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幼すぎる領主様 ~領地が火龍の狩り場はキツいです~  作者: 夕綺柳


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第十五話 ネガティブなギルマス


「このような辺境の冒険者ギルドにお越し下さいまして、恐悦至極です」


 受付嬢は焦っていたけれども、目の前の男は落ち着いている。


 やせ形の中年男だったが、どこか油断のならない感じがした。


 服はくたびれていて汚れも目立つが、マジックアイテムっぽい装飾だ。


 まぁ、海千山千のギルドマスターなんだから、僕の駆け引きなんて通じないだろう。


 思っていることを正直に話す。


「ダンジョンの登録と、火龍の狩り場の特産品であるミスリルを売りに来ました」


「なんと、ミスリル?」


 ギルドマスターが目を光らせる。


 鉱山で生計を立てている街だから、そういうのに敏感なんだろう。


 クラリスが、持ってきたミスリルをテーブルに置く。


「失礼」


 ギルドマスターがミスリルを手にとって確かめた。


 そして、大きなため息をつく。


「本物ですね、そんなにたくさん採れるのですか?」


「どうしてため息なんですか?」


 聞かれていることと、違うことを答える。


 すると、ギルドマスターはぽつりぽつりと話し始めた。


「ミスリルなんて、この国で採れるところはありません。そして、第三王子のオーウェル様がダンジョンの登録に来た」


「はい、そうですが……」


「死ぬんですよ、冒険者が。何人も」


 意外な答えだった。


 確かにそうかも知れないけど……。


「ダンジョンの登録が嫌なのですか?」


「いえ、心が躍ります。冒険者で未踏掘のダンジョンにときめかない奴なんていないでしょう」


「それなら……」


「だからこそ、止めることもできないですし、死ぬことがわかっていても送り出さなくちゃいけません」


「…………」


 仲間思いなんだな。


 ちょっと当てが外れた感じはあるけど、どうしよう。


「やめますか?」


「いえ、是非やらせてください。愚痴を言ってすみませんでした。冒険者ひとりが栄光を掴むために、冒険者ひとりの命がいるのは常識です。ただ、火龍の狩り場のダンジョンとなるとレベルが違うでしょう。慎重にやらせて頂ければ」


