第八話 火龍に襲われる人々
冒険者と会って森に帰ろうとすると、火山から大きな影が飛び出してきた。
「火龍です!」
地面に強風が叩き付けられる。
あんな上を飛んでいるのに、こんな地面まで風が来るのか!
でも、狙いは僕たちではないみたいだ。
火龍の狩り場の入口、北の方に飛んで行く。
「晩ご飯かな?」
クラリスが首を振る。
「明らかに、何かを目指して飛んでいるようでした、行きましょう!」
行くのか、セーブはさっきしたな。
僕たちは馬を走らせていく。
当然、空を飛ぶドラゴンの方が速い。
あっという間に遠くへ行ってしまった。
「追いつけませんね」
「向こうの方が1.5倍くらい速そうだ」
多分翼だけで飛んでいない。
魔法なのか何なのかわからないけれど、あの巨体が翼だけで飛んでいるとは思えない。
「あれは……?」
三十分ほど走ると、火龍が地面に向けて炎を吹いているのが見えた。
あれが、火龍の必殺技であるブレスだ。
あれがなければ、騎士団も少しは戦えると思うんだけど。
「やっぱり狩りなんじゃないかな?」
火龍の狩り場の入口付近なのが、少し気になるけれど……。
「人が襲われています!」
「なに!?」
よく見ると、ブレスの先には逃げ惑う人達が居た。
でも、馬のスピードでは到底間に合わない。
満足したのか、火龍が空を旋回する。
そして、動いている者がいないか確認するようにしばらく飛び続けると、そのまま飛び去っていった。
僕たちは生き残りが居ないか駆けつける。
「無事な人は居ますか!? 生きている人は居ますか!?」
酷い有様だった。
地面が焼け焦げ、人が……人の形をした燃えかすがたくさん横たわっている。
100人くらいだろうか、冒険者かも知れないが……。
「オーウェル様! 生き残りです!」
そちらに駆けつけると、5人ほどが酷い火傷を負ってうずくまっていた。
即死ではないかも知れないが、この火傷では感染症などで助からないかも知れない。
「うううっ……」
「クリエイト!」
僕は、クリエイトでハイポーションを出す。
それを、怪我している人達に振りかけた。
「ああああっ!」
「滲みますか? ポーションですから我慢してください!」
みるみるうちに怪我が治っていく。
ハイポーションは、割と高価なポーションだけど、冒険者なども万が一のためにひとつ携帯するらしい。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
僕は、携帯していた水袋を渡す。
倒れていた男が、それをごくごくと飲んだ。
「落ち着きましたか?」
「な、仲間は?」
クラリスが、神妙な面持ちで首を振る。
「残念ながら、生きているのは5人ほどです」
「ああああああっ……!」
男が泣き崩れる。
すさまじい慟哭だった。
「神は、なぜ我らにこれほどの困難を与えるのか!」
「オーウェル様、彼らは精霊族です」
……精霊族。
会ったのは初めてだけど、額に美しい宝石が見える。
これは埋め込んだのではなくて、生まれたときから彼らに備わっている物だ。
宝石魔術と言われる特別な魔術を使う、珍しい種族。
その貴重さと美しさから、額の宝石はならず者に狙われ、ひっそりと隠れ住んでいるらしい。
「ここは火龍の狩り場ですよ、どうしてこんなところに……」
なるべく責める口調にならないように、柔らかく話を聞く。
「我々は戦で土地を追われた難民です、額に宝石があるので街に住むこともできずに、荒野をさまよっておりました」
「そうですか……」
「しかし、それももう終わりです……仲間が……」
100人程の集落が、逃げ出してきたんだろう。
戦場の近くで、集落の位置がばれてしまったのだろうか。
「オーウェル様」
「わかってる」
クラリスの言いたいことはわかる。
時間を戻せないかということだ。
「いいですか、良く聞いて下さい、あなた達が助かる道があります」
「え?」
「誰にも秘密にして下さい、神のご加護でこれから時間を巻き戻します」
「時間を……巻き戻す?」
「今から一時間ほど前に戻しますで、火龍の狩り場の入口辺りで隠れていて下さい」
「…………?」
男は意味がわからないという風に、首をかしげる。
「あなたは、このことを覚えています」
「覚えて……いる?」
「だから、仲間を説得して下さい。今から助けが来るから、火龍の狩り場に入らないようにって」
「しかし、仲間は……」
「一時間前に戻ります、みんな生きています」
「…………」
「わかりましたか?」
男は、わからない様子だけど頷いた。
「わ、わかりました」
「僕の名はオーウェル、あなたは?」
「ゴードンと申します」
「では、ロード!」
「…………」
火山のふもとにいる。
日が傾いてきた時分だ。
よし、ちゃんとロードされているな。
クラリスが頷いている。
記憶もあるようだ。
ゴードンさんにも、記憶があることを期待するしかない。
「そうだ、祈りを捧げておこう」
僕は、急いで祈りを捧げる。
おびただしいエネルギーが、天を昇っていった。
さっきは、ここで、冒険者に会ったはずだけど……。
「あなた達、ここで何をしているの?」
来た。
さっきは詰問するような口調だったのに、今度は不思議がるような感じだ。
ちゃんと乱数調整されているらしい。
「すみません、ちょっと用事があるので、また今度お会いしましょう!」
「申しわけありありません。オーウェル様!」
「ああっ!」
「え? ちょ、ちょっと……」
僕とクラリスは冒険者さんの相手もそこそこに馬で駆け出していく。
ゴードンさん、上手くみんなを説得できただろうか。
「火龍は飛んできませんね」
「まだわからない、もう現地にいるのかも」
一時間ほど馬を走らせると、火龍の狩り場の入口に着いた。
辺りに人影はない。
馬の高さで見ているけれども、100人の人は見つからなかった。
「…………」
火龍の狩り場の入口と言っても広い。
日が傾いてきているから、余計に探しにくかった。
そこに、ふわっと光の玉が飛んでくる。
「うわっ、人魂か?」
「人魂? ってなんですか? それは光の精霊です」
「精霊? 精霊族?」
光の玉がふよふよと飛んでいく。
僕らは、その後を追った。
すると、岩陰に100人程の人影が見える。
「あ、あなた、オーウェルさん!?」
「さっきの生き残りの人! ゴードンさん? みんなを説得できたんですね!」
良かった。
間に合ったみたいだ。
「ああ、良かった……夢じゃないかと、何度も挫けそうになりましたよ」
馬から下りてゴードンさんの手を握る。
クラリスはまだ空を警戒しているようだけど、馬から下りてきた。
「これは、どういうことですかな」
年かさのおばあさんが前に出て来る。
とりあえず、大惨事は回避できたようだ。
時間はいくらでもある。
僕たちは話し合っていった。
【大切なお願い】
もし少しでも、
『ちょっと面白いかな?』
『つづきを読みたい可能性もあるかも?』
『オーウェル頑張れ』
と思って頂けた方は、評価、ブックマークをお願いいたします。
(↓にある☆を押すと評価できます)
励みになりますし嬉しいです。
よろしくお願いいたします!




