第二十六話 戦乱の気運
「領主様、大変です!」
海王族が帰った翌日、村長が領主の屋敷に駆け込んできた。
森の方を精霊族の村、湖の方を湖の街と呼んでいるから、町長にした方がいいのかも知れないけど……。
まぁ、そこは自然と変わっていくのかな。
「どうしました?」
僕は、最近上手くいっていたので少し油断していた。
でも、火龍の狩り場は牙を剥いて襲いかかってくる。
「病気です!」
「病気!?」
火龍の狩り場なんていう特異な地域にいたらあるかも知れないとは思っていたけれども……本当に来るとは。
「どんな病気ですか?」
「学者のミハイルが言うには火龍病と言うそうです」
学者先生は、広い知識を持っていて細かくみんなの補佐をしてくれていた。
でも、お金を得るのは難しいので、役場で村長の補佐をしてもらっている。
「見に行きましょう」
「駄目です! オーウェル様に感染するかも知れません!」
クラリスが反対する。
それはそうなんだけど……。
「火龍の狩り場に住んでいるなら、移るも何もないよ。僕だっていつ病気にかかるかわからないんだから」
「しかし、危険です」
「いざとなれば、だよ」
時間を戻せる。
どこまで戻せばいいのかわからないけれども、対応は可能だった。
「わかりました、くれぐれも感染しないように、患者には触らない、タオルで口鼻を押さえるなどしてください」
「うん、わかった。クラリスもだよ?」
「はい、私もそうします」
村長に連れられて見に行くと、兵士の一人の身体が火傷のようにただれていた。
「亡くなったのですか?」
「はい、今朝亡くなりました……」
これが火龍病なのか。
土着の病気なら対応は難しそうだけど……病名がわかっているなら、薬などもあるかも知れない。
「他に、火龍病にかかっている者はいますか?」
クラリスが村長に尋ねる。
村長は、太った身体で汗を拭きながら答える。
「はい、他にも症状の出ているものがいて、手当をしています」
「突然ですか?」
突然こうなるなら、対応が難しい。
「いえ、何日か前から症状は出ていたのですが、薬師の薬と教会の治癒術で対応しておりました」
「なるほど……」
「まるで火龍の呪いだ」
「この土地はやっぱり呪われているんだ」
遠巻きに見ていた街の住人が怯えた声を出している。
これはよくないな。
死人が出た以上ロードはするけれども、もう少し様子を探ってからだ。
「火龍の呪いですか」
「クラリスは知っているの?」
「はい、過去に火龍に挑んだ騎士達も呪いで死んでいます」
それは初めて聞いた。
文献には残されていなかったと思うけど、隠されていたのかな。
「病気じゃなくて呪いなの?」
「病気か呪いかはわかりませんが、火龍討伐に失敗して命からがら逃げてきた騎士達も、ほとんどが死んでいます」
調べ足りなかったか。
聞き取りなどをすれば、対応策をもって来られたかも知れないのに。
「…………」
未知の病気か呪いか、これは参った。
手の施しようがない。
「これは火龍のブレスに含まれている呪いのせいだね」
「あなたは……」
いつかの湖の冒険者だ。
酒場に出入りして、冒険者と友好を深めていると聞いている。
湖が火龍に襲われないと教えてくれたのもこの人だ。
情報の信用性はある。
「火龍のブレスが原因というと、初めに船が襲われたときかな……」
「そうですね、それ以外に兵士が火龍のブレスに触れるタイミングはなかったと思います」
小型の船がやってきたときは、海王族しか乗っていない。
海王族は大丈夫なんだろうか?
