第二十三話 それぞれの役割
武具職人の家に行くと、カーンカーンと鉄を叩いている音が聞こえた。
早速、仕事をしているようだ。
「もしもし、領主です。お話を伺いに来ました」
扉を叩くと、女性が姿を現す。
「これは領主様、お上がりください」
家を造るときに、工房も注文されて造っていた。
職人は、炉の前に座って短い刃物らしき物を叩いている。
炉には火が入っていて、結構熱い。
「領主様、良くおいでくださいました。これだけの施設ありがとうございます」
「炉にくべる木炭や薪が無くなったら教えてください」
「ありがとうございます」
薪を取りに行こうにも、草原に木は生えてない。
ましてや木炭なんて作っているはずもなく、僕が出すしかなかった。
「領主様は9歳とのことですが、とてもそうは思えないです」
中身は違うから、子供っぽくないみたいだ。
子供っぽくて、いいことはないだろうからいいんだけど。
「今は何を作っているのですか?」
「とりあえず、刃物を作っております。裁縫や料理にも刃物は使うと思いますので」
「なるほど、冒険者の方がたくさんいるので、その修理なんかにかかりきりになるかもしれません、今のうちに包丁やハサミなんかは作っておいてもらいたいです」
「できるところから始めます」
「お願いします」
部屋には奥さんと子供がいる。
ちょっと怯えているようだけど、奴隷になっていたから、酷い目にもあったんだろう。
「奥方様ですか?」
「は、はい」
「読み書きはできますか?」
意外なことを聞かれたのか、少し戸惑ったようだけど、コクリと頷く。
「一応の読み書きと計算はできます……」
「庁舎で事務員を募集すると思いますので、興味があったら話だけでも聞いてくれませんか」
「わかりました」
少しホッとしている。
無茶な事を言われると思ったんだろうか。
子供は7~8歳くらいか。
奴隷なんて過酷な環境にいたからか、怯えている。
こんな子を戦場に連れて行く気だったのか……。
僕は、飴をクリエイトすると子供に渡した。
「甘い物だよ」
「まぁ、すみません。ほら、お礼を言いなさい」
「…………」
包み紙に包まれた飴だから、どうすればいいのかわからないのかな。
僕は、もう一個作って食べてみせる。
子供は、それを真似して飴を口に入れた。
「おいしい!」
喜んでいる。
怯えも少し収まったみたいだ。
「今日は特別だからね」
「お兄ちゃんありがとう!」
「こら、領主様だぞ」
「領主のお兄ちゃんありがとう!」
武具職人のところは何となくわかった。
つづいて、なめし革の職人、農耕機具の職人、木工職人、裁縫を行う家族などに話を聞いて回った。
足りてないところはないみたいだ。
農耕機具なんかは、精霊族が喜ぶだろう。
色々不足はあると思うけど、今はこれで回していくしかない。
「…………」
戦力を整えて王を討つ。
果てしなく遠い目標に思えるけれども、チャンスは巡ってくるはずだ。
クラリスには、是非協力して欲しいけど、どうやって説得しようか。
そんなことを考えながら教会に行くと、ふたりで掃除をしていた。
「まぁ、領主様」
年かさの女性が司祭で、若い子が見習いらしい。
もっと人が居たらしいんだけど、離ればなれになったそうだ。
「ここは豊穣の女神の教会ですよね」
「さようでございます」
今朝方、女神の神座をクリエイトしたから知っている。
王都の神殿でしか見たことがないから、同じ物になってしまった。
「豊穣の女神の神座があることで、この地域一帯に豊穣の加護が渡ります」
おお、すごい。
そんな効果もあるのか。
神座とは、教会のご本尊みたいなものだ。
「信仰は、心のよりどころとなります、メンタル面で皆様のお役に立てれば」
「治癒魔法は使えないのですか?」
「私は奴隷になってから魔法の力を喪失してしまったのです」
詳しい話は聞かない方がいいだろう。
辛いことを思い出させるだけだ。
「この子は?」
16歳くらいの見習いの女の子だ。
「彼女は、まだ初級の術しか扱えません」
「簡単な治癒ならできますよ!」
「じゃあ、今後に期待だね」
「お任せ下さい! すぐにどんな怪我でも病気でも治せるようになりますから!」
元気な子みたいだ。
メンタルを癒すなら、こういう子もいいだろう。
「教会の仕事をこなしていく度に、治癒術の練度が上がっていきます。みなさまに教会をご利用してもらうよう話をして頂けませんか?」
「わかりました。ですが、薬剤師もおりますので、あまり無理をされないように」
「ありがとうございます」
「それでは、何かあったら村長か騎士団のところまで相談にきてください」
僕は教会を出ると、隣にある薬剤師の店に行く。
中に入ると、神経質そうな獣人族の細い男がお湯を沸かしていた。
なにか薬を作るのかな。
「領主様ですか、どうぞ」
「教会に治癒術士がひとりいるようですが、まだ新米らしいので、怪我や病気に効くポーションを手厚く作ってもらいたいです」
「火龍の狩り場ならば、エリクサーの材料もきっとある!」
ヒッ!
