洞穴の中へ
ジョルデスト達が使用した弾に込められた雷魔法が弱かったのか? こいつが強いのか。そもそも中で何が行われていたのかは知らないが、洞穴から姿を現した一つ目の巨人はその怒りがすぐにでも見て分かるほどに俺たち人間に対して憎悪を向けていた。穴と同じくらいの、丁度ビリジアタウンの宿くらいの高さはあろう巨人はその全身で持ってその怒りを体現していた。
巨人はまず巨大な棍棒が握られた右腕を大きく上げると、地面を払う様に棍棒を体の前で右から左に半円を描き、振った。嵐のときよりも大きな風の音が谷に響く。
足元にたまたま居合わせる羽目になってしまった警官が二人、そのスイングに巻き込まれて岩の壁へと飛ばされていく。巻き込まれはしなかったものの棍棒の軌道の傍に立っていた者は、その風圧か、それとも恐怖のためか倒れこむ。
棍棒をそのまま同じ軌道で戻そうとしていた巨人の目に細長い物体が当たり、硬質な音と共に刺さることなく弾かれた矢が地面に落ちる。警部が配置を支持していた狙撃手のものだろう。続けて、今度は渇いた発砲音と共に拳銃弾が目に向けて放たれるが、これも同様に怒りに火を注ぐだけでなんの効果もない様子だった。
もう一度巨人が腕を振ると近くの馬車が倒され、そのまま地面を転がっっていく。
「じぇ、ジェシカさん」
俺が声をかけたときすでに、隣にジェシカさんはいなかった。
「アイン君! あたしがアレを引き付けてる間にみんな連れて逃げて!!」
声が聞こえた方を見ればすでにモノアイタイタン目前まで走って行っているジェシカさんの姿が見えた。すぐに巨人の足元までたどり着くと、勢いのままそこから飛び上がり、すれ違いざま巨人の左膝裏に対して鞘に入れたままの剣をフルスイングで振ろうとしている。
「嬢ちゃん! そんな攻撃効くわけがねぇ。やめろ!!」
警部のものらしき叫びが聞こえるのと、金属と金属をぶち当てたような音が響き、まるで膝カックンをされたような形で左膝を曲げバランスを崩した巨人がよろけるのはほとんど同じだった。
「さぁ、死なない程度に相手してあげるから、あたしについておいで」
ジェシカさんがドスを聞かせて言うのに呼応してか、巨人はバランスをとるため一歩下げた右脚を軸にクルリと声の方へ向き直り、すでに着地し、洞穴の左奥へと行こうとしているジェシカさんを追いかけ始める。巨人の立てる地響きの音と振動は遠ざかっていき、ジェシカさんと巨人の姿はすぐに闇の中へと消えて見えなくなった。
「警部、大丈夫でしたか?」
ティアを馬車に残し俺が駆けつけると入口付近にいた警部はまだ信じられないものを見たという顔を立ち尽くしていた。そしてそのままジェシカさんが聞けば殴りかかってしまいそうな疑問を警部は口にした。
「おい、坊主。あの嬢ちゃん、ありゃぁ妖怪かなんかか?」
「そうかもねって言った方がいいですか? 多分そんなこと聞くとすごく怒りますよ、あの人」
「いや、まぁ、ここは田舎だしな。他行けばあぁいう人間もいるんだろうな。うん」
警部はそういうと我を取り戻し、テキパキと部下に指示を飛ばし始めた。それに合わせ、呆然としていた部下たちもようやっと動き始める。
「いねぇだと!?」
状況確認をしていた警部が大声を上げた。
「どうかしたんですか?」
「どうもこうもさっき吹っ飛ばされた馬車を確認してみたらやつらのうち二人が逃げちまったらし......」
「アイン!」
ティアの叫び声が何故か洞穴の方から響く。
声のする方には逃げ出した男がティアを抱えたまま洞穴の中へと入っていくのが見えた。逃げ出した男たちはティアを人質に逃げ出したようだ。
「警部、俺追いかけます!」
俺は警部に短く伝え、馬車からランタンをひっ掴んでその後を追い、洞穴へと入った。
洞穴の中はまるで冬のように冷たい空気が漂っていった。音の響き方からするにかなり広い空間が広がっている様子なのだが、ランプの光は五mほど先までしか届かず、全体を見渡すことは出来そうにない。
「どうやって追いかければ……」
そう思っていると遠くでちらちらと明かりが見え隠れしているのに気が付いた。その光の方へと近づくと男が二人、何やら作業をしている。
「お前たち! ティアを返せ!!」
俺の声に片方の男がティアにナイフを突きつけたまま、振り返る。
「動くな!このガキがどうなってもいいのか」
突き付けたナイフを今にも突き刺してしまいそうなほどの勢いで男が吠える。下手に刺激は出来ない。
「俺たちはなんもまずいことしてねぇのに逮捕なんてされてたまっか! 依頼主は捕まっちまったし、ここで大物捕まえねぇと俺達は破産するしかねぇんだ!」
確かにここで彼らがモノアイタイタンを狩っていたこと自体はなんの問題はない。まだ狩猟禁止にはなってはいないのだから。でも一緒に捕まったってことはなんかしたんじゃないだろうか?
