第十三話 家畜を飼う
「皆さんの中に、牛や豚を飼っていた方はいませんか?」
森に帰った僕たちは、早速ラウススに話をする。
「おりますじゃ、そんなにたくさん飼育はしておりませなんだが」
「実は、湖の近くが安全だという情報がありまして」
「そうなのですか」
「試しに家畜を飼って、本当に火龍が来ないか検証したいと思うのですが」
「そういうことなら、わたしが行きましょう」
そう言ってくれたのは、昨日一緒に時間を巻き戻ったゴードンさんだった。
「もしものことがあったら、また時間を巻き戻すんですよね?」
「そうです、話が早くて助かります」
「ふむ、ゴードンに任せるぞい」
「お任せください、ラウスス様、領主様のお役に立って見せます」
「では、湖に行きましょう」
ゴードンさんは馬に不慣れだったので、僕の後ろに乗せて走る。
クラリスは、いざとなったら戦うので、身軽な方がいい。
「オーウェル様、あちらを!」
クラリスが指さす方向に、火龍が飛んでいるのが見えた。
悠々と飛んでいる。
こちらには気がついていないようだ。
野生の馬がいるのか、馬が走っていても不思議じゃないんだろう。
「早く湖に行きましょう」
「そうだね、湖が安全だというのはありがたい」
湖に着くと、森からつづく川に橋を作った。
しっかりとした石橋だ。
「森からの川と、海につづく川の間に畜産のエリアを作ろう」
「湖が安全なら、人が住むことができますからね」
精霊族の中にも、湖に住んでもいいと言う人がいるかも知れない。
一万人ともなれば尚更だ。
「では、この辺りに家畜を囲い込むための柵を作ってください」
「どのくらいの広さですか?」
「20平方メートルくらい欲しいです」
うーん、正確な距離はわからないな。
計る物もないし。
「おおよそで良いならわたしが」
「頼むよ」
クラリスは何でも出来るな。
本当に頼もしい。
木の枝で、地面に線を作っていく。
僕は、クラリスの引いた線に沿って柵をクリエイトしていった。
「こんなものかな?」
「ここに豚を十頭飼います」
ふむふむ。
豚を十頭クリエイトするんだな。
「雄雌は?」
「雌が9頭に雄が1頭でお願いします」
「そんな、アンバランスで良いの?」
「雌は繁殖させますが、雄は肉にしますからね、それくらいで大丈夫です」
僕は、柵の中に豚を十頭作り出す。
豚たちは、ふごふごと鼻を鳴らしながら、柵の中を歩き始めた。
「これを十ヶ所作りたいのですが」
「十ヶ所!」
そんなに必要なのか!
「色々と試行錯誤したいので」
「わかったよ……」
こんな感じで、牛と鶏の柵も作った。
全部、柵を作って放し飼いだ。
牛からは牛乳を採れるし、鶏からは卵を採れる。
もちろん肉にもするだろう。
「エサはどうしますか?」
湖の周りには草も多いが、とても足りないだろう。
「もう少し人を呼んで、湖で漁をしてみます」
「魚ですか」
豚は食べそうだけど、牛が魚を食べるのかな?
