表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/115

38.どうしてお前がここにいる

扉を開けた瞬間、ルナリアがすぐに駆け寄ってきた。


彼女は何も言わなかった。

ただじっと、シオンの顔を見つめる。


いつも通りの無表情のはずなのに、どこか違って見えた。

目の奥が揺れている。

ほんの少しだけ、震えるように。


(心配、かけちゃったわね)


シオンは微かに笑って、言う。


「……大丈夫」


それだけ告げて階段に向かうと、ルナリアは静かにシオンの後ろを歩く。

振り返ることはしない。

前に進むと、そう決めたから。











階段を降りると、みんながそこにいた。

逃げていない。誰一人。


「まだ逃げてなかったの? 手遅れになっても知らないからね」


強気に言ったつもりだったけど、喉の奥がちょっと詰まりそうになる。

そのせいか、言葉の端が少しだけ震えた。


「そっちこそ、大丈夫なのか?」


カルロが眉をひそめて近づいてくる。

重い剣を背負ったまま、不器用に言葉を探しているその顔を見て、シオンは笑った。

相変わらず優しい。


「平気。大丈夫」

「……そう見えねぇけどな」


そうぼやくノクスに、レイジが小声で「ち、ちょっと!」と静止する。

ヘリオスは真っ直ぐにシオンを見ていた。

何も言わず、けれど少しホッとしたような表情で。


それだけで、少しだけ、胸の奥があたたかくなる。


「さ、時間ないんでしょ。行くわよ」


そう言って、シオンは外へと駆け出す。


冷たい空気が肌に当たる。

少し痛いけど、はっきりと生きている実感があった。


走りながら、ふと、思い出す。


ーージークは言っていた。


『君も知ってる人の力で、今だけ姿を見せられるようになった』……と。


その時は深く考えなかった。

けれど今になって、妙に気になって仕方がない。


誰だったんだろう。

ここに、そんなことができる人なんて……。


(……まさか)


脳裏に浮かびかけた嘘つき男の姿を、すぐに振り払った。


今は、それどころじゃない。


この場所から、みんなを連れて――絶対に、脱出しなきゃ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー






洞窟を抜けると、外の光の眩しさに思わず目を細めた。

本物の、太陽だ。

空気も風も、とても自然で心地良い。


("風の波”を……はっきり感じる。出られたのね、ちゃんと)


流れる風に手を伸ばしながら、シオンは確認するように小さく呟いた。

それでもまだ、頭のぼんやりとした感じは抜けきっていない。


あの空間に長くいたから、影響が残っているのだろうかーー。


そんな事を考えていると、突然岩場の影から声がする。

とても、聞き覚えのある声。


「全員ちゃんと生きてるとはねぇ。ま、ご無事で何より?」


一斉に、その声の主を振り返った。

なんでここにいるんだ……と。

ヘリオスとノクスは一度会っているが、それでも幻ではないかと感じてしまう。


「……何しに来た」


カルロがシオンの前に立ち、ベルナルドを睨んだ。

しかし彼はまったく動じず、横から覗き込むようにシオンを見て言う。


「船長の大事な船、無事だよ。船主様もね」

「えっ……」


その言葉に、シオンが反応した。

向こうの海岸に……までベルナルドが言いかけたところで、シオンは走り出してしまう。

ルナリアとヘリオスが本調子でないシオンを心配して追いかけ、その後ろからシュゼルたちもついていく。


その背中を見て「せっかちだなぁ」と呟くベルナルドを、唯一追いかけなかったカルロが再び睨んだ。


「よく顔が出せたな」


温厚な彼がこんなふうに敵意を剥き出しにする相手など、おそらくベルナルドだけだろう。

この体格の男に見下されるように睨まれれば、かなりの迫力のはずだが、動じることなくベルナルドは言う。


「俺にも色々事情があってね。……ほら、船長を守りに行かなくていいの?」


あくまではっきりしない態度に眉をひそめるが、今はシオンたちを追って船に向かうことにした。


「俺は、お前のことが嫌いだ」

「うん、俺も好きじゃない」


笑って答えるベルナルドに苛立ちを覚えたが、足を止めることはしなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