すと膝を震わせながら呆然と立っているスキンヘッドの男以外全員地面に倒れこんでいた。時折、ピクピクと体が動いているのを見るにどうやら全員死んではいないらしい。


 一体何が起こったのか。奇跡でも起こったのか。


 その様子を目撃していたであろうスキンヘッドの男も何が何だか分からないといった顔をして口をパクパクとさせている。


 状況が呑み込めないが俺はとりあえずジェシカさんの左隣に移動し、唯一残っている男の方へと剣を構えた。


「さ、大人しく捕まっとこうよ? ね。あんたも痛いのは嫌いでしょ?」

ジェシカさんは言葉こそゆるくやさしめだが有無を言わせないような静かな迫力をもって、もう一度投降を促した。


しかし、



「そ、そんあ、わけに行くか! この、化け物ぉ!!!」

 男は腰のホルスターから拳銃を引き抜き、それをジェシカさんに向けると間髪入れずに引き金を引いた。


パァンっ!


 銃声が森に響き渡る。撃った衝撃を抑えきれなかったのか男が後ろに吹っ飛ぶ。

 瞬間、森を静寂が包み込んだ。

「ジェシカさん!?」

俺は撃たれたであろうジェシカさんに慌てて視線を向ける。


 弾はジェシカさんに当たることはなかったようで、いつその姿勢をとったのかは分からないが彼女は剣を横に薙いだ後のような体勢で立っていた。


 ジェシカさんの無事を確認して安堵した俺はすぐさま、次弾を警戒しつつ吹っ飛んだまま起き上がらない男に対して駆け寄った。


 銃弾は剣で弾くなんて人間離れした芸当が出来るものでは勿論ないし、そもそも警戒していたところで避けられるものでもないのでドキドキものだが、だからこそ相手が持ち直す前に銃を押さえないといけない。


 幸い次弾が来ることもなく俺は男の手に握られたままの銃の銃身を踏みつけ、顔を覗き込む。

 男は何故か完全に伸びてしまっていた。



 こうして、何が起こったのかは皆目見当がつかないが、ほんのわずかな時間で密猟者との戦いは終わってしまった。


バトル描写ってなんだよ、素人にんなもんかけっかよ!あーもうだりだりぃ無理だ!


となった結果がこれだよ!!。。。ってわけではないんです。ホントです。

ひとまず話に区切りがつきそうなので次回までを第一話って形でまとめようかなと考え中です。

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