特定部門特殊採用試験審査会議
あけましておめでとうございます。
最近ちょっと話進めることだったり投稿ペースだったりに意識を持っていかれすぎて文章力アップの課題がおざなりになっている気がするのでその辺も意識しつつなるべくコンスタントに書けるよう努めて参ります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
時間が来たので俺たちは公安棟三階から伸びる渡り廊下を渡り、王宮に入った。王宮職員らしき燕尾服を着た人物に先導されギルモア課長、ジェシカさん、俺、そしてフェリックスさんと続き歩く。先程までとは違い、全体的に豪奢な王宮に圧倒されつつも、もはや王宮のどこにいるのかも分からないほどにあちこちに歩き、ようやく査定会議の行われる部屋へと通された。
それまでの王宮の雰囲気とは違い、部屋のアーチ状の壁面には大きなステンドグラスが嵌められていて、どちらかと言えばそこは礼拝堂であるかのような印象を受けた。その壁面の前にはアーチに合わせるように弧を描いたテーブルが少し高いところに設置され、一列に並び入室した俺たちはその机の前までまっすぐに伸びるカーペットの上を歩き、それが紅い絨毯に変わったところで立ち止まる。先程習った通りに左膝を立て、跪き頭を下げる。
「面を上げよ」
重厚な声が響き、顔をあげる。真正面に座る痩せ老いてはいるものの威圧感のある老人は俺たちが顔をあげたのを確認すると言葉を続けた。
「これより特定部門特殊採用試験に関する審査会義を始める。なお今回は国王が欠席のため、私、宰相のクランフィルが会を取り仕切らせてもらう。なお、今回王族からは第一王子であらせられるロバート様にお忙しい中御出席いただいた」
さいしょうという何やら高い地位であろうの老人が伝えるなり全員が一番端の席で立ち上がろうとしている若い銀髪の男に立ち上がり礼をした。俺も周りに合わせて礼をする。一呼吸程置いて王子は特段大きな声ではないのだが、はっきりと皆に伝わるような穏やかな声で話し始めた。
「皆、ご苦労。今回は王が欠席のため私が王族代表として参加することになった。初めてのことゆえ色々と勉強させていただくつもりだ。よろしく頼む」
尊大といった風でもなく、まさに威風堂々とした態度でそう挨拶した王子は席につく。これが王者の風格なのだろうか? 席に座るというたったそれだけのことですら、あまりに優雅な所作で行うので思わず見とれてしまう。整った容姿もあってすごく絵になっている。嫌味が全くないっていうべきなのだろうか?
「では、クレイン嬢。早速ではあるが、彼を推薦する理由を述べていただこう」
議長であるさいしょうの促しにジェシカさんはコクりと頷くと立ち上がり堂々と話始めた。
「はい。私達の課は皆様の特段のご配慮により予算的面で言えば十分すぎるものをいただいております。しかし、人材面では未だ充分に足りているとは申し難い状況です。私、ジェシカ・クレインはこの青年、アイン・ノールズと三週間ほど前に出会い、その間実戦や彼との訓練を通し、その能力を見てまいりました。まだまだ未熟ではあるものの将来性も鑑み彼は我課に迎えるにふさわしい人材だと私は確信しております。何卒採用試験を受ける許可をいただきたく存じます」
そこまで詰まることなくスラスラと言い上げたジェシカさん。課長との会話では適当にやるみたいな雰囲気だったけど滅茶苦茶考えてくれてたんじゃないだろうか。
「しかしな、クレイン嬢。このデータによると彼はレベルが十六にギリギリ届かないところといった感じだが? これでは未熟が過ぎるのではないか? 君の課の仕事は充分なレベルを持った兵士達ですら務まらないであろうことは実戦部隊員の君が一番分かっている筈ではないかね?」
議長の左隣に座る白髪の混じりの短髪の鍛えていそうな男が少し言いにくそうに発言した。課長が懸念していた質問。ジェシカさんはどうするのか? 気になって彼女を見ると少しだけ呆れたような顔をしていた。
「彼は確かにレベルは低いですが、戦いは単純にレベルだけで結果が決まるレベル比べではありません。彼はそちらの力の方に光るものがあります。そして、そのセンスとでも呼ぶべきものはレベルと違い簡単に手に入るものではありません。それに彼はあのテクマタイトを一度使用しレベル七十クラスのモンスターを殺さず退け、しかも生き残っています。あれを使った人間は魔素吸収効率も上がることはご存じでしょう? 陸軍総帥?」
