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宿屋での出会い

「あれ? ここは…」


 目覚めるとそこは宿屋の俺の部屋だった。外はもうすっかり日も落ちているようで部屋にはランプがつけられているが、窓の外は暗い。


 確か狩場で人に出会って挨拶しようと思ったら怒鳴られてそれで・・・あれ、殴られたのか?俺は。


 まだ痛みの残る頭をゆっくりと持ち上げ部屋を見渡すと、ドアの傍にある椅子に長いウェーブがかった金髪の女の人が腰かけていた。目を瞑り背もたれにしっかりと寄りかかっているのでどうやら軽く眠っているらしい。

 白のTシャツに黒のGパンといった動きやすそうな服装で、それはすらっとした体型によくフィットして、それが胸元の膨らみをむしろ強調させていた。

 こんな格好で外の世界を出歩くなんて人がいるだなんて到底思えないんだけど、この人が俺を助けてくれたのだろうか?



「女性の体をジロジロと舐めまわすように見るのはあまり感心しないな、少年」


・・・起きていたらしい。


「す、すみません。あの、あなたが助けてくれたんですか?」


「こちらこそすまない。まさかあの程度で気絶するとは思わなかったから」


「あの程度? じゃあもしかして・・・」


「助けた、というよりは私が気絶させてしまったのだからな。さすがに放っておくわけにもいかないし、君をこの村まで運んできたところ通りがかった宿屋の主人に君が泊まっている部屋に案内された、というわけさ。さすがに気絶させた手前、安全なところに運んだからっていってばっくれるわけにもいかないし、君が目覚めるまで待たせてもらったよ。すまなかったね。」


 どうやら俺を怒鳴り、殴って、それで気絶させ、村まで運んでくれたのはすべてこの人のようだ。


「とりあえず、ここまで運んでくれたことには感謝します。でも、なんで俺は怒鳴られて殴られたんでしょう? 何か悪いことしましたか?」


「悪いことって・・・君、あそこがどういうところか知らないのか?」


「はぐれゼリーが出るスポットじゃないんですか?」


 俺はそれ以上の情報を知らない。ここの村の人とも宿の主人ともほとんど話をしていないし、注意を促す看板だってなかったはずだ。たぶん。


 女性はそれを聞いてから何やら一人であーでもないこうでもないと腕を組みながら悩み、また質問をしてきた。


「君さ、定宿地どこかな?」


「ていしゅくち? 住んでいるところはグリーン地方のビリジア村ですけど」


 それを聞くと謎はすべて解けたとばかりに彼女は組んだ腕から右手を出して人差し指を突き出してきた。


「そのパターンか!」


 何を納得いったのかはわからないけどそのまま声を出して笑い始めた。

 さすがにこの流れだとどうやら田舎ものであることを笑われているのは間違いなさそうで、俺も少しムッとして未だ笑いの止まらない様子の彼女に苛立ちを隠さないまま声をかけた。


「田舎ものなのは自覚してますけど、そこまで笑うことはないんじゃないんですか?」


俺の言葉に流石に彼女も悪いと思ったのか笑いが収まった。


「いや、すまないね。そういうつもりはなかったんだけど、そのパターンは初めてだったもんだからさ。やっぱり人づてに頼るでなくて、ちゃんと告知したほうがいいなぁ」


「どういうことか、説明してもらえませんか?さすがに怒鳴られて殴られてさらに笑われたままじゃ納得できません」


彼女は指でくるくる髪をいじりながら答えた。


「そうだな、きっちりと説明してあげるよ。それに、君にしっかり話しておいて地元に帰って言いふらしてもらえばそれが周知にも繋がるしな」


 ところどころ何を言ってるのか分からないけどとりあえず話は聞けそうだ。俺が安心していると、彼女はさっきから髪をもてあそんでいた指を止めて少し嗜虐的な笑みを湛えてこう言った。


「あーそうそう。まず最初に言っとくけど、あそこ、はぐれゼリーなんてでないよ」


......いきなり俺にとって衝撃的な話が降ってきた。

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