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姫君の翼  作者: いろみず
7/8

融合

私は、アイツの消息を追って、近くの基地を回った。

携帯にも応答がない。

そして今日、立川の基地に来た。

私は基地のフェンスから中を覗いていた。

戦闘服の兵隊が怒号を浴びながら隊列を組んで走っているのがみえた。

みんな、私と同じくらいの年齢。

新人の兵隊なのだろうか??

もしかしたらアイツがあの中にいるのかも、そんな気がして、じっと隊列を探るように見てみる。

あれかな?いや違う。

あの人?これも違う。

そんな事を繰り返して数十分。

すると後ろから声をかけられた。

「南野!?」

違った。中年の警察官だった。

後ろにはパトカーが止まっている。

「基地の中を伺っている人がいるって通報が通行人からあったんですよ。」

「・・・それが??」

「うーん。場所が場所だし、周りの人から見たらいろいろと紛らわしく見えるんだと思うんですよ。」

「違うの!私は人を探しているの!」

「人?」

「軍に・・・入れられたの。友達が。」

すると警察官は、パトカーの運転席にいるもうひとりの警察官と目を一瞬合わせ、私の方に再び目をあわせる。

「そうですか。事情は分かります。ですが・・・」

分かります?何が?

いきなり、ホントに突然、片思いかもしれないけど、好きな人、でも確かに大切な友達を取られたんだよ?私は?

途端にその警察官が、憎く思えた。


気が付けば、私の右拳が彼の顔面に直撃していた。

「公妨!!」

パトカーからもう一人が飛び出してきて、私はたちまちパトカーの後部座席に押し込まれた。


基地直近の警察署で夜まで取り調べやらなんやらが続いた。

どうやら私は公務執行妨害の被疑者になってしまったらしい。

帰りの電車の中で、今日のことがもしアイツに知られたら、絶対バカにされるんだろうなあ、なんて考えていた。


家の窓から、遠くに夜の空にそびえ立つ光の柱を見つめた。

そう、全てはあの得体の知れない柱のせい。

あの柱が、憎くて仕方ない。

やり場のない怒りがこみ上げてきた。

光の柱を自分の手で消して、あいつを取り戻したい。

でも、何もできない無力感。


次の日、学校に登校すると、教師から停学1ヶ月を言い渡された。

昨日警察の世話になったのがもう伝わってたらしい。

やることもない私は調布基地のフェンスからただ呆然と戦闘機を眺めてた。

もし警察官が来たらさっさと家に帰るつもりだ。

戦闘機や兵士たちを見ながら、私が軍に入れば、とか、あいつあそこから出てこないかな、とか、色々と考えてた。

一時間くらいたっただろうか。

そろそろ立ちっぱなしも疲れたから、近くのファミレスで昼ご飯でもたべようと思った瞬間だった、女の声で後ろから話掛けられた。

また警察かと思って一呼吸置いて振り返ってみると、そこにはスーツを着た若い女がいた。

「人をお探しですか?」

「そんなとこです」

「会わせてあげましょう。こちらへどうぞ」

は?いまこの女なんて・・・

「はい?」

「ですから、会わせて差し上げましょう。」

すると、だんだん視界がぼやけてきて、意識が遠のいていった。





目が覚めると、私はすぐに状況を察した。




光の柱の使者に、柱の中につれてこられた。



真っ白の、空と地面の境もない世界。

そこに並ぶ沢山の一色単の飛行機。

間違いなく光の柱の中の世界だ。

私は周りを見回し、さっきの女を探す。

「私たちは、あなたたちをもっと知りたいの」

さっきの女の声がどこからともなく聞こえる。

「何・・・何を言ってんの?」

「あなたは、私たちと最初に対話した人類ね。」

「・・・だから?」

もう訳が分からない。

何が目的なの?

「あなたは選ばれたの。私たちにね。」

「何が目的なの?」

「私たちがこの惑星に来たとき、沢山の飛行物体が迎えでてきた。そしてそれらは私たちに攻撃を仕掛けてきた。」

淡々とした声で語り続ける。

「私たちは戦うすべをもっていない。だから私たちは、その飛行物体を観察して複製した。戦いを続けるうち、その飛行物体の中と地上には意思をもつ生命体がいることに気がついた。そこで、あなたがつれてきやすそうだから、ここに来て貰ったの。」

たまったもんじゃない。

「いい迷惑だわ!さっさと私を返して、あんたらはこの世から消えなさい!」

「それはできない。あなたを観察し、複製する。」

「あんたらが勝手に始めた戦争でしょ!?目的はなに?」

「私たちにも分からない。」

すると目の前に突然、私と同じ姿をした人間が現れた。

そいつは私に話かける。

「あなたたちを知るために、私は戦う。それ以上でもそれ以下でもない。」

「訳わかんない」

「そしてあなたにも戦ってもらう。」

「えっ?」


すると意識が遠のいていって、私は気がつけば空を飛んでいた。

翼を持ち、爆発的な推進力をもつ、奴らの空飛ぶ戦闘機械の一部に組み込まれていた。

どうやら私は声を出すことも、地面を歩くこともできず、空を飛ぶことだけの身体になってしまったようだ。


下には人々の住む街が広がり、上には無限とも思える空が広がっている。

今までにこれほど心地良い体験はしたことがない。

遠くから飛行機が二機近づいてくる。

彼らも空の心地良さを楽しんでいるのだろうか?そんなことを考える。

「墜とせ」

テレパシーの様にどこからか聞こえてくる。

こんな空を自由に飛べるんだ、争いはしたくない。

そんな気持ちとは関係なしに、その二機は私に容赦なく機銃弾を大量に叩き込んできた。

痛い

やめて

苦しいから

苦痛でおかしくなりそうだ


私はやがて推力を失い、海の中に吸い込まれるように落ちていった。


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