第五話 きらきらの森
森は、場所を選べば空から見えにくいところがいくつもありそうだった。
火龍が目で見ているのか、違う器官で獲物を探しているのか、それはわからないけど。
「この辺が良いかな」
「はい、水場の近くなので便利かと思います」
「よし、クリエイト」
川の近くに、さっきと同じ家を建てた。
なるべく目立たないように、緑色の建物にする。
迷彩柄はやりすぎだと思うので、緑で良いだろう。
「馬車で移動するのは無理だね、クラリスは乗馬は得意かい?」
「王国一と自負しております」
それはすごい。
凄すぎるくらいだけど、そうでなくちゃ騎士団で疎まれはしなかっただろう。
何歳なのかわからないけど、クラリスは見た目の数十倍は経験がありそうだった。
「よし、食糧を馬車に乗せていると動物に取られそうだ、家に移そう」
「はい、今度こそ、オーウェル様は休んでいてください」
「そんなわけにはいかないよ」
小柄なクラリスに重い物を全部運ばせるのは気が引ける。
まぁ、僕の方が更に小柄なんだけど。
馬車から荷物を運び出していく。
あまりに重い物は、ふたりで下ろした。
「オーウェル様は、王族なのに変わっておられますね」
「そうかな? これくらいセルジュ兄様でもしそうだけど」
「セルジュ様なら、魔法で片付けそうです」
セルジュは、どんなスキルを持っているのかいまいち判然としなかった。
9歳の儀式で、完全魔力というスキルを公開されたけど、それがどんなスキルなのか、その後にどんなスキルを得たのかわからない。
まぁ、セルジュは敵じゃないからいいんだけど。
むしろ、数少ない味方だ。
僕らは、一時間かけて、半月分の食糧を家に運び込んだ。
でも、正直心許ない。
足りなくなるのは明白だった。
「狩りが必要かな」
「そうですね、獲物はたくさんいるようでした」
火龍の狩り場と言うだけあって、獲物はたくさんいる。
まさに肥沃な土地だった。
火龍さえ居なかったら、ここは素晴らしい領地になるだろう。
「よし、肉だけじゃ栄養が取れない、畑も作ろう」
「今からでございますか?」
収穫までに半年かかるとかは困る。
「もちろん、クリエイトだよ」
「便利ですね、畑まで作れるのですか」
実質、作れないものは人間くらいじゃないかと思っている。
エネルギーが尽きるまでクリエイトしたことはないけれど、レベルのせいなのか、限界を感じたことはなかった。
「何の野菜が好きかな?」
「トマトと……トウモロコシが好きです」
なんかかわいい。
トマトとトウモロコシか。
夏野菜だな。
「いいね、作ろう」
僕たちは外に出ると、適当な場所まで行く。
「じゃあいくよ、クリエイト」
「うわぁ」
暗い森の中に、トマトとトウモロコシの実がなっている状態の畑が現れた。
逆に、実のなってない畑を作る方がイメージしにくいかも。
「他にはあるかな?」
「料理をする身としては、生姜やねぎなどの香味野菜も欲しいです」
「なるほど、それは少なめでいいかな」
なるべく開けたところに畑を作る。
日光が所々当たっているけれども、畑なら空から見ても大丈夫だろう。
「後は何かあるかな?」
「うーん、あり過ぎて出て来ません」
「そういうものだよね」
まぁ、追々、必要な物を増やしていこう。
「クリエイトは無限に使えるのですか?」
「限界まで使ったことがないからわからないけれど、かなり余裕はあるよ」
「戦場でその能力は脅威です、地形を変化させるに等しい働きができます」
地形を変化させるか。
集団同士の戦いなら効果がありそうだ。
「戦場は当分先の話だね、今は火龍の狩り場に集中しよう」
「かしこまりました」
なんだか、きらきらと地面が反射している。
「…………」
やけにきらきらした森だな。
地面をよく見ると、所々に鉱物が露出していた。
「これ……金?」
「本当ですね、金に銀……あれは、ミスリル!?」
森の中を散策すると、いたるところに貴重な鉱物が露出していた。
「これもミスリルですね、宝石も至る所にあります」
「山に行けば、手つかずの鉱脈がありそうだな」
「火龍を何とかできれば、の話ですか?」
「無理だと思うかい?」
クラリスは小さく微笑む。
「オーウェル様の力を駆使すれば、上手く罠にはめて倒せるかも知れませんが……討伐に派遣された騎士団も無策だったわけではありません」
攻城用の兵器をもちこんで、鉄線の網や痺れ罠なんかを多用したらしい。
それも、王国史に残っているだけで十回以上の遠征が行われている。
「しかし無理だった」
「そうですね……」
「うん、火龍を倒すのも今は後回しだ」
なんとかなりそうなのは、次に得られるスキル次第だろう。
内容が良ければ、討伐を試してみても良いかも知れない。
僕らは畑で軽く収穫すると、家に帰った。
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