第九話 初めての領民
「お初にお目にかかります、この火龍の狩り場の領主、オーウェルと申します」
「領主ですと!? 火龍の狩り場の!?」
おばあさんは、ものすごく驚いていた。
隠れ住むつもりだったのかな?
領主がいるんじゃ、人もいるとか思っているかも知れない。
「そうです、変に思われるかも知れませんが、僕はこの国の王族で、つい先日、アマルガン王より、この地を賜りました」
「こちらは、我らの長老、ラウスス様です」
ゴードンさんが紹介してくれる。
他の人は、遠巻きにこちらを見ていた。
老若男女、いろいろいる。
子供の数も、まぁまぁいた。
「ラウススと申します、行くあてのない身です、どうかお導きを」
おそらく、精霊族は警戒心が強い種族なんだろう。
簡単に人を信じていたら、すぐに殺されてしまうし。
それが、導いてくれなんて……僕が子供だからっていうのもあるだろうけど、余程疲れ切っているんじゃないか。
「比較的安全な場所があります、そこまで移動しましょう」
こっちは、子供と若い女性がひとり。
危険はないと判断したのか。
「みな、最後の一踏ん張りじゃ、この方に着いていくぞ!」
顔を見合わせていた人達も、仕方なくという風に首を縦に振る。
「クラリス、どうすればいいかな」
「火龍が夜も狩りをするのか不明です、それと、入口に来たみなさんを攻撃に巣を出たのも気になります」
そういえば、僕らも入口の近くで家を造っていたら襲われたんだっけ。
「入口から入るのやめようか」
「そうですね、迂回して森の方から入りましょう」
火龍の狩り場へは極力入らずに、岩場を伝って東の森の方に移動する。
日の落ちた山道を歩くのは、なかなかに困難だった。
北の山伝いに東へ移動すると、やがて森が見えてくる。
そして一本、二本と木が増えていき、背の低い木から背の高い木に変わっていった。
「そろそろ森に入りましょう」
辺りはすっかり暗くなっていた。
人気のない森の中を、僕らは進んでいく。
「火龍は?」
「今のところ、姿は見えません」
こう暗くちゃ、そもそも見えにくい。
「僕らの家って、どの辺りだっけ?」
「川が目印です、川を探しましょう」
「そうだな」
川の近くに建物がある。
暗くて見えないだろうけど。
「では、それは我らにお任せを」
「ラウススさん?」
精霊族の人達の方から、さっきの光の精霊が、十体くらい現れる。
それが、四方八方に散っていった。
索敵できるのかな?
魔法は便利だなぁ。
ちなみに、僕は魔法の素質がなかった。
是非使ってみたかったけど、仕方が無い。
三十分くらいそうしていただろうか、光の精霊が一体戻って来る。
「川を見つけました、案内します」
「おお……」
ちょっとどよめきが起きる。
100人いると、やっぱり集団感が出るな。
精霊族の100人を見てみると、様々な人が居た。
武装している人は戦士階級なんだろう。
荷物を背負っている人。
ローブに杖の魔法使いスタイル。
母親なのか、子供の手を握って歩いている人。
色白なのが特徴だけど、隠れ住んでいるから余計だろう。
でも、疲れ切った顔に、少しだけ希望が見えた。
しばらく歩くと川が見えてくる。
「ここが川です」
確かに川だけど、周りに建物はない。
「下流に向けて歩きましょう」
戻ってきた光の精霊が、先頭を照らしてくれる。
僕は馬を引きながら、川沿いに下っていった。
「建物です」
光の精霊で感じるのか、男がそう言った。
しばらく歩くと家が見えてくる。
「到着しました、ここが我が領土唯一の家です」
「はぁ……」
みんなその場にへたり込む。
小さい家だから、ガッカリしたかな?
それとも、目的地に着いたホッとした感が強い?
「これから、家を造ります、家族単位としていくつ必要ですか?」
「家を造る? 今からですか?」
ラウススさんが不思議そうな声を出す。
「大丈夫、オーウェル様に任せておいてください」
「そ、そうですな……二十軒ほどあれば……」
「わかった、二十軒だね」
大体家族は5人くらいなのか。
足りなければ、また作ればいい。
僕は、木々の隙間に家を造っていく。
「なんと!」
「家だ! 家を建てているぞ!」
なるべく木の近く、上から見えないところに造りたいけれども、ドローンでもないとそれはわからない。
緑にしているから、大丈夫だと思うんだけど。
「さあ、二十軒できました、後は食糧ですね」
「おお、食糧まで……」
クリエイトで出してもいいんだけど、持ってきた半年分の保存食を提供する。
「あんまり、美味しい物ではないですが」
「とんでもない、この上に、美味しいものなどと……」
その間に、精霊族の大人が森から枝を拾ってきて、焚き火を起こしていた。
それが、あちこちに見える。
上から見えないかな?
こんな夜に飛んでいるのかわからないけど。
そして、精霊族は川から水を汲んでお湯を沸かし始めた。
そういう荷物は持ってきているようだ。
さすが隠れ住んでいるだけあって万全だ。
「畑にトウモロコシとトマトがあるので、それも食べて下さい」
クラリスが畑の場所を案内する。
「ありがたい、ありがたい……」
「人にこんなに優しくされたのは初めてです」
「オーウェル様、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「領主様ありがとうございます」
「領主様、領主様」
領主様って……この人達、火龍の狩り場に住むつもりなの?
本当に? 本当なら嬉しいんですけど。
「どうしますか、ここにずっと住みますか?」
ラウススさんは、即決だった。
もう、持ってきた食糧も尽きていたのかも知れない。
「是非、領民にさせてくだされ、お願い申し上げますじゃ」
その日は、簡単な食事をとると、みんなそれぞれの家に入り、眠った。
明日になったら、やっぱりやめたとか言い出しかねないけど……。
とりあえず、僕も疲れたかな。
「クラリス、僕らも寝ようか」
「!!!」
クラリスが顔を赤くする。
「も、申し訳ありませんオーウェル様……わたしは、その、伽のやり方を知らないのです……」
「いいよ、いいよ、そんなこと……って、伽!?」
僕は驚いて声を出した。
伽とは、つまりそういうことだ。
もちろん、小柄な身体にりっぱなものがふたつも付いているクラリスが魅力的じゃないわけないけど……。
「クラリス、僕はまだ9歳だよ、伽には早い」
「しかし、キニスン様は、もう伽相手がおりましたが」
キニスンめ。
やることはやっているらしい。
「とにかく、僕に伽は必要ない」
「申し訳ありません、勉強していなかったので……」
本当に申し訳ないという感じで、クラリスがうなだれる。
「強制的にそんなことお願いしないから」
「しかし、この身はオーウェル様に捧げると誓った身です」
「わかった、とりあえず今日は別の部屋で寝よう、疲れただろ?」
「はい、それでは失礼致します」
クラリスは、まだ働けそうだったけど、スタミナの無駄遣いをすることはない。
僕は、適当な部屋に入ると、ベッドに寝転んで睡魔に襲われた。
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