第十四話 トグサの街
【入植5日目】
「オーウェル様、湖の周りが安全なら冒険者ギルドを呼べるかと」
「そうか、ダンジョンの登録だ」
来てくれるかはわからないけど、試してみないとわからない。
もし、火龍の狩り場に冒険者ギルドができてくれれば、発展の足がかりになるだろう。
「行商人でも来てくれるようになると良いのですが」
「それは難しいだろうなぁ」
冒険者なら、ある程度の危険は冒してくれるだろうけど、商人は慎重だと思う。
よほど儲けが出るとかでもない限りは。
「冒険者は、もうふたり会っているんだから、来ないことはないんだよね」
「そうですね、宿泊施設でも作りますか?」
「建物はあっても、管理する人がいないから」
精霊族に接客業は、鬱の人に頑張れと言うくらいタブーだろう。
命のかかったコミュ障だから。
「では、街に行ってみますか?」
「一番近いのは、トグサの街だったよね」
「そうです、冒険者ギルドもあります」
「よし、行ってみよう」
僕たちは、きらきらの森で採れる鉱物を持てるだけ持っていく。
今のところ、交易に使えそうなのは鉱物資源だけだ。
「ラウススさん、二日くらいここを離れすので、よろしくお願いします」
「かしこまりましたじゃ、留守はお任せ下され」
「何か、欲しい物とかありますか? 街にはあまり行けないから」
「ありませんですじゃ」
「そうなの?」
「元々、我らは街と取引をしておりませなんだ」
それはそうなんだけど……薬とか砂糖とか、火龍の狩り場で手に入らない物は買ってこよう。
「じゃあ、適当に見繕ってくるから」
「お任せ致しますじゃ」
僕は馬にまたがる。
「クラリス」
「はい、行きましょう」
「いってらっしゃーい」
子供たちが僕の出発を見送ってくれる。
お土産にお菓子が必要そうだった。
「…………」
夜の森の中を進んでいく。
このまま山岳地帯に出て、そこから火龍の狩り場の入口を目指す。
「上からは見えないような道を作ろうか」
「いいですね、左右に柵があればわかりやすそうです」
夜の森の中は暗くて不気味だ。
道を間違えないようにする必要があった。
「山岳地帯に出ましたね、西に進みます」
「うん」
火龍の姿はない。
やはり、夜は寝ているんだろう。
でも、あまり油断しないように進んでいく。
「この辺りかな」
山岳地帯を抜けると、草原と岩肌の境目のような場所が現れる。
ここが火龍の狩り場の入口だ。
「念のために少し離れよう」
「はい」
馬で10分ほど進んだところで止まる。
そして、そこに家を建てた。
「取り合えず、今日はここで寝よう」
「お茶を煎れますね」
「うん、ありがとう」
お茶を飲んで一晩寝ると、家を残して出発する。
「この家は、これからも街に行くときに必要になるだろうから消さないでおこう」
「はい、出入りするときに、夜まで待つ場所が必要ですからね」
「面倒だよなぁ」
「命がかかっていますから」
早朝の清々しい空気の中、馬で進んでいく。
途中、休憩を挟みながら進み、トグサの街に着いたのは夕方になってからだった。
とりあえず、売る物としてミスリルを持てるだけ持ってきたけど、軽くて価値の高い特産品と言えばこれだろう。
まぁ、まだまだ何もわかっていないから、とんでもないお宝もあるかも知れないけど。
「ミスリルはこの辺では採れないので、価値は高いと思われます」
「でも、加工できる者も少ないだろう? 果たして大量に買い手が付く物なのかどうか」
トグサはあまり大きな街じゃないけど、アルスノヴァ王国の一番南に位置していて、鉱物資源が取れる領地だった。
山に鉱山村があって、採れた鉱物をトグサで換金する。
火龍の住む火山とも繋がっている山脈だけど、火龍がこちらに来ることはまずないそうだった。
「とりあえずギルドかな?」
「そうですね、冒険者ギルドならこの時間でもやっているでしょう」
冒険者ギルドに行くと、割と人が多い感じだった。
この近くにはダンジョンもないが、山にモンスターが出る。
それを狩っているんだろう。
「すみません。ここが受付ですか?」
「はい、こちらが受付となります」
受付のお姉さんが親切に対応してくれる。
僕の身なりが良いからか、露骨に嫌がったりはしない。
「ダンジョンを発見したんですが、登録などはできますか?」
「は? 今何と?」
「ですから、ダンジョンを発見したんです」
するとそこに、少しお酒の入っている大柄な男がやってきた。
「オイオイ坊主、どこの坊ちゃんか知らんが、嘘はよくねえぞ」
ダンジョンは、嘘か。
それだけ希少価値がある証拠とも言える。
「ガルシアさん、まだ子供ですので……」
「ダンジョンなんて、もうとっくに探し尽くしているんだ、この国にダンジョンがあるとしたら、まぁ、火龍の狩り場くらいだろうな」
「そうです、その火龍の狩り場でダンジョンを発見しました」
男の気配が凶悪なものに変わっていく。
暴力を日頃の生業にしている男の、これが素顔だろう。
「おい坊主、冗談じゃすまねえ話なんだぞ?」
「ですから……」
男は、僕の話を遮ってがなり立てた。
「確認に行く冒険者だって命がけだ! 火龍の狩り場なんて人間の踏み込む場所じゃねえ!」
その大声で酒場のあちこちから視線を向けられるようになった。
別に良いんだけど。
「紹介が遅れました、僕はオーウェル・アルスノヴァと申します」
「はぁ? アルスノヴァはこの国の名前だぞ?」
男が意味わからんという具合に首をかしげるが、ギルドの受付嬢は少し慌てて僕の前まで来た。
「ちょ、ちょっと待ってください、アルスノヴァが名字なんですか?」
「はい、これが身分証です」
金でできたプレートを見せる。
身分証には、僕の出自は書いてない。
名前や犯罪歴、褒章などが記されていた。
「聞いたことがあります、第三王子のオーウェル様が……火龍の狩り場の領主になったと」
「な、なんだって?」
「王族である証を見せましょう、祈りよ」
僕は祈りを込める。
すると、ギルドの建物をすり抜けるようにして光が立ち上った。
ギルドの中が、しんと静まりかえる。
「お、王族、本物だ!」
「はい、僕が第三王子のオーウェルです」
「た、大変失礼をいたしました!」
男が這いつくばるように頭を下げる。
僕の身長に合わせるように頭を下げるには、そうするしかないだろう。
「す、すぐにギルド長を呼んで参ります!」
そして僕らはこのギルドの一番良い部屋であろう応接室に通された。
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