チートスキルを授かったけど、無双じゃなくて人助けがしたい
思えば僕の人生は何だったのだろうか。成績はいい方だったけれど、クラスでは常に孤立していた。僕はドジで誰の役にも立てなかったからだ。積極的に手伝おうとはしたけれど。重たい荷物を持つのを手伝おうとしたら、落として鞄の中身をぶちまけてしまったり、道案内をしようとしたら、全く違う方向に案内してしまったことなどだ。
そういったことがきっかけで、僕は次第に役立たずと呼ばれるようになり、誰にも話しかけられなくなってしまった。
そしてつらい気持ちを抱えながらの通学中、僕はトラックにひかれそうになった子供を助けようとした。こうして僕の17年間の人生が終わった。
そんな僕の魂の前に、一人の女神が現れた。
「お気の毒に、あなたは死んでしまいました。ですがこれで終わりではありません。来世ではあなたがもっと輝けるよう、特殊なスキルを与えます。これは、すべてが思い通りにいく、チート級のスキルです。これであなたは世界で最強になれますよ」
そう言われた後のことは、よく覚えていない。
気がつくと、僕は広い草原のような場所にいた。遠くでは、お城のような建物が見える。どうやら僕は異世界に転生したようだ。
何をしたらいいのか分からず、歩いていると、町が見えてきた。僕はすぐ、泣いている少年を見つける。思わず声をかける。
「どうしたの?」
「アイスクリームを落としちゃった……」
よく見ると、少年の足元にはぐちゃぐちゃになったアイスクリームが落ちている。一瞬どうすることもできないと、僕は思っていた。しかしそのとき、女神から言われたスキルを思い出す。
「僕に任せろ。『ラッキークローバー』!」
僕は浮かんだ呪文を唱えてみる。すると落ちていたアイスクリームは宙に浮かび、元通りの状態となる。そして少年の手に握られる。
「わあー、元に戻ったー! お兄ちゃん、ありがとう!」
前世ではお礼を言われることなんて、ほとんどなかった。今こうして人の役に立てた。
僕はこのとき、スキルのことを考える。女神からは、世界で最強になれる、と言われた。しかし僕は、最強になりたいとは思っていない。自分だけが目立って、他の人から妬まれるのは好きではないからだ。
僕がやりたいのは、人助けなんだ。
「よし、もっといろんな人を助けよう」
僕は、他に困っている人がいないか探してみる。見つけると、声をかける。
「重たい荷物ですね。持ちましょうか?」
「おお、ありがとう」
僕は、男性が持っている鞄を一つ持とうとするが、持ち上げるのが難しいくらいに重い。
「ラッキークローバー!」
僕は呪文を唱えてみる。不思議なことに、鞄は軽くなった。
「これで大丈夫ですよ」
「おお、何だこれは! 荷物が軽くなっているではないか!」
鞄を渡すと、男性は目を丸くした。
「ありがとう。これなら安心して運べそうだ」
また一人、人助けができた。僕は男性を見送りながら達成感に気づく。
次は誰を助けようか考えていると、慌てて走っている人たちが僕の方に向かってくる。
「大変だ! お城で火事が発生した!」
人々の言葉を聞いた僕は、彼らに逆らうようにお城へ向かう。
見えてきたお城は、燃え上がる火に包まれていた。周囲には消防隊と思われる人が数人いる。
「くっ、なかなか火が消えねえ……!」
「お姫様がお城にとらわれているというのに……!」
苦戦する消防隊の声が聞こえる。このままだと姫の命が危ない。そう思った僕は、スキルで何とかできないかと思い、呪文を唱える。
「ラッキークローバー!」
少しすると、火はみるみるうちに弱まっていく。それだけでなく、お城は火事になる前の綺麗な状態へと戻っていった。
「いったい何が起こったんだ!?」
と消防隊は困惑する。僕は説明しようと声をかける。
「僕が魔法で火を消したんですよ」
「そうなのか! いやー、助かったよ」
僕が消防隊と会話していると、お城から姫が出てくる。
「おお、お姫様よ、無事だったか!」
「ええ。火が突然消えて、出られるようになったわ。ケガはないから安心して」
「この青年が、火を消してくれたんだよ」
美しい姫が、僕の方を向く。
「あら、ありがとう。あなたは命の恩人ね。お礼に、私と結婚してくださらない?」
「いえ、遠慮します……」
僕は、女性と付き合うことに興味を持てず、断った。
翌日、僕の活躍は国中に知れ渡っていた。道を歩いていたら、突然多くの人に囲まれたのだ。
「昨日は助けてくれてありがとう」
僕はたくさんの人からお礼を言われた。そのときは、嬉しさよりも戸惑いが大きかった。自分だけがこんなチートスキルを持つなんて、いいのだろうか。
僕のスキル、みんなにおすそ分けしたい!
そう思った僕は、チートスキルを発動させる。
「ラッキークローバー!」
すると僕の体が光を放ち、周囲の人々を照らしていく。何が起こったかは分からないが、もしかすると僕のスキルがみんなに付与されたのかもしれない。
それ以来、この国では人助けが文化として栄えるようになった。困っている人を見かけたら、スキルを使う。これによって、困りごとが瞬時に解決できるようになった。
僕はこれからも、たくさんの人たちと助け合いながら、幸せに暮らしていくのだった。