「森の民には患者は居ないようです」
村長の報告にも納得できた。
火龍のブレスが原因なんだろう。
「なにか対応策はありますか?」
「湖の水で洗うと症状が良くなるから試してみるといい」
「そんな対応策があるのですか」
王都に帰った騎士団は、どうしようもなかっただろう。
火龍の狩り場の湖に特効薬があったなんて。
「ありがとうございます。助かります」
「いや、いいんだ、俺の方も楽しませてもらってるからね」
湖の周りが栄えるのを喜んでいるようだ。
ダンジョンが賑わうことも、期待していたはずだ。
「ダンジョンはどうですか?」
「いいね、毎日冒険者がやってきて、いい感じだよ」
ダンジョンとこの人の関係がわからないけれど、友好的に接しておきたかった。
この先も何があるかわからない。
僕は、クラリスを連れてその場から離れる。
「どこまで戻ろうか」
死んだ人が居るのでロードはしないと拙い。
「湖の水が、どれほど効くのかわかりません」
それもそうか。
「じゃあ、一旦、昨日まで戻ってみようか」
「そうですね、それくらい即効性があるなら助かります」
「ロード」
一日戻ってみる。
あまり戻りすぎると、同じ未来にたどり着けるか自信がない。
「…………」
海王族が来る日の朝まで戻った。
クラリスも朝の支度をしている最中だ。
「では、症状の出ている者を集めます」
「うん、頼むよ」
クラリスは村長と掛け合ったのか、すぐに症状の出ている十数人を集めてくれた。
村長は中々に優秀で、病気が出ている人間をリストアップしていたらしい。
「囚人に関しては、病気の有る無しがわかりません」
「わかりました、看守に確認させましょう」
クラリスが答える。
まずは、湖の水がどれくらい効くのかどうかだ。
「…………」
明日死んだ兵士は、やはり少し進行したように火傷が広がっている。
あまり痛そうにはしていないけれども、明日には死ぬんだ。
苦しまずに死ねるのかも知れないけれども、厄介な呪いだった。
「それは火龍の狩り場独特の病気です、湖の水で洗い流すと良くなりますので、各自良く洗って下さい」
「そうだったんですか」
「変な病気だと思ったらそれか」
呪いというと、みんな不安になるだろうから病気と言っておく。
実際には、火龍のブレスに含まれる細菌が原因とかかも知れないけど、この世界の人には説明しにくい。
「良くなるまで、一日三回は洗って下さい」
念のためだ。
まだ発症していない人も、やった方が良いかも知れない。
森から流れてくる水がきれいなので、飲み水や身体を拭く水はそちらの方を使用していた。
これからは、湖の水も使った方がいいだろう。
僕も今晩から、風呂の水はクリエイトじゃなくて湖の水を使った方がいいかな。
それから海王族がやってきて交易をして、彼らにも病気のことを話すと、湖の水を浴びていた。
でも、前に来た人達に病気になった者はいないらしく、海王族には火龍の呪いが効かないのかも知れない。
やっぱり、呪いじゃなくて病気なのかも知れなかった。
翌朝、早くに海王族が船で帰る。
「そうだ領主様、アルスノヴァ王国が隣国のバルトプス王国と戦争になるらしいと情報が入っています」
「え……?」
突然の報告に何も考えられなくなる。
クラリスも険しい顔をしていた。
そんなこと、前は言ってなかったのに!
バルトプスは精霊族が住んでいる森の東にある国で、同盟も敵対もしていなかった。
それがこんなタイミングで……。
戦力が整った状態なら、アマルガンを討つ契機が訪れるかも知れないけど、今は早すぎる。
まだ生活するのも覚束ないのに。
ロード前はそんなことを言っていなかったのに、セーブロードにこんな弊害があるなんて……。
何も知らない海王族は、喜んで帰って行った。
「どうしますか、もう一度戻しますか?」
クラリスの言葉に、僕は考える。
多分、セーブしたポイントをロードすると、完璧に同じ状態ではなくロードされるんだと思う。
セーブしてから過ごした時間が影響しているのか、それはわからないけど……。
「いや、悪化しても困る。このまま様子を見よう」
「火龍の狩り場に敵がやって来るとは考えにくいですが……」
セーブを98番目にしておく。
99番目は開拓一日目の火龍の狩り場の入口。
98番目もここに戻ってこられるように特別だ。
念のために戦力を上げておかないといけないな。
「どうするのですか?」
「クラリスには黙っていたことがあるんだ……」
「?」
どんな弊害が出るかわからないからやらなかったけど、地球の装備をクリエイトする必要がありそうだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました!
一旦ここで終了です。
内政ものを書こうと思って始めたのですが、私の力量不足でした。
悲しいほどに読まれていません。
やはりタイあらなのか、そもそもの設定なのか、ヒロイン不足なのか。
当たり前ですが、書きたいものを書いていても駄目ですよね。
みなさんが読みたいものを書かないと読んでもらえません。
こんな拙作ですが、読んで頂いた数少ない読者の方に感謝です!
つづくかどうかわかりませんが、またお会いできる日を楽しみにして!