「豚はそれを食べさせたいですが、牛は干し草やトウモロコシを食べさせたいです」
「やっぱりそうだよね」
「鶏は何を食べるのですか?」
「鶏も、魚の砕いた物を食べさせたいですが、他に穀物や草ですね」
うーん、大変だ。
とりあえず、干し草を大量に出す。
鶏用に、米も出した。
「ありがとうございます、あと、船が欲しいのですが」
さっき話していた漁だろう。
「漁具もですね」
僕は、ちょっと立派な桟橋を造って、そこに船を二艘造った。
「漁具は、網が頂ければ」
「網か……うーん」
どんな網か思い浮かばない。
素材には突っ込まれないことを期待して、ナイロンのテレビで見るような網をクリエイトした。
「丈夫な網ですね、たくさん魚が捕れると思います」
「何枚か作っておきますね」
僕は、網をいくつか作って重ねておく。
「家畜を飼うのは大変だ」
「100人からの食糧ですから、もっと増えると思うと、エサは領主様の魔法ではなく、自分たちで用意できるようになりませんと」
「そうですね」
僕が、王都に呼ばれるなんてこともあるかも知れない。
留守中に、家畜が飢え死にしたなんて意味がないからね。
「いったん、森の人間に飼料のことを伝えたいのですが」
「ゴードンさんも、馬に乗れるように訓練が必要ですかね」
「馬はいなかったもので、申し訳ないです」
と言っても、馬は二頭しかない。
僕とクラリスが乗ったら、後は歩きだ。
「馬も欲しいかな」
「馬なら」
クラリスが指さす先に、野生の馬の群れが走っていた。
「野生の馬を家畜化できないかな?」
ゴードンさんは、無理だという風に首を振った。
「我々にその技術はないですね」
「そうだよね」
専門家を呼んでこないと駄目かな。
「クラリスは?」
「馬のことは一通りわかりますが、野生の馬を畜産化するのはちょっと」
「だよね、街に行くことがあったら本でも買ってこようか」
一頭、二頭ならクリエイトで出してしまうんだけど。
「しかし、肉食動物がいませんね、水飲み場の周りに獲物を狙って来そうなもんですが」
ゴードンさんが不思議そうにしている。
「そうなんですよ、火龍の狩り場に肉食動物が居ないんです、もしくは居ても凄く少数だ」
「こんなに獲物が居るんだから、数が増えそうなモンですけどね」
「何か理由があるのかも知れないね」
「ダンジョンからも、モンスターが出てきてないですし、こちらとしては好都合ですが」
クラリスも不思議がっている。
「ダンジョンがあるんですか? おっかない」
ゴードンさんが少し怖がる。
普通の人にしてみれば、ダンジョンなんて悪いことしかない。
「火龍の縄張りの匂いがしているから、近寄ってこないとかですかね……わかりません」
「そうかも知れないね」
火龍が、肉食動物を狩ったのかな?
そんな知能は無さそうだけど。
「ダンジョンが近くにあるから、モンスターが出てこないか心配だけど、それも実験だ」
「そういえば、安全な湖の周りというのは何メートルくらいなのでしょうか?」
ゴードンさんが聞いてくるけれども、僕たちもわからない。
「動物の動きを見ていると、わかるかも知れませんね」
動物が油断している距離か。
「じゃあ、それは私も見ておきます」
「お願いします」
どのくらいの範囲まで大丈夫なのかはわからないが、とりあえず検証だ。
「じゃあ、馬に乗ってください」
「いえ、魔法で話ができますんで、これを連れて行ってください」
緑色の精霊を渡される。
これで話ができるのか。
「ラウスス様に渡してください」
「わかった、じゃあ一人で不安かも知れないけど、頼むよ」
「お任せください」
ここでセーブしよう。
「安全が確認されたら家族を呼びますんで、そのときに家をお願いします」
「そうか、生活するにも家が必要だね」
僕は、手近な場所に家を造る。
そして、ゴードンさんはラウススさんと話をして、家畜の飼料用の畑を説明してくれた。
僕はそれを聞いて、トウモロコシの畑を拡張し、米の田んぼを森の中に作る。
それから三日間、火龍は湖に来なかった。
ダンジョンからも魔物は出てこない。
ゴードンさんは家族と、手伝いの若い者を呼んで家畜の世話をするようになった。
ちなみに、湖での漁は上手くいっているようだ。
食べられる魚がどれなのか、豚や鶏が好む魚はどれなのか、試行錯誤している。
でも、湖に移り住みたいと言う者はいなかった。
やっぱり、少し不安だろう
。
森に住み慣れているというのもあるか。
まぁ、そこはゴードンさんの話を聞いたりして、徐々に増えていけばいいと考えていた。
【大切なお願い】
もし少しでも、
『ちょっと面白いかな?』
『つづきを読みたい可能性もあるかも?』
『オーウェル頑張れ』
と思って頂けた方は、評価、ブックマークをお願いいたします。
(↓にある☆を押すと評価できます)
励みになりますし嬉しいです。
よろしくお願いいたします!




