第十六話 難破した帆船
【入植8日目】
トグサの街で買ってきた最新の衣服を真似て、精霊族の職人が生地から服を作っている。
生地は買ってきたので、予定通りだ。
料理にも色々な調味料が使われるようになって、みんなのやる気も上がっていた。
畑仕事に森で採取、狩り、火龍の狩り場の情報収集など、仕事がいっぱいだ。
「大変です!」
馬に慣れた精霊族が、昼間に巡回をしているんだけど、血相を変えて森に戻ってきた。
「どうしましたか!?」
まさか湖に火龍が現れたんじゃないよね。
根底から、色々と覆ってしまう。
「南の海岸に難破船です、海王族が50人ほどいました!」
50人!
50人はまずい、火龍に見つかってしまう。
僕はすぐに、クラリスと南の海岸に向かった。
海の種族、海王族。
半漁人のような見た目だけど、知能も高く人間に友好的だ。
商売が好きで、モンスターの出る海で海運を担っている。
モンスターが出ると、船から飛び出して海の中で戦えるのが強みだ。
南の海岸に到着すると、焼け焦げた船が海にたゆたっていた。
火龍の姿は……ない。
僕は、ここでセーブをしておく。
海王族が集まって、海岸で何か話をしていた。
海に潜って船に行ったり来たり、忙しそうだ。
でも、事情を聞かなくちゃいけない。
「みなさん、僕がこの地の領主です、何がありましたか」
「リョウシュ、リョウシュだ」
「船長を呼んでこい」
すると、船長だろうか、豪華な服を身に纏ったものが出て来た。
「僕はこの地の領主、オーウェルです、どうされましたか?」
「船が火龍に襲われた、陸路で帰ることはできない、ここで船を直したい」
「火龍はどうしたのですか?」
「ひとしきり船を壊すと、満足して飛び去った」
まずいな、そのときは船に人が乗っていたから目立たなかったけど、こうして海岸に何十人もいると、また襲いに来るんじゃないか。
「ここは火龍の狩り場です、船を直す時間はありません」
「やはりそうか」
海王族の間でどよめきが起こる。
確か、海王族は陸で三日くらいしかいられなかったはずだ。
船を捨てて、馬で移動というわけにもいかない。
「静まれ、静まるのだ!」
船長らしき海王族が声を上げると、みんな黙る。
統率は取れているようだ。
「領主様、アナタ達はこの地に住んでいるのだろう?」
「火龍に見つからないように、隠れて住んでいます」
「ここは襲われるか?」
「恐らく」
またどよめきが起こるが、船長は止めなかった。
「だが、船を直すより他に手はない」
間に合うか、火龍の機嫌次第だけど……。
「我らは陸では3日ほどしか生活できない、歩いて帰るのは無理なのだ」
海岸線を海に浸かりながら帰るとか……すごい時間がかかるんだろう。
実質無理なくらい。
「僕は、物を作り出す力があります、それで壊れた部分を修理しましょう」
「おお、ありがたい」
「ありがたい!」
「リョウシュさま!」
「領主様!」
船は座礁しておらず、壊れている感じだ。
航行不能ということだろう。
「船まで石橋を造ります」
僕はクリエイトで堤防のような石橋を造った。
「おおおおっ、奇跡だ」
「こんなすごい魔法を見たことがないぞ」
結構大きな帆船で、マストが燃え落ちている。
これが致命傷なのかな。
石橋から船に乗り移り、マストの近くに行く。
「マストが燃やされた、これをまず直して欲しい」
僕は、倒れているマストを横目に、直立したマストをクリエイトした。
「素晴らしい!」
「すみません、細かいところは色々おかしいかも知れません」
「大丈夫だ、風を受ける帆があればなんとかなる」
他にも、穴の空いている船体や壊れた大砲を直す。
いつ火龍が来るかわからないので、こまめにセーブをした。
細かな注文を受けて船を直していると、一時間ほどでおおよその修理が終わる。
「奇跡だ、修理に一月はかかる損傷だったのに」
「すごい、領主様!」
「領主様!」
「オーウェル様、火龍です!!」
クラリスの声に北の方を見ると、怒っているのか猛スピードで飛んでくる火龍の姿が見えた。
壊したと思っていた船から、わらわらと人が出て来たから怒っているのか?
やっぱり火龍は、実際に見なくても侵入者がわかるサーチ能力がありそうだった。
「また来たぞ! 火龍だ!」
船員達が慌て出す。
「間に合わん、これまでか」
船長が悔しそうにしている。
「口外は無用に願いますよ?」
「口外?」
辺りには船長とクラリスしかない。
今だ。
「ロード」
「…………」
あれ程騒いでいた船員達が落ち着き払っている。
それはそうだ、三十分から前に移動したんだから。
こまめにセーブしていたので、大砲を直すところに戻っている。
「なんだ? 火龍が居ない」
「時間を巻き戻しました、祈りを捧げます」
僕は、少し多めに祈りを捧げる。
これで、火龍の動きが変わってくれればいいけど……。
「時間を巻き戻す!?」
「口外は無用に願いますよ」
「時間を戻す! なんとすごい!」
船長は信じがたいというように辺りを見回している。
「大砲を直す時間はありません、すぐに出港できますか?」
「わかった、近くの港までならギリギリ航行できるだろう」
「では、航海の無事を祈っています」
「礼は必ずする。だが、前払いだ、荷物を置いていくから使ってくれ」
「荷物?」
なんだろう。
高価な物だったらラッキーだけど、運べないかも知れない。
船長が、荷物だと言って下ろしてきたのは……人間だった。
「人間!? 奴隷ですか!?」
この海王族は奴隷商だったのか。
なんだか胸の辺りがもやもやする。
あまり見たく無かった光景だ。
若い人中心に、種族も男女も色々いる。
「我々も、こんな胸くそ悪い商売はしたくなかった」
「奴隷商ではないのですか?」
「真っ当な海王族に奴隷商などいない」
そうなのか。
「奴隷なんて運んでいるから海の神が怒ってナンパした」
火龍のせいなのに、海の神様はとばっちりだ。
「奴隷は置いていく、好きにして欲しい」
「いや、すごい数ですよ? 置いていくと言われても」
「400人いる。これが契約の古文書だ」
400人分の血判が押されている。
「400人分まとめてこれ一枚ですか?」
「そうだ、400人を傭兵団が買う予定だった」
傭兵団ということは、戦争に駆り出されるわけだったのか。
契約の古文書があると、奴隷は逃げることもできない。
古文書から遠く離れると、刻印された焼き跡に呪いがかけられていて、死んでしまう。
「いや、やっぱり待ってください、ここは火龍の狩り場ですよ? 困ります」
「帰りにまた難破したら困る。受け取らないなら海に捨てる」
怖いことを言う。
船と船員の命を守るために、船長も必死なのはわかるけど……。
「クラリスはどう思う? 湖で暮らせるかな?」
「海に捨てられるのを見過ごすことはできません、やるしかないかと」
「そうだよね……」
「それでは、火龍が来る前に出港する、必ず礼に来るから待っていて欲しい」
「僕たちは、川を上った先の湖の周りで暮らしています、そこには火龍は来ないので、来られたら来て欲しいです」
「了解した」
「できれば、商人として定期的に来て欲しいです」
「いいだろう」
奴隷400人が石橋を渡って海岸に移動すると、船は出航した。
*
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