……でも、もし本当に戻ってきたら?
ヘリオスとシオンの会話を偶然聞いてしまったノクス。
短めです。
盗み聞きなんか、するつもりじゃ無かった。
ただ、少し気分が治まったから、部屋から出てきただけだってのに。
……本当、タイミング悪ぃ。
シオンとヘリオスの会話を偶然聞いてしまったノクスは、二人に気付かれないよう、静かに踵を返した。
水分が欲しかったが、一晩くらいどうとでもなるだろう。
魔術で出した水は飲めるのか?……と少し疑問に思ったが、今はやめておくことにした。
何となくだが、今はあまり魔力を使いたくない。
バツが悪そうな顔で階段を上り、部屋に入ろうとしたその時、隣の扉が開く。
出てきたのは、カルロだった。
「あれ、起きて大丈夫なのか?」
先程のノクスの様子を見て、心配していたようだ。
実際、今もかなり顔色が悪い。
シュゼルの問いに対しても、まだちゃんと答えられていないくらいだった。
「起きるくらいはな。……それより今、下に降りねぇ方がいいと思うぞ」
話は終わっているようだったが、シオンはあまり人に弱った姿を見せたくないのではないだろうか。
なぜ自分がそんなこと気にかけているのかわからないが、自然と言葉が出た。
「そうなのか?」
「ああ」
不思議そうにしていたが、理由は深く聞かず今は降りないことにしたらしい。
素直で助かる。
そしてそのまま部屋に戻ろうとしたカルロに、もう一度声をかけた。
「……おい」
「ん?」
「もし、仮にあの銀髪野郎が戻ってきたとして……チビ船長がそれを受け入れたら、テメェはどう思う?」
何でこんな質問をしているのか、わからない。
正直、頭はあまり回っていない。
それを聞いたカルロは目を丸くしたが、少し考えた後答えた。
「……色々あり得ない気はするが……船長の決定に、俺は従う」
決めるのはシオンだと。
自分は彼女の判断を支持し、その上で常に守れるよう尽力する。
今までずっとそうしてきたし、これからもそのつもりだ。
ーーだが。
少し間をおいて、目を逸らしながらカルロは言う。
「……ただ、正直に言えば、……すごく嫌だ」
……こんなこと言うなんて、普段の自分じゃない。
思っていても、言わない。
思考が鈍ってるのかもしれない。
それを聞いたノクスは、呆れたような顔で
「普通に嫌だろ」
とだけ言う。
躊躇うまでもない、と。
カルロが驚いた顔をしていたが、それはもう気にせずに部屋に戻った。
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部屋に入ると、珍しくシュゼルが寝ていた。
別に、彼だって寝ないわけではない。
ヘリオスが起きているのに、彼だけ寝ているということに、違和感があるだけだ。
(早く、ここから出ねぇとな……)
簡単に出られるかどうかは、わからないが。
このままでは危険だと、全身の感覚が告げていた。




