第四話 火龍との遭遇
【入植一日目】
事前知識通り、火龍の狩り場はなにもない草原だった。
西から北にかけて山脈があり、そこに火山があって火龍が住んでいるらしい。
東側には森があるが、その先は隣国の領土だ。
「どうしますか?」
「とりあえず、家を建てよう」
クラリスは?マークの付いた顔で首をかしげる。
そんな仕草も絵になる容姿の良さだ。
「ここに、でございますか?」
「はい、ここにですよ」
セーブ。
1年やっている間に、念じればセーブできるようになっていた。
このセーブを99番目に取っておこう。
記念すべき、領地開拓一日目だ。
「家と言っても材料も大工もおりません」
「いらないよ、僕のスキルなら」
「?」
「クリエイト!」
僕は、石壁の平屋を出した。
これは、王宮を出る前から何度も練習していたので、お手の物だ。
「すごい! 家を出せるのですか!?」
クラリスが感心している。
僕は、ちょっと自慢したくなって中に案内した。
「出すだけじゃなくて消すこともできるよ、それより、中も見て」
「はぁ~」
部屋にはテーブルや椅子、ベッド、調度品など色々ある。
その完成度を見て、クラリスは本当に感心しているようだった。
「さすがです、オーウェル様、この力は王国一なのではないですか?」
「まさか、セルジュ兄様の完全魔力には劣るよ」
でも、初めてスキルを褒められて悪い気はしなかった。
僕もまだまだ子供だな。
「必要な物は揃っていると思うけど、足りなかったら教えて」
「かしこまりました、馬車から荷を下ろします」
「僕も手伝うよ」
「オーウェル様は、お疲れでしょうからお休みになっていて下さい」
「クラリス一人にやらせられないよ」
本格的な調査は明日からだ。
食糧と水、生活に必要な雑貨などを下ろしていく。
「まずは、正確な地図が欲しいですね」
「地図か……」
確かに地図は必要だった。
ちなみに……僕に絵心はない。
クラリスに丸投げだ。
「とりあえず、食糧は今日明日の分だけで良いよ、移動しながらまた家を建てるから」
「かしこまりました、しかし、これほどの能力があれば、アマルガン様もお考えを改めるのでは?」
真面目な顔で、クラリスがそう言う。
父王は、僕を厄介払いしたと考えているのか。
セーブロードのことも、クリエイトのことも、アマルガンに教えたら余計に危険になるだけだと思う。
「考えは改められないよ、さあ、休もうか」
「お茶を煎れますね」
騎士の格好ではなく、ずっとメイド姿のままのクラリスがなんだかおかしい。
剣は帯剣しているけれど、ちっとも強そうには見えなかった。
「水の確保も必要ですね、川と湖があるはずですが……」
「!?」
「!!!」
そこに、聞いたことのない咆吼が轟いた。
クラリスが荷物を放り出して剣を抜く。
「なんだ!?」
馬が怯えていなないた。
「オーウェル様、空です!」
「空!?」
窓から身を乗り出して空を見る。
するとそこには、巨大な物体があった。
空を飛んでいる赤い物体。
これが……火龍か!
「伏せて!」
クラリスが僕をかばうように押し倒し、伏せる。
火龍は空から急降下し、かぎ爪ひとつで家を破壊した。
「うわっ!」
窓から大きな足が見えている。
これは駄目だ! 最悪……死ぬ!
「ロード!」
僕は、セーブポイントに戻った。
「え?」
馬が落ち着いている、家もまだ建っていない。
ここに来たときのまま……セーブポイントだ。
「…………」
ふぅ、いきなり火龍に出会うとは、ついていないな。
そうだ、すぐにやらないと。
僕は祈りを捧げる。
「天上に祈りを捧げん」
エネルギーが空高く吸い込まれていく。
上手く乱数調整できただろうか。
家を建てたから目印になったかな?
家の目印がなければ、来ないかも知れないけど……。
「お、オーウェル様、今……火龍に襲われていたはずなのに……」
「え!?」
「い、家もない、ここは……火龍の狩り場に着いたばかりのとき?」
「…………」
しまった、まさかクラリスが記憶を持っているとは。
ロードしたときに、近くにいる者は記憶を持つのかも知れない。
「時間を……戻せるのですか?」
畏怖の念を込めて、クラリスがそう言う。
「察しが良いじゃないか」
「他に説明がつきません……」
もしかして……。
「そういう魔法が他に存在しているのか?」
納得が早かった。
どこかで聞いたことがあったのだろう。
「伝説級の魔法です、使える者はこの世にいないでしょう」
本当に、心から感心したようにクラリスは頷いていた。
自分が仕える主は、優秀な方がいいだろう。
忠誠とは能力に捧げるものではないだろうけど、逆よりかはずっと良いはずだ。
「伝説か……このことは誰にも言わないでおいてくれ」
と言っても、こんなところに誰もいないんだけど。
「クリエイトも時間遡航も、大変貴重なスキルです、なぜ黙っているのですか?」
真面目な顔でそう聞いてくる。
どうしよう、クラリスはどこまで信用できるのかな。
「知られれば、殺されるかも知れないからね」
「アマルガン様は、そこまで臆病ではないと思いますが……確かに、誰がどう思うか危険ではありますね」
「クラリス、君は王家に忠誠を誓っているのかい?」
「はい、わたしは王家に忠誠を誓っております」
駄目だ、仲間にはできないかな。
「ですが……オーウェル様が、自分に忠誠を捧げろと仰るならそうします」
「できるかい?」
「はい、シャロン様に救われたこの命、オーウェル様に尽くせと言われております」
うーん、それじゃあシャロンを殺せって命令したらどうなるんだ?
やっぱり、まだアマルガンを討つ計画は打ち明けない方がいいだろう。
いずれは説得しなくちゃいけないけど……まだ早い。
まぁ、火龍の狩り場を発展させるなんてことが、そもそも可能なのかどうか、わからないんだけど。
「とりあえず、空から見えない森に行こう、そこまで見つからずに移動できればなんとかなるはずだ」
「わかりました、空に気を配っておきます」
そして、僕らは火龍に見つからずに森までたどり着いた。
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