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獣人の商人

イントネーションは関西系でイメージしていただければ。

なお方言の部分はスゴく適当に雰囲気で書いています。(私が喋れないので)

異世界なのでこういうものなんだなと広い心で思っていただければ……(;^_^A

 翌日の昼、未だ体に残る酒が生み出すダルさを引きずる俺達は村の登山具店にいた。


 マラカイト山脈を作る山々は最高峰、標高4218mのR2を筆頭に実に標高3000mを越える山々で構成されている。『マラカイト山脈に描く軌跡』という工事責任者の苦労や苦悩を描く伝記もあるほどの大国家プロジェクトが60年前に行われたことにより、王都方面の国道はある程度楽に移動できるよう整備されている。

 しかし、ブラウン・グリーン両地方を結ぶその山腹を縫うように通る国道は二つ目の山を越えた辺りで未舗装となり、また崩落しかけている箇所もいくつかあるくらいの険しい道のりになっている。

 リヴァ村で乗り逃した長距離便も舗装の無くなる辺りにある山小屋までで引き返す形だ。


 今回の山越えに当たり、何故かザックの方をより大きなものに買い替えることになった。スーツケースは肩紐を取り付けてそのまま背負えるようにして使うらしい。

 勿論、一人では2つも背負いこむことは出来ないためこの先は2人で一つずつ荷物を背負っていくことになる。


 荷物の大半を占めていた服の処分も勿論提案したが、それは断固として拒否された。

 雇い主の希望だからあまり食い下がれなかったが余計なもの持って越えられるほど甘くはないと思うんだけど。


 そんなわけで、かれこれ30分ほど売り場でジェシカさんはザックを選んでいる。


 先ほど服屋で女性の買い物ににこやかに付き合っている男を見かけたが、あのようにはできないなぁと考えつつ、俺は登山用小物を物色して時間を潰していた。そういえば来るときに用意した酸素石の酸素量が心もとないな、あとで買っておこう。


「将来のことも考えてなるべく大きいのがいいなー。これは……ちょっと小さい。これは……色が違うよなぁ……これだと……かわいすぎる? アイン君」


 突然の呼び掛けに慌てて返事を返しつつジェシカさんの方に向き直る。

 見ると、ショッキングピンクのザックをこちらに向けつつ、ジェシカさんは膨れっ面で不機嫌そうにこちらを見ていた。

「ちょっと、ちゃんと一緒に選んでくれなきゃ困るよ! ビリジアタウンまではアイン君が背負うんだよ? これ」

「ザックのデザインなんて別になんだって構いませんよ。ジェシカさんの好きなやつにしてください」

「そういう嘗めたこと言ってる人が山で偉い目に合うんだよ! ほら、背負ってみて。」

 機能性よりデザイン性重視で選んでる人に嘗めてるとは言われたくないんだが。嘗めてるのはどっちなんだか。


 ジェシカさんの山越えの計画はまさに強行軍そのものだった。

 俺がブラウン地方に来る際かかったのは一般の人より一日早い4日間だったのに、ジェシカさんが提案したプランはなんと行程僅か二日だった。一日目で途中にある山村の宿に宿泊、二日目の夜にはビリジアタウンに到着する算段だという。

 はっきし言って無理がある計画である。大体そんなスピードでは最初の山の時点で2500m付近を通る国道を行くなら間違いなく高山病になるだろう。

 先ほど買い足そうかと考えていた酸素石は文字通り酸素を蓄えた石で口の中で転がすと酸素を出してくれるが、それほど安いものではない上、蓄えている酸素量にも限りがあるし使い捨てだ。あくまで低酸素症になってしまったときの備えであって、ずっと使えるものではない。


 もしかしたら高山病をジェシカさんは知らないのかも・・・という可能性に今更気が付いた俺はやっと決まったザックの会計をする際、酸素石の購入も勧める。

 しかし、ジェシカさんは

「要らないよ。あたしあれの本物、持ってるから」

 とレジ奥の鍵のかかった高額商品の飾られるショーケースを小さく指さした。

そこには一際目立つ形で置いてあるが、河原にいくらでも落ちていそうな拳大の石が値札と共に飾られている。

 その値札には俺が一生かかっても買えないようなとんでもない値段と『こちらにあるのはサンプルです』の文字、そして商品名が書かれていた。


「イナーシャルストーン・・・」


 環境の変化を嫌うとされるその非常に希少なこの石は、大きさによって効果範囲は変わるが、自らの周囲の環境の変化を非常に緩やかにさせる一種の特殊空間のようなものを発生させるらしい。

 これがあれば気圧や酸素量、それに気温の急激な変化の発生はない。

つまり、余程長い期間山にいない限りはこれを携帯していれば平地にいるのとまったく同じ感覚で生活できてしまうということだ。

 当然、多くの登山家は喉から手が出るほど欲しがり、また一部の極限に挑戦する登山家には逆に忌み嫌われているという代物である。


 少し押さえた声でジェシカさんは話を続ける。

「あたしの持ってるのは半径7mをカバーできるくらいの大きさだけどね。二人だけならそれで十分だし、大体一週間くらいは石が環境に馴染まずに効果を維持できるらしいから全然問題ないでしょ?」