突然、薬剤師の男が声を上げた。
「そうでしょう、領主様!」
「え、エリクサーですか……?」
万能の霊薬だ。
どうやって作るのか僕は知らないし、多分、クリエイトもできないと思う。
「私が奴隷に身をやつしたのも、全てこのための神の導きだったに違いないのです!」
「それもいいんですが、ポーションも……」
結構、思い込んだら一直線の人みたいだ。
科学者とかにいそうなタイプだな。
「ああ、ポーションなら作っておきましたよ」
薬剤師の男が、大量のポーションを見せてくれる。
「もうこんなに作ったのですか!?」
クラリスが中身を確認する。
「これは……かなりの質です。騎士団にも卸して頂ければ」
どうやらただの変な人ではなく、凄腕みたいだ。
「ポーションなんて遊びです、エリクサーこそが……ふっふっふ……」
「まあ、よろしくお願いします」
僕は、そっと薬剤師の店を出た。
そして、また隣にある錬金術士の店に行く。
この店は少し特殊で、塔の形をしていた。
錬金術士たっての願いでこうなっている。
「ごめんください、領主です」
「まぁ、領主様、ようこそおいでくださいました!」
二十歳くらいのエルフの女性で、三つ編みに髪を結っていた。
視力が低いみたいで、僕を覗き込んでくる。
眼鏡は、奴隷になったときに取りあげられたらしい。
「錬金術というのは、何をしますか?」
正直、あまりよく知らない。
家電製品的な物を作っていると聞いたことがあるけれども……。
「生活の質を上げる物を作ります」
「例えばどんな物ですか?」
「今、大きな都で流行っている冷蔵庫なんかも作れます!」
冷蔵庫!
冷蔵庫があれば、食糧事情が大分変わるんじゃないだろうか。
「若いのに立派ですね」
「いやぁ、ライセンスがないんですが、火龍の狩り場まで確認に来る人は居ませんよね、グフフ」
奴隷になったのは、この辺に理由がありそうだ。
特許侵害で借金を背負ったとか、そんな感じかな?
「ここなら、どんな商品も思いのままに作れますよ!」
「ライセンスは取らないと違法では?」
「今は緊急事態ですから! 領主様もわかってくれますよね?」
まぁ、いいか。
今は、確かに緊急事態だ。
冒険者ギルドが来たら色々拙いかも知れないけど、そのときに考えよう。
「お手柔らかに頼みますよ」
「はーい」
外に出ると、少し伸びをする。
「これで、一通り回りました、後は囚人ですがオーウェル様が行く必要はないかと」
「看守は兵士がしているの?」
「はい、交代で行います。逃げだそうにも、火龍の狩り場ではどこにも行けませんが」
ひとりで歩くなら、火龍に襲われ難いだろうけど、囚人はそんなこと知らない。
黙っておいた方がいいだろう。
すると、男がひとり、黙って草原を見つめていた。
見つめる先にいるのは、馬の群れだ。
何度か見た光景だけど……。
「どうしましたか?」
「領主様、あれは火の馬です」
「火の馬?」
「こんなところに生息していたなんて……今は北方の帝国が火の馬を独占していますが、家畜化できれば凄いことですよ」
馬の家畜化!
その話は棚上げになっていたけど、もしかして……。
「あなたはできるのですか?」
「牧場で20年ほど働いていました、家畜化はやったことがないですが、試させて頂ければ」
馬は戦力になる。
移動や輸送にも使えるし、必要なものだ。
「わかった、投資をしましょう、あなたに一月ずつ資金を提供します、それで成果を出してみて下さい」
「おお、ありがとうございます」
新しく領民になった400人は、中々頼もしかった。
自業自得で奴隷になった者もいそうだけど、ちゃんと平均値くらいには働いてくれそうだ。
精霊族も魔法戦力として当てになるし、思いの外上手くいっていることに、僕は満足していた。
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