ベアずきん
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どんよりとした灰色の空にはカラスが飛んでいる。
森の奥に続く小道を熊耳をフードにつけたベアずきんが歩いていた。
赤いずきんに熊耳のがついた村娘を思わせるその姿はまさに童話の『赤ずきん』のようで、誰かがベアずきんと呼び出すと、それが徐々に広がっていったのだ。
「やあベアずきんどこ行くの?」
と、『赤ずきん』のようなシチュエーションで狼が現れた。
「なんであんたに言わなちゃいけないの?」
「えーと、そのこう言う時のお約束というか、その・・・」
徐々に狼に映る影がのび巨大な何かに変わって行く、
「その・・・あの・・・すみませんでした。ではさいならして。」
狼はその場を逃げ出そうとする。赤ずきんの太い腕は、狼を掴んで離さない。
「せっかく声をかけてくれたのに、すぐに帰るなんて失礼じゃない?」
「いやそんなつもりはないです。俺隣のうさぎくんに用事があって・・・・」
「まあいいからおばあちゃんちでご飯でも食べてきな。二人とも料理が苦手だから作ってくれると嬉しい。」
「えっえっえっいやーでも。」
ベアずきんによって狼は引きずられて行く、
「いやぁぁぁーー」
その後狼を一ヶ月間見たものはいなかった。(おばあちゃんちで家事をさせられていたため。)
それから数時間後、森の奥の小屋でベアずきんは鍋でスープをかき回している。
「ベアずきんや。なにを作っているんだい?」
「狼の(が作った)スープよ。おばあちゃん。」
「そうかいそうかい。それでそこで食器をだしているのは?」
「このスープを作った狼よ、おばあちゃん。」
「あどうも。」
「美味しそうな匂いだ。あんた料理人になれるね。」
「いや…狼じゃ料理人にはなれねぇんです。」
「獣人差別かい?」
「それは…はい。」
「ひどいね。」
「けど町よりはマシですから、なんとかやっています。」
「そうかい。」
「おばあちゃん。スープが煮えたわよ。」
ベアずきんが湯気の香るスープを祖母のもとに運んでいく。
そして『いただきます』3人の夕食が始まった。早速ベアずきんの祖母が木製のスプーンで、スープをすくい食べる。
「美味しいね。」
「うん。とっても美味しいよおばあちゃん。」
「どうも。」
「いつも私らが食べているスープと少し味が違うんだけど、いったい何を入れてるんだい?」
「うんうん。私も気になる!」
「その、山で採れた山菜だの木の実なんかを少しばかり、」
「そうかい。料理人の件だけど、都会に行って料理の学校に通うといい。」
「都会に?だって、俺は狼の獣人で…」
「そんなもん。気にしなくていい!」
「でもっ」
「いいかい。都会にはいろんな獣人がいるんだ。狼だろうがクマだろうか。星の数ほどにね。私は若いころ都会にいたからわかっているんだ。」
「でも俺怖いんです。また何もしていないのに後ろ指さされるんじゃないかって。すごく怖いんです。」
「いや、なにかしらはしてるよ。さっきも私に話しかけてきたし。」
「そこは狼らしく。」
「しなくていいと思う。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
そんな3人の談笑が続いていた時突然ろうそくの灯が消え、ドアが大きく開かれた。
「あたしのぉぉーーーかわいい子ちゃんはどこぉぉぉぉ!!」
月の明かりが差し込む中現れたのは、白い服を着た巨大な狼耳の女だった。
「ここにいるのはわかっているの!!私の、私ののぉぉー可愛い子を出せーー」
「ひぃ。マッママ!」
「ママ?あんたのママ?」
「はい。過保護で困ってるんです。」
「いた。私の可愛いこ。」
あっという間もなく巨大な狼耳の女は狼を抱きしめほおずりする。
「もうお外に行ってはダメといったでしょう!外はね怖いところなんですからね!」
「でもマっお袋。ボっ俺はちゃんと一人で出来るよ。さっきも俺の作った料理が旨いって褒められたん。都会に行って料理の学校に行ったらいいって勧めて・・・・」
「もう、何を言っているの。都会なんて駄目よ!人が多いでしょう?過去にあなたは何度も人に傷つけられてきたことを忘れたの?」
「でもっボっ俺は、都会に出てみたい!確かに俺は何度も人の心ない言葉に傷ついてきたかもしれないけど、都会なら沢山の人がいる。獣人が、仲間が・・・・そいつらに会ってみたい。。」
「でも・・・・」
「行かせておあげよ。昔からかわいい子には旅をさせよというだろう?」
「考えてみるわ。」
こうして狼の親子は家に帰っていった。
「あの狼都会に行けるといいね。」
「ぐぉぉぉーー」
「もうおばあちゃんてば熊みたいないびきで寝て。」
ベアずきんが掛け布団を祖母にかけなおす。祖母の耳は人の耳だった。
「あの親子もう帰ったかな?」
ベアずきんが家のドアを開け外を見る。家の前には道ができており、その道沿いには光り輝く花が点々と小さな光を照らしながら咲いている。
「前もこんな感じだったな。」
ふとベアずきんは昔都会に出た友達を思いだす。過保護な親から逃げ出した幼馴染の女の子
。その子が被っていた赤ずきんを貰ったベアずきんは、幼馴染が帰ったら赤ずきんを返すと決めていた。
いつからだろう?あの子が帰ってこなくなったのは。いつからだろう?おばあちゃんが眼鏡をしなくなったのは、いつからいつから・・・・
「あっ!」
(そういえばあの子は帰ってきた。子供を連れて・・・・何年前?二十年?)
そういえばさっきからいびきをかいて寝ていた祖母のいびきが消えている。どうしたんだろう?
ベアずきんは、急いで祖母のベットに駆け寄る。
「どうしたのおばあちゃん。」
「・・・・・・」
祖母から返事はない。
「まさか・・・」
ベットの中には誰もいなかった。
「夜のお散歩に行っちゃった。」
夜の森をベアずきんは走って行く。
「きっときっとあそこだ。」
祖母は月明かりに照らされてたお花畑にいた。
「あらベアずきん。どうしたんだい?」
「その、夜のお散歩に。」
「本当は私を心配して迎えにきてくれたんでしょう?心配しなくても私はとっくにお婆ちゃん。ベアずきんと一緒にの山を駆け上る元気も残ってないよ。いつもありがとうね。」
ふと祖母と友人の姿が重なりそして・・・
「あ!」
ベアずきんは今目の前にいる老婆が、都会から帰ってきた友達であることを思い出す。
「どうしたの?ベアずきん?」
「今まで貸してくれてありがとう。ミモザちゃん。」
ベアずきんはずきんを脱いで老婆に返した。
「どういたしまして。楽しかった?ベアずきんちゃん。」
「うん。とても。」
数十年前ベアずきんは、都会に出る親友からずきんを借り受けた。
けれど親友が帰ってきたにも関わらず、ベアずきんは返すことができなかった。
だが今ベアずきんは、こうして友達に赤ずきんを返すことができた。
「きづかなくてごめんね。ミモザちゃん。」
「いいよ。それよりも帰ったら腰をもんどくれ。」
「はいはい。」