「そうですけど、あんなもの今朝荷物の整理してるときにありましたっけ?」

 あんな石っころが入っていればさすがに気づきそうなものである。

 彼女はひときわ声を潜めて言った。

「スーツケースのフレームの中に入ってるのよ」

 だからスーツケースは処分しないわけか。

 なんにしてもまぁ・・・これでもはや心配しなくてはいけないのは俺の体力だけってことですね。



 その他、一応非常用の食料と水の補充を終え、明日の出発に備えて宿に戻ることにした。

 この村は人の出入りが多いためか確かに色々と活気があって良いのだが、如何せん俺は金がない。

 一応いくらかは前借りでいただいたものの、給与自体はジェシカさんが俺を雇い終わった後に国に報告して承認が出て、ようやく俺に小切手が届くそうなので、今の俺は全然お金がないのだ。

 それに新しく買ったザックに荷物を詰め直さないといけないし、イナーシャルストーンがあるとはいえ体調を万全にするためしっかりとした休息の必要はあるしで、とにかくさっさと戻ってディナーまでゆったり過ごすことになっていた。


 そうして歩いていると俺たちは背後から男に声をかけられた。

「おにいさん、おねいさん。あんたら見たところかなりの強者でっしゃろ? わてと一緒に山越えしませんか?」

 妙なイントネーションで言われた言葉に思わず振り向くと、そこには俺の腰ほどの背丈の所々黒の混じったものの銀髪の男の子が立っていた。

 よく見れば、グレーをベースに黒の模様が付いた大きな猫耳を頭から生やし、同じようなふさふさのしっぽを持っている以外は、極々普通の人に近いその子は獣人(けものびと)と言われる人と獣が合わさった人種の人だった。



「わてはガト言います。商売の都合でどうしても3日以内でグリーン地方に行かんといけんのですが、戦闘の出来る人たちがなかなか見つからんでね。さっき登山具買われてるときに見てて、この人達やとピン! と来たんですわ」

 ピン! に合わせて耳がまっすぐに立つのが少しかわいらしくも滑稽でちょっとにやけてしまったが、隣のジェシカさんは表情を全く崩さず、訝しむような目で話を聞いていた。

「わては従者達にお二人の荷物も一緒に持たせます。ザック持っての登山はやはり厳しいやろ? もちろん、お礼もそれなりに弾ませていただきます。ほんで、その代わりにお二人にはわてらを守って欲しいんです。モンスターと・・・環境の変化、から」


 環境の変化って・・・こいつ話を盗み聞きしてたのか。


「悪いけどお断りするわ。その話、私達にはなんのメリットもないもの」


 ジェシカさんはすぐにそう突き放すようにその話を拒否し、俺に声をかけると踵を返して早足で歩き出した。


 え、ちょっと、待ってくださいよ、ねぇ!! そんなわけないでしょ?? と言いながらガトと名乗る商人は俺たちの横についてきて話を続けたが、ジェシカさんは話を聞く気はないらしくドンドン先へ進んでいく。

「ねぇ、おにいさんからもあのおねえさんになんとか言ってくださいよ! 今回の取引失敗するとホントまずいんですって」

「俺は彼女のお付きだから、俺に言われても困るんですよ」

 助けてあげてもいいような気がするが、ジェシカさんがきっぱりと断った以上、俺はそれに従うしかないだろう。口調もやったことも実に胡散臭いし。石がスーツケースと一緒になっている以上彼らに荷物を預けるわけにもいかない。


 結局、そのまま宿の前までついてこられてしまい、宿の中まで追っかけてこられるのを嫌ったジェシカさんは仕方なくこう言った。



「私達は自分たちのペースで出発するから、勝手についてくるだけなら別に構わないわよ? もっとも、ついてこられたらの話だけどね」

 そしてそのまま不機嫌そうに宿へと入って行った。



 翌日の深夜3時半、俺たちは宿を出た。

 まだまだ暗いがこの時間帯なら松明一本使わないくらいで夜明けの時間になるので何とかなるだろう。

「そんなに彼らと一緒に山越えするのは嫌ですか?」

 俺はやり過ぎじゃないかというニュアンスを込めつつ眠い目を擦りながら俺の前をスーツケースを転がしながら歩くジェシカさんに聞く。

「あの商人は3日とか無茶なこと言ってたけど、荷物運びの連中のスピードなんて絶対に遅いからね。一緒に連れて行ったら予定が狂っちゃって野宿する羽目になっちゃうし、私達に得なんて一つもないし。なにより、胡散臭いのよ、あいつら」


 2日という日数は無茶じゃないんだろうか? と思いつつそろそろ村から出るので松明に火を灯そうとしながら歩いていると、村の出口のところに重そうなザックを背負ったかなり大柄な4人の男たちの人影が見えた。

 そして、そいつらの後ろから、昨日のガトという獣人が出てきて呑気に挨拶をする。

「おはようございます。お二人さん。商売柄朝早いのには慣れてますけど、今日はちょっとわてにもしんどいですわ。あら? ・・・ねえさん寝不足ですか? 随分目付き悪くなってますけど。そんならこのドリンクいかがでっしゃろ? お安くしますよって」


 後ろにいた俺からは見えなかったが、ジェシカさんはたぶん凄く嫌そうな顔、してたんじゃないかな。





にしても設定やアイテムが後出し気味なのでなんか御都合主義くささを感じてしまいますね。

よろしくない傾向(´・ω・`)

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