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姫君の翼  作者: いろみず
3/8

エンゲージ

多摩川の上空約1000メートルを二機編隊で東京湾に向かって飛ぶ。

ほぼ正面に太陽と「光の柱」がバイザー越に見える。

すぐにレーダーなに反応があった。

「マーキュリー、コンタクト。敵味方識別願う。」

「コンバットコントロールからマーキュリー隊。IFF応答なし。大型機、ターゲットだ。」

「マーキュリー了解。」

やっぱり戦闘機タイプではなく、大型機タイプのアンノウンだ。

いつも通り、接近して形を確認、写真撮影をしたあと、東京湾に沈めよう。

「マーキュリー11からマーキュリー22、いつも通りマスターアームは指示があるまでセーフのままにしておいてくれ。」

「マーキュリー22了解。」

スロットルを少し開き、距離を詰める。

朝日の中に小さく、点が見えてきた。

「マーキュリーからコンバットコントロール。肉眼でターゲットを確認した。」

「コンバットコントロール了解。所定の措置を実施の後、異常無ければ撃墜を許可する。」

「マーキュリー了解。」

だんだん形がはっきりしてきた。

速度は300ノット前後だろう。

今まではAWACSのような形をしていたが、様子が違う。

「あれは・・・」

明らかに今までのやつよりデカい。

「マーキュリー11、あれは輸送機みたいな形だ。新型か?」

距離が近づき、アンノウンの左後方に付いた。形がはっきり分かる。

巨大な胴体、二枚の垂直尾翼、6発のエンジンを持つ、灰色一色単の「飛行物体」

「マーキュリー22、アントノフ225みたいなやつだ。」

まさにロシアの大型輸送機、アントノフ225の形だ。

「マーキュリーからコンバットコントロール、新型だ。大型輸送機、アントノフ225の形をしている。」

「コンバットコントロール了解。写真撮影後は、突然の攻撃に備え、マスターアームの点火を許可する。攻撃があれば反撃も許可する。」

「マーキュリー了解」

不気味な飛行物体だ。

こんなにデカい図体のくせに、静かすぎる。

音こそ聞こえないが、飛んでいることが不自然なくらい大きく、堂々と目の前を飛行している。

「マーキュリー22、写真撮影を開始する。」

「マーキュリー11了解。」

左翼にいたスーパーホーネットが頭上を通過して、アンノウンの右側に移動する。

その直後に、レーダーに反応がある。

方位約050。

「コンバットコントロールからマーキュリー、百里のRFだ。フレンドリー。」

新型だから、情報収集に上がったのだろう。

しばらくはアンノウンのを落とすことは出来なさそうだ。


アンノウンは南に向けて飛行し、横須賀の上空に到達した。

300ノット前後の速度は保ったままだ。

「光の柱」が東京湾に突き刺さっているのが後方に見える。

まったく、こいつらの飛行目的がさっぱり分からない。

いつもフラフラと現れて、制空権解放軍に撃墜されるだけ。

そもそも、こいつらの正体すら分かっていない。

「光の柱」も、質量を持たない、ただの直径500メートル、高さ10キロメートルの光だと言うことしか分かっていない。

その中からアンノウンは現れる。

本当にそれだけしか分からないのだ。


「こちら、戦術偵察飛行隊。調布迎撃隊、こいつはこちらで始末します。」

もうすぐ後方には俺たちとは別の二機編隊がいた。

緑色の偵察機、RF-4E一機と、対空装備のF-15J一機の編隊だ。

偵察飛行隊の情報収集はみっちりやるため、時間がかかる。

うちらの任務は、偵察機にくっついてきたイーグルに引き継ぐことになる。

偵察機が情報を取り終わり次第、イーグルが撃墜するという流れだ。

「調布迎撃隊了解。よろしくお願いします。」

「マーキュリー11、帰ろう。」

「そうだな。コンプリートミッション、RTB。」

右に旋回して、三浦半島を南から北に貫くようにして、調布基地にアプローチする。

無線の周波数を調布基地のタワーに合わせる。

「タワー、マーキュリー、チェックイン。」

「マーキュリー、確認。ランウェイは35、風は020から5ノットです。6DMEで報告して下さい。」

「マーキュリー了解。」

左前方の厚木基地から、飛行機が離陸するのが見える。

在日米軍は極東制空権解放軍の傘下ではないから、アンノウンがこようと通常営業だ。

しかし、様子がおかしい。

厚木基地から次々と戦闘機が上がってくる。

上がった戦闘機は左旋回、東京湾方向に向かっている。

嫌な予感がするが、間もなくファイナルアプローチだ。

「マーキュリーから調布タワー、6DMEです。」

すると帰ってきたのは予感が的中したような回答だった。

「マーキュリー、着陸を中断して要撃管制にコンタクト、東京湾に向かって下さい! 百里の偵察機が撃墜されました。現在、アメリカ海軍航空隊が支援に向かっています。」

撃墜された?相手は輸送機だぞ。

「マーキュリー了解。」

間髪入れず、コンバットコントロールにコンタクト。

右に急旋回、スロットルレバーを全力で叩き込み、アフターバーナーに点火。

「マーキュリー、支援に向かいます。」

「コンバットコントロール了解。全兵装の使用許可。先ほどのアントノフ225は大量の短距離対空ミサイルを搭載しているのを確認。なお、ミサイルを機銃で撃墜するのも確認しています。接近には十分注意してください。」

「マーキュリー了解。」

実戦だ・・・。

相手は俺たちを殺しにかかってくる。


やるしかない。

「マーキュリー11、マスターアーム点火!」

「マーキュリー22、マスターアーム点火!」

大きく一回息を吸って、吐く。


「マーキュリー、エンゲージ!」

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