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そして俺は法を知る その1

「それって本当なんですか?え、ちょっとマジで???」


「おーおー目覚めてから今までの間で一番食いつきがいいなぁ。頭の痛みも飛んだかしら?」


 未だ嗜虐的な笑みを残したまま発せられた茶化すような彼女の言葉にまたムッときたがそれよりなにより、はぐれゼリーが出るスポットの貴重な情報だって言うから生まれて初めて旅の商人から情報なんてものを買ったのに、これじゃまるで俺、


「詐欺にかかってるってことじゃないかーー!!」


「まぁそうだな。あと一応夜だからもう少し静かに叫ぼうか」

彼女は冷静にそう軽く返してきた。

 この人に何を言っても払った金は返ってこないのはわかっているけれども、もう止められない。


「だってあんまりじゃないですか!今までシルバーソードを買うために地道にコツコツと貯めてきた貯金崩してまで買った情報だったのに。先月と先々月の分で貯まった貯金全部ですよ!!その間にはそれこそ割に合わないような仕事まであったりしていろいろ大変だったのに。特に3日連続で夜通し村の門番やったときなんて深夜給もろくに出ないわ、生活リズムは狂っちゃって昼間はなんも出来ないわでたいh ぐべぇ」


 僕のまくしたてるような文句に対して彼女は首から上がすっ飛んだかと錯覚するほどの強烈なビンタで止めにかかってきた。


 声も出ず悶絶する僕に対して、大丈夫かな?落ち着いたかな?とマジな目でやさしく言われ、なんというのだろう。身の危険をひしひしと感じ押し黙った。

すっかり忘れていたが昼間一撃で僕の意識を沈めたのもこの人のこぶしなのだ。

 今回は落ちなかった(とはいえものすごく痛かったが)だけ手加減してくれたのだろうが手が早いタイプみたいだし、これ以上騒いだら今度こそ首から上が飛んでくかもしれない。






「さて、落ち着いたみたいだし、本題に戻ろうか。君はグリーン地方の人だからあまり目にする機会はなさそうだけど、これくらいは見たことあるでしょう?」


 そう言いながら椅子にかけてあった灰色のコーデュロイのジャケットを手に取ると、それを持ってまたこちらに近づきその左襟についているバッチを指さした。


 金で出来た六芒星の三角形の部分がそれぞれに上から時計回りに赤・紫・青・白・茶・緑色で塗られ、真ん中の部分は金色、そしてその周りを月桂樹の葉を模したリングが飾っているコインくらいの大きさのバッチに描かれたそれは紛れもなく国の紋章だった。


「もしかしてそれ、国家公務員のバッチですか?」


「そのとーり!!私、こう見えても国の為に働く国家公務員なのよ」


 地方公務員であるサグラ兄さんのつけているバッチはデザインは一緒だったけど、銀で出来ていてこのバッチでいう緑の部分だけ(これによって地方を表しているらしい)が色がついていた。

 国の紋章と同じく色が全てについているバッチというのは全ての地方、要するに国の為に働くということを意味する国家公務員の証なんだ、私もいつか試験に合格してあれをつけたいなぁとサグラ兄さんは言ってたっけ。


「お役人さんなのは分かりました。で、そんな国の為に働くお姉さんがどうして僕のことを怒鳴りつけ殴って気絶させたりなんかしたんですかね?」


「あーあー、君って、結構根に持つタイプ?」


 今のところ自分の非も分からないし、公務員であること=人に自由に危害を加える権利を持つこと ではない(と思うたぶん)のだから、納得がいかないのも当然です。


「まぁそれもそうだ。さて、もひとつ質問。レッドデータモンスターって知ってる?」


「さぁ?レッド地方のモンスターのことですか?」


「ま、知らないだろうねぇ。今年制定されたばかりだし。」


 彼女が言うにはレッドデータモンスターというのは絶滅が心配されるモンスター達の総称らしい。

 現在に至るまでに国内で確認されているモンスターは256種。その内絶滅危惧種指定を受けているのは31種に上り、それらのモンスターは国によって保護および管理をされ、一定の個体数を維持するよう努められる。

 また、その関係上、そのモンスター達に許可なく干渉することは原則として禁止する。

という法律が今年の頭に制定されていたらしい。


 そしてこのお姉さんはその絶滅危惧モンスターを保護、管理するために国の作った部署に所属しているという。


「とりあえずお姉さんがどういう人かについては分かりました。でも、そんな法律俺は知りませんでしたし、看板だってなかったしはっきし言って周知が足りないんじゃないですか?」

「でも、知らないから法律やぶってもいいってことはないよね?」

もともと少しきつい目元をさらに鋭くさせながら彼女は即座に返してきた。だが、こちらとて負けてはいられない。

「破ったからといっていきなり暴力振るっていいという法律もないと思いますがね」


 二人の間に何とも言えない緊張した空気が流れた。

 確かに物理的な力関係は一撃でのされた俺の方が圧倒的に下だし、立場的なものもそうだ。

 だが、こちらとてそれで今回の件は全面的にお前が悪かった、助けてやっただけ感謝しろ、なんて言われるのも癪だし、この理不尽と闘う気概を持つことくらいは問題ないだろう。

 また殴られやしないかと冷や冷やしていると彼女は鋭くさせていた目元を緩ませて、


「まぁそれもそうだ。いや、ほんとごめん」

軽くそういってきた。ホントに反省してるのかな、この人。


「謝っていただいたのでもうその件はいいです。僕も悪かったみたいですし。でも、人に危害を加えるであろうモンスター達がいなくなるのは人間にとって都合の良いことなんじゃないんですか?」


 実際、モンスター達に旅人が襲われてしまうなんてことはよくあることだし。モンスターがいなくなることによって問題が起こるとは思えない。


「そう思うでしょ?国も実際去年ある事件があるまではモンスターは根絶やしにすべし。って方向で動いてたからね」


「ある事件?」


「帝都を揺るがした大事件よ!それも知らないの?」


 帝都、各地方の中央に位置するゴールド地方の情報というのは僕の住むグリーン地方まではなかなか入ってこない。

 地理的距離は他地方とは差がないものの、山が多く、また人の手が入っていない場所も多いため、国道の整備も予算の関係もあり進まず、物流、情報等ありとあらゆる意味でいわゆる置いてけぼりを食らっているのだ。(とサグラ兄さんを始め、役所の人はみんな嘆いている)


「まぁグリーン地方じゃしょうがないか。実際田舎過ぎてあたしも行ったことないし。帝都を揺るがした大事件。それはね・・・」


「それは・・・?」


彼女はこれでもかというほど言葉をためて僕の好奇心を煽ってきた。そして満を持してその口元から放たれた言葉は、



「ジー大量発生事件よ!!!」



・・・じー?そんな名前のモンスターいましたっけ?


「ジーってあれよ。黒くてテカテカして一匹いたら100万匹はいると思えっていうあの・・・」

彼女はこれ以上恐ろしいものはいないといった雰囲気でその特徴をあげた。


「それって、ゴキブリ?」


「言わないでよ!!」


 また僕の脳天にこぶしが落ちてきた。



とりあえず世界観説明回その1です。

文章なんてうまい下手とか気にしなきゃ書いてみりゃぁ何とかなるんだろうとか勝手に思ってましたが、実際全然筆が進みませんね。

バシバシ投稿されてる方とか、プロの小説家ってやっぱりすごいんだなぁと改めて尊敬です。

次回も世界観設定説明回になる予定です。(いい加減主人公が物理か精神的ダメージを受けて章が終わる展開はやめにしたいとおもいます。)

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