第十七話 400人の奴隷
奴隷は、基本的には犯罪者や借金の肩代わりになるものだ。
みんな奴隷になってやさぐれているのか、目つきは良くない。
「400人の犯罪者は困るよ」
「みなさん、ここでは犯罪行為は厳禁です」
契約の古文書を持ったクラリスがそういうと、みんなビクッとした。
主の命令として、呪いに干渉したんだろう。
奴隷は逆らえない。
悲しいことだけど、犯罪者なら仕方が無かった。
全員、身分証のプレートを首から提げているので、犯罪歴はわかりそうだ。
「契約の古文書に、名前と罪歴があります」
「そうなんだ、凶悪な感じ?」
「犯罪者が296人、借金が104人ですね」
でも、借金も犯罪歴も正直あてにならない。
奴隷商に誘拐された人だって居るだろう。
犯罪も借金も、後でねつ造するやからがいるのだ。
「ここにいると、火龍に襲われて死にます、一旦避難しましょう」
「火龍に殺されるのも戦争に連れて行かれるのも一緒だ」
「もういっそ殺してくれたらいい」
やさぐれている。
皆、生きる気力がない。
「僕は、皆さんを解放します」
「…………」
400人が、顔を見合わせている。
子供が何を言っているんだという顔だ。
「しかし、契約の古文書の解除には契約魔術師が必要です」
「ここは火龍の狩り場という非常に危険な土地ですので、契約魔術師を呼ぶまで時間がかかるでしょう」
「しかし、僕は皆さんを解放すると約束します」
ザワザワとし始める。
知り合い同士で奴隷になった人も多そうだ。
「い、いつですか、いつ契約魔術師を呼ぶんですか?」
ちょっと生まれの良さそうな顔つきをした人がそう言う。
ちょっと太めの、荒仕事には向かなそうな身体付きの人だ。
タップすると、政治家とあった。
政争に負けて奴隷になったのかな。
「まず、来てくれる契約魔術師を探さなくてはなりません、どれくらい時間がかかるのかはわかりません」
「いいぜ、火龍が来るんだろ? さっさと避難させてくれ」
タップすると、冒険者とあった。
借金だろうか? 仲間らしき5人で固まっている。
「では、岩場まで歩いてください」
食事もろくに取れていなかったのか、足取りは重い。
顔は疲れ切っていて、涙を流す体力も無さそうだった。
「クリエイト」
岩場までたどり着くと、そこに天井まで覆い尽くすような岩場をクリエイトした。
ちょっとした洞窟みたいな感じだ。
火龍が上から見ても、ただの岩場にしか見えないだろう。
「おお、なんだこれは」
「すごい、どんな魔術なんだ」
「夜になるまで、ここで火龍をやり過ごします。中に入ってください」
僕とクラリスが洞窟の中に入っていくと、みんな後に着いてきた。
400人が入っても、悠々とした広さだ。
「オーウェル様、ちょっとよろしいでしょうか」
「どうしたの?」
「契約された奴隷とは言え、これだけ数が居ると、管理するために自警団が必要です」
自警団か。
それをこの人達自身にやってもらうわけだな。
「うん、頼むよ」
クラリスは、400人に向かって声を張り上げる。
「この中に戦える者はいますか?」
ぽつりぽつりと手が上がり、最終的には半分くらいの人が手を上げていた。
ざっと200人か。
さすが、傭兵団に売られる予定だっただけはある。
「結構です、手を下ろしてください」
思ったよりも多かったのか、クラリスが戸惑っていた。
200人が蜂起したら、とんでもないことになる。
「この領地では自警団を募集しています、衛兵のようなものですね、志願したい者はいますか?」
「火龍の狩り場で衛兵じゃと?」
タップすると学者とあった。
400人の中では一番の年かさに見える。
「領地でダンジョンが発見されたので、近々冒険者ギルドができます」
「火龍の狩り場にギルド?」
学者がおかしそうに笑っている。
この人も変わり者っぽいから、マッドサイエンティストか、派閥から追放されたみたいな感じだろう。
「人が増えるに従い、そういう機能も必要なのです」
「他に、どんな仕事があるのですかな?」
働き盛りの中年くらいの男性がそう言う。
タップすると職人とあった。
家族だろうか、隣りに奥さんらしき人と子供がいる。
「今までみなさんがしてこられた仕事を用意できればと思っております」
今、急に、400人を預かったから、全く考えていなかった。
想定していなかった事態だ。
「まだ、何もない領土なので、どんな仕事でも歓迎です。まぁ、犯罪は禁止ですけどね」
そこで手を上げた人がいた。
丈夫そうな身体付きで、目に力がある。
いかにも仕事ができそうな感じに見えた。
「俺たちは兵士をしていた、戦争で捕虜になって売り飛ばされたが、使ってくれるならありがたい」
タップすると騎士とあった。
仲間が20人程いそうだ。
なんか、他に忠誠を誓っているなら扱いにくいかな?
「貴男は騎士ですよね、振る舞いや言動でわかります、祖国に忠誠を誓ってはいないのですか?」
騎士の人は驚いた顔で僕を見る。
一目で見抜いたのかとか、そんな驚きだ。
「もう滅びました、今更帰る家もありません」
しかし、その言葉には力があった。
何かを決意したような目をしている。
「クラリス、君が騎士団長になってくれるかい?」
「わたしは、副団長までしか経験がありません」
そういえば、副団長をしていたと聞いた覚えがある。
「貴男のお名前は?」
「オニールです」
「役職はありましたか?」
「第三騎士団の団長をしておりました」
おお、騎士団長。
第三というのが良くわからないけど、大きな国だったのかな。
「ではクラリスを騎士団長とするから、オニールさんはその補佐をして欲しいです」
「わかりました」
「では、騎士の方はこちらへ」
僕は、こっちに来る人の首から提げているプレートを確認する。
全員、犯罪者だ。
戦争で捕虜になった人は罪人になるのか。
罪状は、国家反逆罪とあった。
それ以外の罪歴はない。
僕は、アルスノヴァの鎧と盾と剣を出す。
「おおお……」
僕が、何もないところから武具を出したので、みんな驚いている。
「オーウェル様、厚手の服を出してください。鎧と身体が擦れるので」
「そうなのか、サイズが違ったら言ってくれ」
騎士と名乗った人が、鎧を着て帯剣する。
さすが元騎士なだけあって、様になっていた。
「剣や鎧まで出せるのですか」
「王族の祈りで得た力です」
そこでオニールさんが僕をジッと見る。
「祈り、アルスノヴァ王国の領土ですか」
アルスノヴァは、王族の祈りで有名だ。
国も大いに発展しているけれど、それだけに狙われている国でもあった。
「火龍の狩り場を知りませんでしたか?」
「もっとずっと遠いところから運ばれてきました」
そうなのか。
なんにせよ、これがアマルガンに復讐を果たすための戦力の第二歩だった。
第一歩目は精霊族だ。
しかも、都合の良いことにアルスノヴァに忠誠心はない、僕の騎士団だ。
意外なところから舞い込んだ戦力に、僕は少しだけ高揚していた。
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