どうやら陸軍総帥という明らかに偉いポジションの苦言を呈した男性は何かを未だ言いたそうにしているがジェシカさんは畳み掛けた。
「それに……この、私の、推薦です。どこに問題があります?」
かなり『私の』の部分に力を入れて言ったジェシカさん。流石にそんな一職員のわけの分からない道理が通るわけがないんじゃないかと思っていると思いの外何の意見も出てこず、総帥はもはや異論なしといった顔で腕を組み、目を瞑ってしまった。
「あー、それはまぁ良いだろう。で、すまない。じぇ、いや、クレインさん。彼は出身はモス村ということだが……そのあたりはどうなんだい?」
やはり来た……。議長から見て陸軍総帥とは逆側に座る金髪を撫でつけた一見すると優しそうな男から出身地に関する質問が投げかけられた。出身地だけで落とされることなんてないさ。大丈夫。そう自分に言い聞かせ意を決し、唾を飲み込み口を開く。
「お、私自身でお答えします。私は両親共に人間です。エルフではありません」
エルフとは魔法などを得意とする魔王登場前からグリーン地方に住む人種のことだ。
耳の先がほんの少し尖っていたり、魔力を行使できるものが多かったりなどの身体的違いはあるが、他は対して人と相違はない。ただ、現在に置いてなおこの国とは土地問題で争っているため国民としては扱われていないし、それどころか人によっては人間扱いすらしてくれない。
元々はエルフの土地であった俺の村はある程度同化がすすんでいるため両親やサグラ兄さんの家のように普通の人も住むことが出来ている。だが、エルフの人とも付き合いがある俺にとってその問題はあまり気持ちが良い話題ではないのだ。
「それならば問題はないだろう。私からは異論はありません」
金髪の紳士はわずかに俺に優しく微笑んだ後、議長に向き直りそう告げた。なんで笑ったのだろう?
「では他に異論はありませんかな? 無いようでしたら試験は通常公務員試験と課に関わる問題を混ぜた筆記テストとモンスターと三連戦する実技テストとの二つを行う形式で三日後に、という方向で取り決めさせていただきますが」
どうやら無事に試験を行える様子で話が終わりそうだ。思わず小さく拳を握る。準備期間がわずか三日なのはまぁしょうがないだろう。帝都に着く前の二週間でもかなり準備はしているし、とにかく死ぬ気で頑張ればいいんだ。むしろ三日の猶予を喜ぼう。そう思っていると、
「クランフィル。私から一つ提案がある」
ここに来て王子が再び発言した。議長もここにきて王子から提案があるなどとは思っていなかったのか少し驚いた表情をしている。
「王子? どういった提案でしょう?」
「私も参加する前に多少は話は聞いていたからな。この少年、本来なら軍への入隊資格も満たしていない人間に特殊採用試験を適用するというのは私は今一つ納得がいっていない。この条件では若干荷が軽すぎる気がしてならないのだ」
現段階でもきつい気がしてるのにこの人、ハードル上げようとしてないか!?
何やら不穏な空気になってきた王子の話に不安を感じ始める。王子はそんな俺の不安を知ってか知らずか淡々と話を続けようとしている。
「仮に彼がこの試験内容で受かってしまったなんて話が広がってしまえば、そこそこの階級の若者がこぞって受けに来るようになりかねない。試験に落ちた後の五年間、通常試験の資格を失うというペナルティーも成人したての人間なら大した問題でもないし、推薦者とその部署の責任者の許可が必要という制限はすでにあるが、コネとちょっとした努力さえあればいつでも好きな部署に入ることが出来るという変な文化が出来かねない前例は将来為政者になる身としては作りたくはない。そこで、私は彼の試験に対し誰もが納得出来るよう、ある人物に声をかけた。その人物との模擬戦も試験に入れてもらいたい。無論、皆の同意は求めるつもりだ」
そういうと王子は手をパンパンと二回叩いた。
それに合わせ後ろの戸が開き、誰かが近づいて来る。礼儀作法のことを忘れ、俺が振り返るとそこには
如何にも好々爺と言った雰囲気のやたら長い眉のつるっつるの頭をした爺さんが杖をつき立っていた。
……え? この人と戦うんですか?