「ダンジョンには入っていないので、ミスリルが採れるとかはわかりません」


「ミスリルは火山ですかね? 命がいくつあっても足りない」


 森で採れることは言わないでおこう。


 精霊族の命にも関わることだし。


 どうしてもというなら、クリエイトで出せば無限だろうけど、それじゃ僕の身が持たなかった。


「まだ本格的に採掘しているわけではないので、あまり数は無いと思ってください」


「いえ、これだけあれば十分です、アルスノヴァで生産されるミスリル製の武具、一年分に相当するでしょう」


 そんなにか。


 ギルドマスターはミスリルをテーブルに置く。


「しかし、返す返すも火龍の狩り場という場所が拙い」


 今度はビジネスっぽい感じのネガティブさで話し始めた。


 この人はネガティブなんだな。


 良いことよりも悪いことの方が気になるんだ。


「ギルドの建物を建てるだけで一苦労です」


「ああ、建物に関しては、こちらで負担しますよ」


「火龍には襲われないのですか?」


「ダンジョンの周りには火龍が来ないことを確認しています」


「なんと、それは本当ですか?」


 少し明るい声になる。


 この人を満面の笑みにさせたい……とは思わないけど、乗り気になってくれたようで良かった。


「というかですね、火龍の狩り場に来ている冒険者の方にその情報を聞きましたが」


「火龍の狩り場に冒険者? 知っているか?」


 ギルドマスターが受付さんに聞く。


「いえ、火龍の狩り場に行っている冒険者には心当たりがありません」


「もうふたりお会いしましたけど」


 ギルドマスターは、ちょっと考え込む。


「火龍の狩り場に一番近いギルドはここです、遠くから派遣されている可能性はありますが……」


「そうなんですね、中年の男性の方と若い女性でした、それと子供がふたりいるらしいです、家族ですかね?」


「益々わかりません、家族で冒険というのは……行くあてのない犯罪者などが落ち延びた可能性はあります」


「そういう感じではありませんでした、むしろ、装備なども整っている感じでしたが……」


「うーむ、余程の高レベルでしょうか、わかりませんが、一般の冒険者が火龍の狩り場には行けません」


 クラリスが勝てないと言っていたから、高レベルなのは間違いないだろう。


 火龍の討伐とかに来ているならありがたいんだけど。


「ダンジョンは自然環境の厳しい場所にあるのが相場と聞きましたが」


「厳しいという表現では、追いつかない場所です」


「火龍の狩り場は、そこまでですか」


「そこまでです、もう何百年前から火龍が住み着いているのかわかりませんが、人間が足を踏み入れる領域ではないのです」


「我々も何度か襲われましたが、少数で移動していればあまり襲われません」


「火龍に襲われた!?」


 ギルドマスターがびっくりしている。


「あ……」


 口を滑らせたかな。


「まぁ、なんとかなりましたが」


「それはすごい、王族の方ですから高レベルとは思いましたが、まだお若いので」


 祈りを捧げるとレベルが上がる。


 正直、武勇も魔法も才能のない僕には、意味のないものだけど。


「三人くらいで夜に移動すれば、問題ないと思います」


「情報ありがとうございます、少し光明が見えてきました」


 森には精霊族が隠れ住んでいるから、森伝いに移動する方法は伏せておいた方がいいだろう。


「今までのところ、夜は火龍が狩りをしません、ですので比較的安全です」


「火龍も生き物、夜は寝ますか」


「そして、ダンジョンの周りにある湖ですが、ここにも火龍は近寄りません」


「一応の安全はあるということですね」


「はい、今、実験的に湖の周りで牛や豚を育てていますが、襲われることはないですね」


「では、そこにギルドを作るでよろしいでしょうか」


「そうです、建物はこちらで用意しましょう」


 ギルドマスターは、ホッとした顔をしながら薬を飲む。


 なんの薬だろう?


「ああ、失礼、ちょっと胃をやっていましてね、良く効く胃薬です」


「胃薬ですか」


 苦労が絶えないんだろう。


 ストレスとかで胃が荒れているのか。


「私も現役なら、とつい思ってしまいます。これほどのチャンスはそうそう無いですからね」


 ちょっと胃の辺りを押さえながら目を光らせる。


 いや、無理しない方がいいんじゃないかな……。


「やはり、ダンジョンは儲かりますか?」


「金銭的にも名誉としても、ましてや未踏掘のダンジョンともなれば……うまみと命の危険と、天秤にかける冒険者や商人が頭を悩ませるでしょう」


「冒険者の方は、たくさん来るんですか?」


「未踏掘のダンジョンともなれば、レベルの高い冒険者が黙っては居ません。近隣から金持ちの冒険者が集まってきますよ」


 よしよし、税金をどうやって徴収するか考えないといけないな。


「問題は移動ですね、夜ならば襲われないというのも、襲われないと確認できないことですから」


「火龍は夜寝ている、しかし100%ではない、というところですね」


 少人数なら大丈夫だと思うけど、火龍も騎士団とかに襲われて学習しているのかも知れない。


 大人数だと厄介だと。


「食糧なども、提供いただけるのですよね」


「もちろんです、まだアルコールはありませんが」


「ははは、火龍の狩り場で酔える冒険者はいませんよ」


 とは言うけど、将来的には必要だろう、今はクリエイトで出せばいいけど、なんとかしないとな。


「では、火龍の狩り場のダンジョンをギルドで管理させて頂きます。新しいギルドマスターが赴任すると思いますので」


「そうなんですね、お待ちしています」


「ミスリルですが、これも買い取らせてください。これからは定期的に卸して頂けるのですか?」


「そうですね、そうできればと思っております」


 ギルドマスターが天井を仰ぐ。


「火龍の狩り場の開拓ですか、胸が躍ります。私も、あと十年若ければ……」


 フロンティア魂というやつか、冒険者ならそうだろうとも。


「他にも、まだまだ我々の知らない特産品があることでしょう、このトグサの冒険者ギルドが微力ながらお手伝いさせて頂きます」


「そう言って頂けると助かります、ちなみにミスリルは高いですか?」


「非常に高価です。同じ量の宝石よりも何倍も高いとお考えください」


 そんなにか。


 よし、良い特産品になれそうだ。


 とは言っても精霊族は隠れ住むという特性があるから、お金に執着しないんだけどね。


「火龍の狩り場の湖とは、どの辺りにあるのですか?」


「クラリス」


「はい、地図があります」


「おお、火龍狩り場の地図ですか」


 クラリスが手書きの地図を広げる。


「では転写しますがよろしいですか?」


 受付嬢さんが、水晶のような玉を持って地図を覗き見る。


 水晶を通して地図を見る感じだ。


「これは転写球といって、風景などをそのまま絵にできるマジックアイテムです」


 カメラか、便利そうだな。


「どうぞ、写してください」


「ありがとうございます」


「あと、この湖に牛や豚が飼われています、その世話は精霊族の家族に担ってもらっておりますが、大丈夫ですよね?」


「なんと精霊族ですか。珍しい」


「はい、大切な領民ですので」


「精霊族を殺して宝石を奪おうなんて輩は、火龍の狩り場には行きません、それは大丈夫です」


「よかった、僕たちもずっと湖には居ませんので、人員が集まったらその家族に伝えてください」


「わかりました、アルスノヴァ国中のギルドから有志を募ります。しばらくお待ちください」


 声が弾んでいる。


 大仕事の実感がわいてきたのかな?


「ミスリルですが、正確に重さを量りましょう、これからも取引をするのですから、値段も適正なレートを設定させて頂きます」


 そして、ミスリルはそれに何十倍もする金貨と交換された。


 持って帰るのが大変だ。


 翌朝、塩や砂糖などの必需品や作物の種、羊紙皮やペンインクなどの文房具から、最新の衣服など細かな物まで買って帰った。




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