第二十四話 新しいギルド長
「領主様、申し訳ありません」
夜、日が落ちてしばらく、僕の家に尋ねてくる者があった。
一緒に暮らしているクラリスが戸口に出る。
兵士の人かな?
クラリスと何か話しをしている。
「わかりました、すぐに行きます」
そう言ってクラリスが戸を閉めた。
「街の周りを警備している兵士から連絡です」
「どうしたの?」
「誰かが街に近づいてきているようです」
「明かりを点けているの?」
「どうやらそのようです」
もう暗いから、松明でも持っていれば遠くから見えるだろう。
「僕も行くよ」
「はい、お願いします」
クラリスと現場に行くと、兵士が数人集まって構えていた。
ならず者が侵入してきた例もあるし、気をつけないと。
でも、松明の持ち主は、お互いが視認できる距離になっても歩くペースを変えずに近づいてきた。
怪しい者では無さそうだ。
なにか下心があるなら、隠れるとかしそうだけど、堂々と歩いてくる。
「なんだこりゃあ?」
それは、3人組みの冒険者だった。
初めて見る人だけど、冒険者らしい格好をしている。
「冒険者の方ですか?」
僕が代表して話を聞く。
「そうだが坊主は?」
「僕がこの火龍の狩り場の領主です」
「おっと、坊主……じゃなかった、貴男が噂の領主様でしたか」
ちょっと軽そうな男は、少しだけかしこまる。
腰の両脇に剣を差していた。
二刀流の剣士なのかな?
「まだ冒険者ギルドはありませんが、なにか御用ですか?」
「その冒険者ギルドが今晩から少しずつ来ます、我々はその先触れです」
おっと、トグサの冒険者ギルドの準備ができたみたいだ。
思っていたよりも早かったな。
一月くらいかかるのかと思っていた。
「わかりました、では、ギルドを案内します」
「頼みます、それにしてもこんな集落ができてるとはねぇ」
区画整理された家並みを見て感心している。
「ちょっと事情がありまして、冒険者の方も50名ちょっと居ますよ」
「50人!? そんなにいるのか!?」
驚くのも当然だろう。
これから冒険者ギルドを作りに来ているのに、すでに50人も冒険者がいるのだから。
「それでも、情報のないダンジョンに潜るには不足していると聞きました」
今日、探索を始めたみたいだけど、苦戦しているようだった。
死人は出ていないけれども、怪我人が結構出ている。
「まぁ、平均的な冒険者が50人じゃあ足りないだろうが、まいったな」
冒険者ギルドは街の中央にある。
道を歩いて、案内した。
「おっと、酒場まであるのか」
「火龍を刺激したくないので、明かりは最低限ですよ」
「明かりなんていい、旨い酒があれば十分だ」
僕が出す地球のお酒は好評で、このままではアルコールにクリエイトを使い潰されてしまいそうだった。
「ここが冒険者ギルドです」
「トグサの冒険者ギルドにそっくりね」
後ろにいる魔法使いっぽいお姉さんがそう言った。
「はい、真似をして作りました」
「作るたって、まだ何日も経ってないだろ」
その辺の説明はしないでおく。
いずれ知られるだろうけど、面倒だ。
「中にどうぞ」
全員で冒険者ギルドの中に入った。
中には、冒険者のまとめ役をしてくれているエリックさんがいる。
「エリックさん、トグサの冒険者ギルドの方が来ました」
「おっと、早かったな」
エリックさんが、ここの冒険者で一番のレベル、経験をもっていた。
多少揉めたけど、みんなエリックさんがリーダーということで納得している。
「彼が現状、冒険者のリーダーをしているエリックさんです」
「いや、俺たちはただの先触れだから紹介してくれなくても良いぜ、ギルド職員や腕利きは順次来る予定だからな」
「ほー、腕利きかい」
「ああ、新しいダンジョンなんて聞いて黙ってられないような方がたさ」
「それは頼もしい、俺たちは一層目の情報を集めるのも四苦八苦してたからな」
「賢明だと思うぜ、何があるかわからねえ、安全に行かないとな」
もう時間も遅いから、つづきは明日にしてもらおう。
冒険者の人も疲れているだろう。
「兵士の方に話は通しておきます、今日はお疲れでしょうから適当に休んでください」
「いや、もう今晩から続々と来る、少し待ってりゃギルド長も来るぜ」
「え? ギルド長が来るんですか?」
あの心配性なギルマスが自ら来るとは。
いや、心配性だから自分で確かめたかったのかな?
