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アインの不安

コロナ禍でごちゃごちゃした昨今、皆さまいかがお過ごしでしたでしょうか?

すみません。ひっそりと復活してみました。


 半径百mはあるであろう円形の闘技場。その周りをぐるりと取り囲む客席の真下にある選手控え室。

 闘技場に入った俺はティアやジェシカさん達と別れ、係員に案内されここに来た。

 係員が言うには目の前の階段を上がれば闘技場に出られると言う。

 試験開始は十分後。それまで道具の手入れと心の準備をするようにと伝えられ俺は部屋に一人になった。


 以前ジェシカさんに貰った細身の片手剣、重量はあるもののそこそこの防御力を持つ着なれた金属製の鎧一式、そして、昨日ガトに貰った三つの魔法石と先程支給された三本の回復薬。


 これが今の俺の全装備だ。


 この試験を乗り切るのに他に何がいるかと言われれば、これ以上の装備はない。と思う。


 装備の準備は万端だ。


 

 後は、これまでの修行で磨きあげた技術がどこまで通用するのか。

 

 先程の試験の出来もあって言い様のない不安が頭によぎる……


 ジェシカさんですら勝てなかったというアルフォンスさんに修行の成果をぶつけてもまるでなにもさせてもらえずに終わってしまったら?


 そもそもそこにたどり着く前に不合格とされてしまったら?


 いや、それどころか最初の相手にすらまるで太刀打ち出来なかったら……?


 シンっと静まり返った無機質な控え室に一人でいるせいだろうか?

 不安ばかりがしんしんと雪のように降り積もっていく。


 闘いを前にして心の熱がじわじわとしかし急速にそれに奪われてしまっている、そんなイメージが浮かんだ。


 闘いの前にこんな気持ちになったことは今までなかった。

 初めてモンスターを狩りに出掛けた日も、ジェシカさんと共に密猟者に対峙したときも、あのモノアイタイタンとの死闘のときですらこんな不安に押し潰されるようなことなんて無かったのに。


 心が滾るような熱が欲しい。そう思ったとき浮かんだのはつい先程出会ったメガネをかけた魔法士、ベルベットさんだった。


 ベルベットさんのように熱くなれる目標、それはなんだろう。

 彼女の目標は国家魔法士になり魔法庁に勤めることだっただろうか?

 ......違う、彼女はラヴィニアさんよりも上に立ち家名を守ること、もっと先を見ていた。



 俺の目標……それって国家公務員になることだったっけ?



 いや、違う。俺の目標は……





 普段は何万という観客を収容し空をも焦がさんばかりの熱気に包まれているはずであろう闘技場。

 そこには闘技場に内に立つ俺、客席に座る三人の審査員、応援にきてくれたジェシカさん達四課のメンバー、そして、アルフォンスさんの闘いを見に来たというロバート王子とそのお付きが十人ほど。

 たったのそれだけの僅な人数がこの広大な空間を占拠していた。


「アイン・ノールズ! 準備はよろしいな? それではこれより、実技試験を執り行う!!」

 俺の首肯を確認した試験官の声と共に俺が出てきたのと反対側にある鉄格子のゲートがゆっくりと地に下がり、開いていった。

 そして、奥から人型の、しかし、人とは明らかに違う蛇のような皮膚と尻尾を持つ剣士がゆっくりと姿を現した。


(ドラゴニックソルジャー……)


 実技試験の相手として確実に出てくるとジェシカさんにも言われていたモンスターの名前が頭をよぎった。

 こいつは知恵はないものの人間と同じく武器を取り、それを器用に扱い戦うことが出来る。そして、国が定める討伐推奨レベル。


 それが丁度レベル二十なのである。


 そう、このモンスターは戦士として軍や公務員を目指す者の実力を測るに打って付けの、所謂『試金石』的な存在なのだ。

この試験が終わるまで位は頑張ります。

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