とにかく、ティアが人質に取られ危険に晒されることと、それとは関係のない話だ、どう言い返すべきかと俺が迷っていると
「でも、お前さんらジョルデストの逮捕妨害しただろう。それに今は誘拐までしてる。言い逃れは出来んぞ?」
後から追いかけてきた警部は呆れたような声で犯人に告げた。
「うるせぇ! とにかくこんなことで捕まるわけにはいかねぇんだ! この狩りさえうまくいきゃ、こいつは適当なとこで開放してやるよ。だから俺たちが狩りを終えるまで大人しく待っとけ!」
男たちはすでに冷静さを欠いているのか、こちらの言うことに全く聞く耳を持っていない様子だ。あまりここにいては別のモンスターに襲われるかもしれない。気持ちは焦るもティアを人質に取られている以上、迂闊に手出しは出来なず、俺も警部も動けなかった。
「兄さん。マジックカノンの準備が出来たよ」
「流石だ、ジョニー。じゃあ、お前らは動くんじゃねぇぞ?」
そういってティアを抱えた男はじりじりと距離を開けようと後退する。俺が一歩踏み出そうとしたそのとき、「必殺、猫パンチ」の声とそれに続く鈍い音がすると、男はうつ伏せに倒れこんだ。
見れば子供のような大きさの少年が拳をガッツポーズのように決めて立っていた。
「ガト!?」
「アインはん、だから言うたでしょ? 保護者として責任持てって」
俺は、気絶して倒れた男をどけてティアをその下から出そうとするガトの手助けをするためそこに駆け寄った。
「ティアはん、けがはないですか?」
「ありがとう、ガト。平気だよ。アインもありがとう」
「俺はなんも出来てないけどね。ガト、本当にありがとう」
「たまたま、アレの威力見に来てたら出くわしただけですよって。偶然偶然」
そう言ってケラケラと笑っていたガトの背後からゆらりと、剣を振り上げるもう一人の男が姿を現した。
「ガト! 伏せろ!!」
俺は剣を鞘から抜くと、相手の剣にぶつけて弾く。ティアの方ばかりに意識を囚われてこいつのことを忘れていた。
「よくも、兄さんを!」
もう一人の男、弟の方も我を忘れているのか、剣を勢いよく俺に対し振ってくる。自分の剣戟よりも強く振られるそれに対し、ジェシカさんの教え通り軽く剣を当てることでその剣先を逸らす。
相手がただ怒りに任せ、がむしゃらに振っていたせいか、それともここ数日のジェシカさんとの稽古の賜物か、その剣筋は非常に分かりやすい軌道で俺に向かって振られているように見えた。
何回かの剣戟の後、これでは埒があかないと察したのか相手は俺の左胸、心臓をめがけた突きを繰り出してきた。
隙を作れる!
そう確信した俺は左手に持ちかえた剣で相手の刀身に滑らせつつ左にその剣先を弾き、空いた右手で男の顔面へと手甲を叩きつけた。相手の突きの勢いまでも乗ったカウンター気味の裏拳は見事に相手の意識を奪えたのか、男が崩れ去ることであっけなく戦いは終わった。
この話の途中で見事に詰まりました OTL
文章力のなさと構成力のなさが憎い。