「火龍の狩り場のギルド長を置いたらすぐに帰ると思いますけどね」
「そうなんですか」
「三人ずつに別れて来るから、ちょっと待っててくださいや」
「では、待ちましょう」
酒場に特別に出前を注文して、軽食と飲み物を持ってきてもらった。
すると、一時間ほどで次の三人が来る。
どうやら、一時間ずつずらしてくるつもりのようだ。
「領主様」
その人には見覚えがあった。
「ギルド長ですね、お久しぶりです」
「さすがは火龍の狩り場、魑魅魍魎がわんさと沸いておりました」
ギルド長ともなれば、冒険の場数を踏んでいるだろう。
多少のモンスターくらいは問題無さそうだ。
「夜は火龍が寝ているから良いんですが、その代わりに精霊やバンシーなどが徘徊するようですね」
「困ったものですが、かまいません」
そこで、隣の体格のいい女性が咳払いをした。
早く紹介しろという感じか。
「紹介が遅れました、これが、火龍の狩り場のギルド長、サブリナです」
「領主様、お初にお目にかかります、火龍の狩り場のギルド長を努めさせて頂きますサブリナです」
30代くらいの女性だ、ギルド長と言うには若い。
まだまだ現役で冒険者をしていそうな感じなのに。
「ちょっと前まで冒険者をしてたんですが、引退したんで、丁度いいと」
「はい、よろしくお願いします」
「領主のオーウェルです、こちらは騎士団長のクラリス、僕の補佐をしてもらっています」
「クラリスです、よろしくお願いします」
「クラリス? 騎士団長って……あのクラリスか!?」
サブリナさんが驚いている。
クラリスは年齢不詳だけど、さすがにサブリナさんよりは若いだろう。
「有名なの?」
「自分ではわかりません」
「おっと、サブリナ? 黒豹のサブリナか?」
エリックさんが話に混ざってくる。
サブリナさんも有名らしい。
「あら嬉しいね、そんな名前で呼んでくれる男が居るなんて」
「有名なんですか?」
「リュクルゴスのダンジョンを制覇したパーティーのリーダーです」
よく知らないけど、凄腕なのは間違いなさそうだ。
「ダンジョンにはお詳しいのですね」
「お任せ下さい」
そこで、サブリナさんがエリックさんの焼き印に気が付く。
ちょっと変な顔をした。
「あんた奴隷かい?」
「ああ、色々あってな、今は領主様の雇われさ」
そこでトグサのギルド長が咎めるような声を出す。
「領主様、奴隷を集めたのですか?」
「これには少し事情がありまして……」
僕は、海王族とのことを説明していく。
「俺たちは助かったがな」
エリックさんが肩をすくめた。
「なるほど、そういうことでしたか、それなら契約魔術師を呼びましょう」
「お願いします」
僕も、早く奴隷から解放してあげたい。
その後のことは、また別の問題だ。
「まぁ、地元に帰ったら借金漬けだから、ここに隠れてるしかないんだけどな」
そういう事情の人も多い。
それならここにいてくれて良かった。
「領主様、この子が受付のまとめ役、キティです」
「キティです、よろしくお願いします」
トグサのギルドで受付をしていた人だ。
やっぱり給金が良かったりするんだろうか。
好きこのんで火龍の狩り場には来ないだろう。
「これからどんどん来るんだろう? 今日は歓迎会か?」
エリックさんがお酒を飲むジェスチャーをする。
「歓迎会は明日にしてくれ、火龍の狩り場で生きた心地がしてないんだ」
サブリナさんが殊勝なことを言う。
火龍なんて素手で絞め殺せそうな感じなのに。
「じゃあ、俺らは酒場に行くぜ」
最初に来た3人組みとエリックさんが酒場に向かう。
「オーウェル様、私達は休みましょう」
「お任せしても良いですか?」
「私は、全員が到着したら今夜のうちに帰りますので」
「そうなんですか」
トグサのギルド長も忙しいんだろう。
サブリナさんが頼もしいということもありそうだけど。
「じゃあ、あとは任せてください」
サブリナさんにあとを託して、僕は家に帰った。
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