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24.軽口で済ませたかったのに

シオンたちがデートに出かけた後の、カルロとベルナルドの会話です。少し短め。

シオンがヘリオスと共に出かけたことを知ったのは、島に着いてしばらくしてからだった。

何か手伝えることがあるか相談するため、シオンを探していたら、レイジから教えてもらった。


(……目立ちたくないなら、確かに俺は不適格だ)


頼られなかったことを残念に思いつつも、仕方ないとカルロは思う。

この見た目はどうにもならないし、別に蔑ろにされたわけじゃないことも、ちゃんとわかっていた。

適材適所で、状況ごとに必要な人間は違う。


そうやって、ちゃんと納得していたのに。


「船長と金髪くん、デート中らしいね」


廊下ですれ違ったベルナルドの言葉に、カルロの足が止まる。

相変わらずの軽薄な笑い方に、やや不快感を顔に出す。


ーーどうにも、こいつだけは前から苦手だ。


カルロはあまり人を嫌う方ではない。

基本が穏やかな性格なので、誰かに対して強い感情はあまり抱かないのである。

生真面目な性格のせいで煙たがられたことはあるが、彼自身がその相手を嫌悪していたわけではない。


それでも。


ベルナルドの見透かすような瞳も、心をかき乱すような言葉も、嘘か本当かわかりにくい態度も。

好感は持てなかった。


「……だから何だ。船長が誰と出かけようと、彼女の自由だろ」


カルロらしくない、素っ気ない態度で答える。

彼がこんな態度をとるのは、おそらくベルナルド相手だけだろう。


そんな彼を見ながら、ベルナルドは可笑しそうに笑いながら言う。


「気になって仕方ないくせに、優等生の返答だねぇ」


わざと煽ってることはわかってる。

誰がどんな態度を取られたら喜び、悲しみ、嫌がるか。

おそらく、全部わかってやっているのだ。


カルロは頭一つ分以上低い位置にあるベルナルドの顔を見下ろし、睨む。

見下ろしているのはこちらなのに、相手の方が優位に見えるのはなぜだろうか。


「……お前こそ、本当は船長のことをどう思ってるんだ」


ふと、口が勝手に開いた。

今、聞こうと思っていたわけじゃない。

ただ、散々こちらを煽ってくるベルナルドの、シオンに対する気持ちが本物なのかはずっと気になっていた。


平然と近寄り、触れ、甘い言葉を囁きながらもどこか掴めない。

遊びや冗談なら、近寄ってほしくなかった。


誰よりも護りたい、大切な人に……


「え?どうってそりゃあ……」


いつもの調子で喋ろうとしたベルナルドの言葉が、なぜか止まった。

そして、髪をかき上げながら何かを考えている。


軽口が来ると思っていたカルロは少し意外だったが、ベルナルドはいつもの不敵な笑みに戻ってカルロを見た。


「……まあ、それより。お前さんに、どうしても伝えときたいことがあったんだ」


こっちが本題、とばかりに言われた言葉。

こいつの言いたいことなんて、ろくな話じゃない気がする。

そう考えていると、ベルナルドはカルロを覗き込むように見上げーー見たことない、真面目な表情で言った。


「……何かあった時は、絶対に船長の手を離すなよ」


いつもと違う表情、口調、そして低く沈むような声。

カルロは一瞬、その言葉の重さに思考が止まり、身体がわずかに固まる。


どういうことだ、と振り返った時には、彼の姿は既になかった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






船室に戻り、勢いよくベッドに仰向けになる。

目元を腕で押さえて動かないでいると、「……何やってんだ」とノクスの小さな呟きが聞こえた。


その呆れた声は、問いかけではなくひとりごとだろう。

部屋に入ってくるなり倒れ込むようにベッドに転がれば、多少なりとも気になるのは当然だ。


とはいえ、聞かれたわけではないので、ベルナルドは気にせず黙ったままーー

先程の、カルロの問いに対する態度を思い返した。




ーー答えられなかった。


ーー船長を、どう思っているか。




「もちろん愛してるよ、誰よりもね」とか

「大好きだよ。可愛すぎて仕方ない」とか




思いつく言葉なら、いくらでもある。


今までなら、いくらでも言えた。




……それなのに、今回は、言葉にならなかった。




「はあ……もう後には引けないんだけどな……」


ノクスに聞こえないように、ただ息を吐くように呟く。














言えなかった理由は考えない。考えたくない。知りたくない。

無駄なことには蓋をしようと決めて、ベルナルドは腕をずらし横目で時計を眺める。





……タイムリミットは、近づいていた。




ノクスはシュゼルとの言い合いが終わりました。

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